side…S
そしてようやく訪れた日曜日の朝。
この一週間をうだうだと悩んで過ごしてきた俺は、ある決心と共にベッドから起き上がった。
すると、隣で眠っていた雅紀もぱちりと目を覚まし飛び起きて。
「おはよう翔ちゃん!今日は久しぶりにドライブデートしない?」
と、寝起きとは思えないテンションで俺をベッドから立ち上がらせ、おはようのハグをしてきた。
俺は以心伝心とはこういう事なんだろうと思いながら、おはようのキスでOK!の返事をすると。
「やった!じゃあ早速、準備しなくちゃ!」
キスの余韻もそこそこに雅紀はうきうきとキッチンへ向かっていった。
俺はその背中を見つめながら、ここ最近お悩みモードだった俺の気分を変えようと心躍る提案をしてくれているのであろう雅紀の優しさに涙が滲みそうになる。
だけどここで泣いてなんていられない。
だって今日は俺と雅紀にとって大切な日になるはずなんだから。
「よし!行くぞ!」
俺は両頬をぱちんと叩き気合いを入れて、雅紀のいるリビングへと向かった。
「♪ふんふふーん♪」
快晴の高速道路。
行き先は着いてからのお楽しみだよ♪と、企み顔で運転席に座った雅紀はカーオーディオから流れる洋楽に合わせて口ずさんでいる。
こうしてふたりでドライブなんて本当に久しぶりだったから、俺も何だか嬉しくて一緒に口ずさむと。
「ボクは翔ちゃんが笑ってくれてたら、ただそれだけで幸せだなぁ。」
雅紀がくしゃくしゃの笑顔で微笑んだ。
俺の方こそ雅紀の笑顔にどれほど助けられてきたか、言葉にするには足りないくらいなのに。
こういう時、気の利いた事をすぐ口に出来ないのがカッコ悪い。
だけど、そんな自分とも今日でおさらばだ。
「あのね雅紀。そのままで聞いててね。」
進行方向を見つめたまま、突然語り始めた俺に雅紀が少し緊張するのが分かった。
「俺、雅紀が会社の人に俺たちの事を堂々とカミングアウトしてるのを知った時にさ。すごく驚いたし戸惑ったけど、すごく嬉しかったんだよね。」
「そう…なの?」
「そりゃそうだよ。高校生の時からずっと大好きで、自慢の恋人の雅紀が会社で俺との事をのろけてくれてるなんて嬉しいに決まってるよ。」
「ボクが翔ちゃんのじまんの…こいびと?」
自慢の恋人というフレーズに照れくさそうに頬を染める雅紀が愛おしい。
「それなのにさ。俺は会社で雅紀との事をまるで隠し事みたいに秘密にして、他人の目ばかり気にしてて。雅紀の事を大切に想ってるのに態度で表す勇気も決意も無くて。そんな自分が情けなくてカッコ悪くて1人でへこんでた。」
「違う!それは違うよ、翔ちゃん。」
すると雅紀は珍しく語気を強め、ハンドルを強く握りしめた。
そしてため息をひとつこぼした後、車内に不穏な空気が流れ始めたのをかき消す様に車の窓を開けて。
「翔ちゃん?もうすぐ着くからさ。ひとまず、こういう大事な話は車を降りてから話そ?でないとボク、運転ミスりそうだよ。」
と目尻にシワを寄せて笑った。
俺も確かにそうだよなぁと苦笑いしつつ、雅紀は場の空気を和やかに変える天才だな…と改めて感心していると。
高速降り口の案内標識に飛行機のマークと「空港」の文字が見えた。