意味も分からず
案内された部屋
そこには
彼の診察をした医師がいた
40代後半といったところだろう
白衣の下のスーツは
ビシッとして
いわゆる
『モテる医者』
のモデルような人
急に呼ばれた私は
あまり状況を理解しようともせず
ただぼんやりと話を聞いていた
周りをキョロキョロしながら
なぜ私にそんな話をするんだろう
なぜ彼のいないところで
わざわざ私に説明するのだろう
別に私じゃなくて
彼に話したら良いのに
何か回りくどい
そんなことを考えながら
少しイライラしていた
医師は淡々とした口調ながらも
ゆっくりと
どこか話しづらそうな口調で
私に話をしていた
でも私はほとんど話しに
集中していなかった
医師からある言葉が出るまでは…
その言葉が私の思考を止めた
『~癌細胞が…』
えっ?
癌?
誰が?
なんで今
私に癌の話をするの?
全く意味が分からなかった
この医師は何を言ってるのだろう
そう思いながらも
私は全身に鳥肌がたっていた
『落ち着いて』
私は動揺していたらしく
私の顔を見ながら医師は言った
『まだ検査が必要なんだ
原発も分からないし
治療法もまだ決まっていない
彼に告知をした上で…』
その後の言葉は正直覚えていない
彼が癌?
あんなに元気なのに?
旅行しようって約束したのに?
来年には結婚もしようって言ってたのに?
会社のことだって…
なんで?
こんなに愛してるのに
なんで癌にならなきゃいけないの?
私は冷静さなど
全くなかった
ただ
彼が『癌』である
という事実を告げられて
何も考えられなくなっていた
再び待合室に戻り
私は医師の言葉を
思い出していた
癌
彼は死んじゃうの?
もう助からない?
旅行は行けないの?
結婚も…
言い様のない恐怖が
私を襲った
体が小刻みに震える
『彼に告知をしてから…』
彼は事実を聞いて
どう思うのだろう…
癌なら進行状況によって
治療法も違う
入院もするかもしれない
何が何だか分からない
必死に理解しようとしたが
頭が回らない
すごく長い時間にも感じたが
ほんの数分にも感じた
色々なことを考えているうちに
待合室の方に
戻ってくる彼の姿が
目に入った
続きはまた今度
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