私たちが付き合い始めて3年
2人は
共に信頼していた
お互いのことは何でも話し
知らないことなど何もなかった
この頃には
お互いに結婚を意識していた
特にプロポーズがあったわけではない
自然にそういう話しになっていた
『来年には籍入れよう』
そんな約束もしていた
2人での海外旅行
新しい生活をする新居
結婚したら
彼が私の会社の社長に
私は顧問という形をとり
2人で協力しよう
不動産の会社も
新しく設立するよう計画していた
全てが幸せに向かって動き出していました
彼の病気を知るまでは…
2003年4月6日
彼の体に異変が始まった
その日
私は名古屋に出張に行く予定だった
彼は朝から体調が悪く
病院に寄ってから会社へ行くことにしていた
1週間ほど前から
体中が原因不明の痒みに襲われた
最初は虫に刺されたと思っていた
私に何度も
『背中痒いからかいて!』
と言っていた
痒いと言い出してから
1週間
日に日に痒みは増していった
虫に刺されたような痕跡はない
なぜか背中や脇腹あたりが痒い
痒くて眠れない日もあったくらいだった
何が原因かも分からない
ある朝
目が覚めた時
体がだるく
仕事に行くのも大変そうだったので
近くにある病院へ行った
痒みの原因は分からない
私は夕方から名古屋に出張なので
午前中はスケジュールを空けていた
彼1人で病院に行くのは大変だと思い
私が付き添うことにした
小さな病院だったが
詳しく調べてくれた
病院の先生は
彼が痒いところを診てくれた
そこである痕跡を見つけた
背中に二ヶ所ほど
『あざ』のようなものがある
先生はこれを見逃さなかった
『この病院では調べられない
紹介状を書くから
すぐにこの病院に行きなさい』
彼の顔つきが変わった
同時に私は
とてつもない不安に襲われた
病院を出て
その日は会社を休むことにした彼
『そんな心配しなくても大丈夫だから
多分、過労かなんかだろ
最近忙しかったから』
と
笑いながら私を安心させようとした
でも目の奥は笑っていなかった
彼が一番
不安を感じていたのだろう
私は名古屋行きをキャンセルしようとしたが
彼はそれを許さなかった
『今は君が頑張らなきゃいけない時だよ?
今回の名古屋は君が行かなきゃ駄目だ
他の社員じゃなくて君が行かなきゃ』
この時
私の会社には
6名の社員がいた
キャンセルするか
誰かに代わってもらおうと考えた
彼は絶対に駄目だと言った
私は不安で仕方なかったが
彼の許しが出なかったので
名古屋に行くことにした
5日間の出張だったが
その5日間は1ヶ月にも感じた
病院を紹介された翌日
彼は紹介された病院へ行き
検査を受けることになった
大きい病院だった
どうやら有名な医師がいる病院らしい
検査の日
その病院はすごく
混雑していた
今まで受けたこともないような検査
紹介状もあったおかげで
大きい病院だったが
スムーズに検査を受けることが出来た
1人で検査を受けた彼が
どれだけ不安だったか…
その日の検査が終わり
彼は病院の先生から
変なことを聞かれたらしい
「家族構成は?」
いるのは疎遠になっている親戚だけ
「仕事は何をしているの?」
不動産の会社に勤めている
「友人関係や恋人は?」
恋人はいます
友人も人並には…
彼は不思議に思いながらも
患者一人一人のことを
しっかり理解しようとしてくれている
単なる「いい先生」だと思っていた
2週間後
そこで病名が告げられるまでは…
2003年4月16日
検査をしてもらった病院から
再度検査をするので
来院するように連絡があった
この日
私は一緒に病院に行くと
彼に宣言をして
それを止めようとする彼を
無理やり説得し
病院へ行った
病院に着いて
彼の順番を待っている間
私は電話でその日の仕事を指示していた
私が電話を終えて
彼のところへ戻ろうとしたとき
看護師が私を呼びとめた
「あの…すいません」
「はい?」
「冴島さんの婚約者の方ですか?」
と急に聞かれ
私は
「えっ!?あ…は、はい」
完全に動揺した
「そうですか、大事にしてくださいね」
そう言い残し
すぐに去っていった
何だったんだろう…
不思議に思いながらも
彼が私のことを
「婚約者」
と病院で話していたことが嬉しくて
思わず顔がニヤけていた
彼のところに戻ると
顔のことをすぐに指摘された
「何で笑ってるの?」
「えっ!?いや…別に…」
彼は笑いながら
「ふ~ん」
と言った
彼と話をしているうちに
病院にいることなどすっかり忘れ
旅行をしようと盛り上がり
行き先を決めていた
まるでデートでもしているようだった
そういえば最近デートしてないな…
そんなことを考えながら
彼との旅行計画に
私は胸を躍らせた
「冴島さーん、冴島俊樹さーん」
彼が呼ばれた
今日もいくつかの検査があるらしく
少し長く時間がかかりそうだった
私は待合室でボーっとしていた
テレビの方を見ながら
番組を集中して見るわけでもなく
ただボーっとしていた
「どこに旅行しようかなぁ
海外は新婚旅行に行くとして
国内だったら
やっぱり沖縄かな
九州も行きたいなぁ」
たっぷりと時間があったので
私は1人
妄想族になっていた
そんなことを考えていると
「すいません」
と声がした
振り向くと
さっき私に声をかけてきた看護師だった
「ちょっと良いですか?」
私はその看護師に
ついてくるように促され
ある部屋の前まで案内された
何で私が呼ばれるんだろう…
意味も分からないまま
ついてきた
部屋の前で
「彼の病気について
お伝えしたいことがあります
ご家族のいない患者さんなので
あなたが婚約者だということを
ご本人からも聞いています
親戚は疎遠になっているということなので
一番の近親者と言える方は
婚約者のあなたになります
ただ婚約者と言っても
ご本人の承諾がなければならないのですが…」
たくさんの説明を受けたのだが
「もう妻です
彼の家族は私だけです」
と看護師に言い放った
この時の
私の心拍数は
かなりのものだっただろう
私の言葉を聞き
看護師は部屋に入るように言った
部屋に入ると
医師がいた
カルテや
レントゲン写真のようなものを見ながら
ゆっくりと落ち着いた口調で
話を始めた
とても慎重に
言葉を選びながら…
長くなりましたので
今回はここまで
また書きます
有難うございました
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