Other People's Rooms
札幌の6月は気温が一定しないけれど、湿度は低いし非常に快適な札幌である。今日は、前日と変わり肌寒いくらいだが、快適であることに変わりはない。 ここ数週間は、世間は大学ラグビー部のことで色々と取りざたされているが、私はそこの藝術学部を卒業した。 演劇の、舞台演出を専攻するというとてもやりがいのあるカリキュラムだった。少し自分のことと、自分とつながる人たちのことを語ることで、大学に対する世間の見方が変わることを願ってやまない。 。。。いくつかの幸運な出会いがあり、同じ年の人間たちの集団による適度な役割分担と、戦略的でよくまとまっていた大学の授業カリュキュラムと、情熱的な教授陣におかげもあって、舞台の実習は、とても良い形で楽しめた。何十年か経って当時の実習のVTRを観ても遜色ない出来で、「これ自分が演出したのかな?」くらいによくまとまっている。それはあの時代に起こった奇跡の一つだし、今も綿々と引き継がれているに違いない。 舞台演出の何が楽しかったのか?・・・一言で説明するのは難しい。よく言われることだが滔々と自分のイメージを語り、スタッフや出演者にイメージ通りの仕事を要求する、というのでは演劇的なコミュニケーションが成立しない。結局は演出家や作家の初期のイメージというのは、演劇を作る上であまりたいしたものではないし、特に力関係がフラットな場合、上から目線で何かを説得することはできない。かといって、作るべきイメージの統合作業をすることなく人間関係を作ろうとするのも、あまりうまいやり方ではない。 どういうことなのかはわからないが、一つのささやかなイメージをスタッフとキャストでこねくり回しながら、いい上演に持っていく、という作業が思いの外自分にあっていたし、結果としてすごく作品に力を入れることができた。才能がある、といろんな人に言われたし、何よりこの作業をすることで、心地よい疲れを感じることができたのは事実だ。 そんな実習を通じてすっかり舞台演出のおもしろさにハマったので当然卒業後も自分でカンパニーをつくって息長く演出を続けていこうと考えていた矢先、父が肺癌で入院した。実家は今まで家族の入院経験がほとんどなかった。動揺と狼狽のなかで、卒業後の生活は親を頼れない、という思いときちんと社会人として収入を得なくてはならない、という考えに囚われた。 今から考えれば幸運なことだが時代はバブルの絶頂期だったし、就職口は苦もなく決めることができそうだった。入院中の父親を見舞ったり、世話をしながら卒業制作(論文ではなく、舞台演出が卒業の審査となる)の準備をおこない、商業演劇系の演出部の採用試験を受けたり、自動車会社の異業種の試験を受けたりしたが、「舞台演出を仕事としたい」という強い気持ちだけで大学を卒業して何かを始める、という明るい未来を描くことができず、介護のこともあり「人はみな、失われていく、崩壊していく」という「絶望」の思いを抱いていた。。。 なんとはなく昔話だったが、初夏というよりは、晩春といった趣の札幌だけど、ひと仕事終えたこともあり、やけに音楽が心地よい。といってもギラギラしたものよりは薄口なものを延々聞いているので、今回は少しばかり紹介します。まずはロー・ボルジェス。独特の浮遊感とオリジナリティ溢れる数々の名作の中でも、本作はガラスのように儚く透明なメロディで、酷く気持ちのいいブラジル音楽。ボサノヴァばかりが、ブラジル音楽ではない。MPBとも肌さわりが違う。非常に聞いていて落ち着く。本当はトニーニョ・オルタや、ミルトン・ナシメントも挙げたいけれどまず名刺がわりということで。名盤「Clube Da Esquina」にもある「Clube Da Esquina No. 2」が特に好きです。 ア・ヴィア・ラクテア 972円 Amazon マーク=アーモンド「Other People's Rooms」少しアダルトな、ジャジーで、物悲しい。 Other People’s Rooms 1,187円 Amazon ジョニ・ミッチェル「HEJIRA」 逃避行 1,506円 Amazon ルイ・フィリップのものうい夏の風景今日美術館に行って、印象に残った一枚。ボナール。