いつもの憂鬱が、始まる | 早く老人に、なりたい。~涙は枯れない

早く老人に、なりたい。~涙は枯れない

あれから、もう16年。
決して早くなんてなかった。
でも、15年が過ぎる。
一日も忘れるなんてなかった。

先の見えない棘の途を、
どれにも縋れず、
だれにも語れず、
あてなき彷徨う。

梅雨は、どこへ?

今年の東京の夏は水不足になるのかなぁ~。


昨日は、めちゃ大雨だったけど、この辺りに降っても意味ないんだよね。

ダムとか山とかに降らないとね。

でも、植木達は大喜びだし、晴れた日に水やりする手間も省けるし、なによりも、蚊に刺されないから、僕も大喜び。


先月、兄と会ってからすぐ、なんだか気持ちが憂鬱になって、なんでかな?て思ったら、ある日の朝方、外が明るくなり始めた頃、


「そうだった、もうすぐ6月だからだな」


て気がついた。


それから毎日、「ごめんね」てチャマに語り掛けながら、あの頃を思い出してた。

なにからなにまで、「あの時、あーしてあげれば」「あの時、こーしてあげれば」て。

でも、そばにはチャマがいて、「いいんだよ」て聞こえる。

でも、それは、僕の中の誰かの言葉に過ぎないだろうけど。


そんな時、昔一緒に働いてた人から、めちゃくちゃ久し振りにLINEが来たの。

本当に久し振り。

最後に会ったのは、僕の知り合いのボクサーの試合に行った時。

ボクシングの試合を生で観るって、そんなないよね。

その人もボクシングは知らないけど1回は観たいって言うから連れてった。


それからお互い疎遠になったけど、LINEではたまに新年の挨拶や残暑見舞いくらいはしてた。

会いたいねとは社交辞令ぽく交わしてたけど、そのうちコロナ禍に入って、本当に年に何度かとか、過去を遡ったら1年以上もご無沙汰な時もある。


彼曰く、去年母親が他界して一周忌を済ませたら、ふと僕を思い出したらしい。


「生きているのか」


僕の事情は少し知ってて、更にコロナもあるし、元気なのか知りたかったみたい。


ぼくも彼の事情は案外知ってて、簡単に言うと、彼の人生はヤバい人生。


つまり、


「ヤバい人」


(笑)(笑)(笑)(笑)(笑)


子供の頃は高校辺りまで虐められっ子。

大学を出て広告代理店に就職。

で、なんか違うなぁ~て辞めて、世の中の裏側に興味を持ち、デリヘル嬢の送り迎えする運転手をして、その中の1人に恋をして半同棲、と思ったらその女性は、いつも腕に注射する人で、何度か警察のお世話になり、最後は売人😁になり、てな感じ。

彼は「ハッパ」というシロモノはたくさん経験したけど注射はしなかったんだって。

彼女繋がりの怖い団体から使いっ走りみたいにいつも呼び出されてたらしいけど、彼女が好きだったから、流されるまま過ごしてたんだって。

結局、女性は売人としても警察にお世話になって、彼はその時にやっと目が覚めたらしいけど、もぉ遅いのよ!

彼も「ハッパ」のせいで頭おかしくなって、渋谷のどっかの植込みに泡吹いて倒れてたのを保護、そのあと精神病院にまっしぐら。

半年くらい入院して「二度とハッパは吸わない」と決めて真面目に働き始めましたとさ。


出会って最初はそんなの全然知らないから、いつも笑顔な人で話が合って仲良くなったの。

さっきの人生話も辞めてから聞いたし。

「会社辞めなきゃよかった」とか「最低な人生」とか頻りに言ってた。

本当は元々人見知りで会話するのも苦手て言うんだけど、そんな素振りも見えなかった。

必死だったのかな?


「でも、◯◯さん(僕の名前)だけは他の人と違って心許せた」


との事。


その理由を聞いたら、話をちゃんと目を見ながら聞いてくれるし、話し易いし…て。

僕にしたら普通なんだけど、昔からよく言われた。


で、久し振りに会う事に。


彼は埼玉の遠くから来るので、真ん中の池袋で。

東武の11階の喫煙所で待ち合わせ。

東武って喫煙所いっぱいあって、ありがたや、ありがたやっ!


あ、来た来たっ!

ふ~ん、こんな背低かったっけと思った。

もっと背が高い感じがしてたから。

僕とは二つ違い。

年下。

彼もすぐ僕を見つけた。

変わらない笑顔。


「◯◯さん!(次からはミコさんで)久し振りー!ミコさんだよねぇ~、いや~ホント久し振り!」


お互いやっぱり年取った。

てか、いつも大きいバッグ背負ってるのは昔と同じ。

いったい何が入ってるんだか。


「とりあえず店行きましょ!回転寿司!」


やたー!お寿司だ!


「ここ行列が凄いので有名なんすよ!やっぱうちらくらいだと海鮮のほうがいいっすよね」


そうね、お寿司大好き。

でも、肉も大好きよ!


「今日は~!俺出しますから!」


ん?


「ダメダメ、ちゃんと割り勘!」

「何言ってんすか~!前に会った時、ミコさんが全部ご馳走してくれたんすから~、そのあとのカラオケも全部!ボクシングのチケットもそうだし」

「え、覚えてないよぉ」


ホントに覚えていない😁


「俺、あの頃生活キツかったから、ミコさん全部出してくれたんすよ。だから今日は俺が出します!」


行列に並びながら、長い間、出す、割り勘、の押し問答の末、周りの雰囲気がおかしくなったので、


「じゃあ、お言葉に甘えちゃおっかな」


で、終決。


で、何気に寿司の値段見たら、普通に高いのよ。

で、よく見たら北海道からネタ取り寄せてるらしいのよ。

一皿400円が安いほうで、あ、食べたいってのは一皿1000円前後なのよ。

こりゃ~、奢ってもらうのにも、どーかと。

甘えちゃうってのも、速攻で、醒めた。


いざ着席。

頭の周りを値段の数字がくるくる廻ってて、瓶ビール頼むつもりが、生ビールを一丁だけ頼んじゃって、それも「はい、生ジョッキ」て置かれてから気がつくし。


とりあえず乾杯。


「ミコさんは何が好きっすか?」

「う~ん、自慢じゃないけど高いのは食べれないの。ウニとかイクラとかウナギも、あと貝類も駄目なの。」(これは本当)


そんなで僕が頼んだのは、まぐろの赤身、タコ、エビとアボカドの太巻き、そしてザンギ(鶏唐揚げ)。

彼は普通に頼んでたけど、なんとか5000円くらいで収められました。


まぐろの赤身なんだけど、2貫で400円くらいかな?

ご馳走になっててなんだけど、更に北海道とか言ってたけど、美味しくなかったです。

タコもそうだけど、切って時間が経ってる感じ。水分少なくてパッサパサな食感。

20分から30分、回転してたのか!て感じ。

これなら、スシローの中トロ2皿のほうがめちゃ美味しい。(個人的な感想です)

なので、店出てからここのお寿司の話は一切出ませんでした。

きっと彼も「ん?」て感じたのかもね。


そのあと、東口に行って宮城県のアンテナショップで、ずんだソフト。

本当はもっとお酒飲むのかなぁ?て思ってたけど、彼はあまり飲めない、僕もあまり飲めない、のでこんな感じ。


その時点でまだ18時くらい。

まだ明るい。

街は帰る人の波で凄かったです。

その中を大の大人がソフト片手に立ちんぼ。

楽しいね。


そのあと、ドトール。

ドトールは喫煙ブースあるからね。

僕らの味方。


塵も積もる話とかずっとしてたら、彼が同じ事を話し始めて、「会社辞めなきゃよかった」とか「最低な人生」て言い出した。

彼の中では、ずっとこれからも残りの余生も、そう思い続けるのかなぁ。


「いい人生じゃん、楽しい人生じゃん、他の人には経験出来ない、いい人生だよ。そのままサラリーマンして家族持って孫も出来てって一般的な、よく言う普通の人生よりは遥かにいろんな事たくさん経験できて、俺にはいい人生に思えるよ。それに、だからこそ、こうして出会えたんだもん」


と、頑張って言った。


「そうだよね!じゃなきゃミコさんと会えなかったんだよね」


僕と出会った事なんて、本当にちっぽけな事だけど、これで良かったんだなって少しでも感じてくれたらと思った。


気がつけば、もう、23時ガーンガーンガーン

もぉ、駅からのバスは無い赤ちゃん泣き


最後はギュっと握手して再会を誓った。


いくら検索しても、どの駅からも自宅までは徒歩しか出てこない。


駅に着いたのが23時58分。

今日が終わる。

大切な今日が、終わる。

駅前の交番前にある喫煙所に火を着ける頃、あと1分。

夜空を見上げながら、


「チャマ、久し振りに街に出たね。人いっぱいいたね。お寿司美味しくなかったね」


そして、日付は替わった。


ひとりでは、なんだか過ごせなかった。

どこかチャマと出掛けようとも思ったけど、彼が会う日をその日に望んだし、それもいいかなぁ、チャマと街に繰り出すのもいいかなぁて。


チャマの命日の一日が終わった。


いろ~んな事思い出しながら、真っ暗な多摩川沿い土手を泣きながら帰った。


チャマと何度も自転車で走った多摩川沿いの土手。