静かな恋の物語 -4ページ目

静かな恋の物語

今日の「絶対」が明日の何になる?
 変わらないものがない この世界だから
  今この瞬間を忘れないように…。

ほら。

自分が休みになれば平気で連絡してこないじゃん。


なんでわたしにばっかり求めるのさ。


こうやって、「わたしばっかり」って思ったら

これはもう違うんだろな。

ふたりの在り方が。
兄ちゃんはわたしの親が旅行に行ってる間にうちに来た。

入れたわたしもわたし。

わかってる。


けど、後悔してない。

兄ちゃんが家庭でどんな風だったか見たかったから。

そして、納得した。



誕生日にあげたものにノーコメントで

催促するまで感想もなにもなかったことも

バレンタインにあげたお菓子のことも

結局聞かなかったからなにも言ってもらえなかったことも

手料理を振る舞ったものに対して当たり前のように食べられたことも

お風呂の用意をしたことになんの感謝もなかったことも

兄ちゃんはなにひとつ悪いと思ってない。

悪気がないのはわかってる。

だって心の中で感謝してるだろうから。


最初の誕生日プレゼントだって

感想のひとつももらえなかったのが残念だった、と言えば

すぐに長々とLINEを送ってきたし

言えば応えてくれるんだと思う。

ただ、伝え方が下手で

言わなくてもわかってくれるって

きっと思ってる。


だけど、そうじゃないんだよって

言わないとわからないんだって

先もわからない相手に

あなたはこうしたほうがもっと魅力的だって

そこまでお節介する必要ある?って

思っちゃった。

そこまでの価値ある?って

思っちゃった。


言えばいい。

どう?って。美味しい?って。

聞けば済むことってわかってる。


あれやってほしいな。

これやってくれたら嬉しいな。

言えばやってくれるってわかってる。


だけど、今のわたしには
「俺、どうしたらいい?!」


2日ほど既読スルーしてたLINEに追いLINEが来た。


「ありがとう」の後に来た「冷蔵庫にお酒忘れた」も無視してた。


夜中だったから未読のまま寝て、

翌日の朝にしばらく考えてから返した返事。


「あ、ごめん。お酒、まだ飲んでないけど欲しかった?」

「炭酸なくて美味しいやつだからchaco飲んでもいいよ」


違うでしょ。

ほんとはそれを聞きたかったんじゃないでしょ。

わたしから返事来たから安心したの?

わたしだって兄ちゃんから丸2日LINE返ってこなかったことあるけど

全然気にならなかった。

心当たりがあるから返信がないことに不安になるんじゃないの?

それだけのこと、兄ちゃんはわたしに、したよ。
そのあとに起きたことはもう書きたくもない。


兄ちゃんが信じられなかった。

少し悲しくて、だけど諦めるにはいいきっかけで。

兄ちゃんに嫌われてももうどうでもいいと思えた。




「やめろ」

兄ちゃんのお腹を蹴って突き飛ばした。






帰り際、初めて兄ちゃんは「ごちそうさま」と言った。

そのあと職場に着いてからのLINEは

「いろいろありがとう」


いろいろ、か。



そのLINEにまったく返信する気が起きない。

それが今のわたしの答えで

その気持ちは変わる気配すらない。
彼がうちに来たのは22時すぎで。

そんなに遅くなる予定ではなかったんだけど

仕事でのトラブルでって。

時間はたっぷりあったから

おつまみになりそうなものを6品と

〆のお味噌汁を用意してあった。


ちょっと失敗したものもあったけど

久しぶりに料理したわたしにしてはなかなかの出来かな。


兄ちゃんはわたしが食べ始めるのを見て、無言で食べ始めた。


ポテトサラダが好きだという兄ちゃんに

大量のポテトサラダを作っておいた。

大きな一口を食べて


「う〜ん。普通のポテトサラダ」

「は?」

「普通の味付けの、おいしいポテサラ」


兄ちゃんはびっくりするくらい褒め下手だ。

兄ちゃんはそれっきりであとの5品に触れることなく、

話題は見ていたテレビの話や仕事の話で

わたしのことはひとつも聞いてこない。

自分で買って来たビールを飲みながら食べ進めているけど

まずいと思いながら食べてるのかな、と不安にもなる。

無理してるのかな、とか。


そんなわたしの不安をよそに兄ちゃんはお皿を空にしていき

わたしが席を外してる間に空いたお皿をわたしのほうへ置いておく。


片付けろってこと?

しかも黙って?


さらに食事の途中でお風呂に入ると言い出した。

食後では眠くなって入れなくなるから、と。


「俺入るの早いよ」


なんて言って、わたしが食器を洗ってる最中に出て来た。

まだ食べると言うから置いておいた残りのものたちは

お腹がいっぱいになったのか、またわたしが中座してる間に洗い場に置いてあった。


「残りそこに置いといた」


もういらないから捨てるなりなんなりしろってことか。


渡したバスタオルは脱衣所にほったらかしで、ありがとうもなく

育った環境の違いなのかなんなのか

兄ちゃんのふてぶてしさに呆れ、何も言えず

兄ちゃんがテレビを見てるあいだに浴槽を洗ったりしてた。


掃除を終えてリビングに戻ると

初めて入った女友達の実家の居間で寝転びくつろぐ兄ちゃんは


「やっと来た」。






あぁ、これで子供が生まれて。

1年間2人のお世話をして。

これは兄ちゃんが奥さんに逃げられたのも頷ける。


兄ちゃん、だめだよ。

これじゃぁ仕方ないよ。

わたしもう、兄ちゃんの味方だけではいられない。