野良猫~英雄 vs いなくなれ!
インスタ @iushenxiong さんの投稿より
-
目も開けられないほど熱でただれているのに、
それでも一匹一匹に鼻を寄せて、「ちゃんと生きてる?」と確かめ続けた母猫がいました。
映画のワンシーンみたいですが、これは実話です。
舞台は1996年、アメリカ・ニューヨーク、ブルックリン。
名前は「スカーレット」という一匹の野良の母猫です。
――母の愛は、炎よりも熱い。
この言葉を、そのまま体現したような存在でした。
その年の春先、まだ少し肌寒い夕方。
街外れの廃車庫の中で、スカーレットは5匹の子猫を産んだばかりでした。
ところがその日、突然の火災が発生します。
炎は屋根を焼き抜き、割れた窓から黒い煙が噴き出す。現場はまさに混乱状態。
消防隊が到着し、必死に消火活動を行っていました。
でも、その火の中に——
まだ「逃げていない母親」がいることに、誰も気づいていませんでした。
それがスカーレットです。
彼女は逃げませんでした。
逆に、炎の中へと戻っていったのです。
一度ではありません。
子猫をくわえて外に運び出し、また火の中へ。
それを、5回。
毎回、命を落としかねない状況でした。
周囲の人が「何をしているんだ」と気づいたときには、
彼女はすでに5匹すべてを救い出していました。
発見されたとき、彼女の体はひどい状態でした。
顔の毛はほとんど焼け落ち、耳や足も焦げ、目は水ぶくれで腫れ上がり、開けることすらできない。
それでも——
彼女は倒れる前に、子猫一匹一匹に鼻をそっと当てていきました。
まるで「みんな、無事ね」と確認するように。
そして、その場で静かに力尽きて倒れました。
この光景に、現場の消防隊員たちも思わず涙をこらえきれなかったといいます。
スカーレットと子猫たちは、すぐに動物救護施設へ運ばれました。
彼女の傷は深刻で、一時は命も危ぶまれましたが、なんとか回復。
子猫たちも徐々に元気を取り戻しました。
残念ながら、一番弱かった1匹は感染症で亡くなってしまいましたが、
4匹は無事に生き延びました。
やがてこの話は世界中に広まり、多くの人の心を動かします。
保護団体には、スカーレットや子猫たちを引き取りたいという申し込みが殺到しました。
その後、スカーレットはニューヨーク在住の女性に引き取られ、
ようやく安心できる家で暮らすことになります。
子猫たちもそれぞれ新しい家庭へ迎えられました。
新しい生活の中でも、彼女は火傷の後遺症のケアが必要でした。
それでも、もう寒さや空腹におびえることはありませんでした。
スカーレットは2008年まで生き、13歳前後でその生涯を終えます。
かつて路地裏で必死に子どもを守っていた一匹の母猫は、
やがて「動物の英雄」として世界に知られる存在になりました。
彼女の行動は本や物語になり、
さらに彼女の名前を冠した賞——
「スカーレット・アニマル・ヒロイズム賞」まで作られました。
危険の中で他者を救った動物に贈られる特別な賞です。
この物語は、今でも「最も偉大な母愛の象徴のひとつ」として語り継がれています。
彼女は特別な力を持っていたわけではありません。
ただ、自分の子どもを一匹も見捨てなかっただけ。
それだけで、ここまでのことができたのです。
この話が教えてくれるのは、とてもシンプルなこと。
「命をかけて愛する母がいる」
そしてその愛は、人間だけのものではない、ということです。
「野良猫への餌やり禁止」の看板に思うこと
公園や公共施設で、「野良猫への餌やり禁止」という看板を見かけることがあります。
勿論、無責任な餌やりによって糞尿被害や騒音、環境悪化などの問題が生じることは理解できます。
しかし、それでも私は、この看板に強い違和感を覚えます。
動物福祉の観点から考えてみてください。
目の前にお腹を空かせた動物がいる。 その動物に食べ物を与えたいと思うのは、多くの人が自然に持つ慈悲や共感の心ではないでしょうか。
まして、猫は愛護動物に指定されています。野生動物ではありません。
そして考えたいことは、猫が自ら望んで野良になったわけではない…と言う事です。
避妊去勢を怠った人。 捨てた人。 無責任に繁殖させた人。 そして、それを十分に防げなかった人。
原因は人間側にあります。
にもかかわらず、「餌を与えるな」の一言で問題を解決しようとするのは、本質から目を背けた対症療法に過ぎません。
本気で野良猫問題を解決したいのであれば、行政や地域社会が取り組むべきことは別にあります。
・不妊去勢手術の推進
・地域猫活動への支援
・適切な給餌管理の指導
・飼い主責任の啓蒙
・遺棄や無責任な繁殖への監視
こうした根本対策こそが必要なのです。
私たちが目指すべき社会は、「猫を飢えさせる社会」ではありません。
「野良猫を生み出さない社会」です。
そして、その実現のために先頭に立つべきなのは行政です。
問題の原因を放置したまま、市民に対して「餌やり禁止」とだけ呼びかける。
それは責任の所在をすり替えているように、私には思えてなりません。


