日本語にあって英語にはない。
これは日本語の魅力でもあり、難しい点でもある。
言葉や表現を直訳しても、伝わらなかったり、場違いだったりすることはよくある。
ご存じの通り、僕は翻訳者として活躍している。たまには日本語翻訳をしたり、本も日本語で出版されたが、主に和文英訳が仕事の中心だ。
この翻訳プロセスはもちろん、日本語を英語にすることだが、単純に直訳すれば良いというわけではないケースの方が、圧倒的に多い。
何故なら、日本語は自由な言語だからだ。そして、日本人はきっちりしている国民だと言えると思うが、文書となると、意外にもルールを守りたくなくなるのも、日本人だ。
20年翻訳として活躍してきた者の、あくまでも個人意見ではあるが。。。
血液型選手権でいうと、急にA型メンバーがO型チームに寝返るような感じ。余計わかりにくいか。。。
このルールを守りたくない傾向に関して、「人間、廃盤になる?」では、僕が日本人にロマンチストが多いと書いた。
その投稿にも書いたが、それは日本語に魅せられる理由の一つではある。しかし、間違いなくこれは日本語が世界で、最も難しい言語だと言われる理由の一つでもある。
例えば、同一会社の同一の文書から上がった書類を見ても、担当者によっては、翻訳原稿の扱いやすさは様々だ。
僕が思う翻訳という役割は、言葉を訳するだけではなく、書いた人の想いを伝える仕事だと思っている。
原稿を書いた人の立場や状況。訳文を読む人の立場やニーズ。直接クライエントから言われなくても、文字にはこういう情報が隠されている場合がほとんど。
僕はこれを言葉の声と呼んでいる。
翻訳とは、一旦お客様の声をお預かりして、それを別の言語で新しい声として生まれ変わらせること。これが翻訳の本来の役割だと、僕は意識している。
特に技術が進んで、機械翻訳やAI翻訳が普及しつつある今は、翻訳が単なる直訳を超えていかなければならない。でないと、本当に人間が廃盤になってしまうのかもしれない。
翻訳家として目指すべきものは、お客様の声を届ける専門家だ。
それが僕の仕事だが、その仕事の中で、よく英語として面白い課題や疑問点に出会う。
これから、そういった面白いと感じた英語の課題を、ワンポイントEnglishとしてハイライトしていきたいと思う。
今日のワンポイントEnglish | 「炎上」
このSNS時代に誰もが聞いたことがある用語、
「炎上」
この間、あるコンサル会社の翻訳案件で、
マーケティング部門の失敗から起きる「炎上」に関連する原稿の翻訳をした。
その原稿の中に「炎上」という言葉が数回出たが、その時に思った。
いつも、「炎上」はどのように英語で表現しているのかな。
意外と意識したことがなかったかも。
GoogleさんやWikipediaさんに聞けば、
「Flaming」という言葉が出てきて、なんなりとそれを裏付ける説明も書かれている。
しかし、僕は何となくしっくりこないよね。
だから、ここで断言させて頂く。
「炎上」 = 「Flaming」だけではない!
逆に、このご時世では、Flamingという表現使われるケースが、
減っていっている気すらしてしまう。
Wikipedia等で解説される「炎上」=「Trolling」とは別に、
この用語が使われているケースは、以下のような意図もある:
1)社会の怒りを買った場合、若しくはネガティブな反応を巻き起こした場合
2)インターネットを通して意図的な晒し行為や風評被害を巻き起こす場合
炎上の正しい英語表現と使い分け
日本語でいう「炎上」には、
インターネットで紹介される「炎上」=「Trolling」以外に
上記の二つの状況は考えられるので、
状況に合わせて正しい表現を選ばないと、
伝えたいことがうまく伝わらない可能性がある。
ここで、もう二つの解説を紹介しよう!
1)怒りを買った時の「炎上」
Outrage【名詞】
例:広告に使われた映像が差別的だと指摘され、一時期SNSでは炎上となった。
Video used in an ad was noted as being discriminatory and caused outrage over social media.
このように、ネガティブな意味で炎上状態になった場合は、「outrage」が使われることが多い。
2)意図的な晒し行為や風評被害を巻き起こす「炎上」
Trolling【動詞】
例:ラーメン店で行列に並んだが順番待ち中にスープが売り切れたことを不服に思い、SNSでその店に対する炎上を図った。
A man dissatisifed that a ramen noodle shop ran out of soup while he waited in line was trolling the shop over social media.
このように、同一の言葉には英語となれば、
複数の候補がある場合は珍しくない。
状況に合わせて、正しい候補を使ってこそ、
言葉が生きてくると思う。
さて、次回のワンポイントEnglishでは、
仕事の場面に役立つ表現を紹介したいと思う。
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