認知症の父との日々を書いています
病院での
断定はまだ、の検査結果を聞いて
「俺は認知症ではない」と思い込む父。
そうだと思ったんだよーーー
って
嬉しそうに言ってたな。
それは
週が明けて
父が会社に来ない日の出来事だった。
珍しく「今日は家にいるわ」と言うので
ワタシは父を置いて出勤した。
なんて気が楽なんだ←ヒドイ
来ない理由はなんとなくわかった。
些細なことだが
前回会社に来たとき
他の職員もいる前で
日付と自分の名前を書類に書く機会があり
それに手惑いスッと書けなかった。
自分でもショックだったのかもしれない。
周りに教えてもらってやっと、書いた。
そういう姿をあまり見られたくない、と
後に言っていた。
実家のリフォームはほぼ終了し
毎日来ていた職人さんたちが
別の清掃の人や
立ち入り検査の人がポツポツ程度になり。
父はあいかわらずやることもなく
愛犬を散歩させた後は
のんびりテレビを観ていたのだそう。
お昼になるころ
会社で仕事をしていると
弟①の携帯に父から着信があった。
弟①は忙しいとわかっているため
何か用があれば
仕事中は
だいたい事務所にいる
ワタシの方にかけてくるのに
「珍しいな、親父からだ」
ハイハイーと明るく応答した弟①だが
そのあとの様子がおかしい。
焦った声で
「親父、どうした?何
うん、え?何だって?」
真剣な顔でこちらを見ながら
「わかった、とりあえず姉貴に
すぐ帰ってもらうわな。
ちょっと待ってて、家で
大丈夫だから出かけないでね!」
と父に優しく言った。
ワタシは
内容はまったくわからないけど
仕事の段取りをグルグル考え始めた。
帰らなければならない。
事務員さんに後を頼んで、だ。
電話を切って弟①は
「親父がおかしくなってしまった」
とワタシに言った。
ここまで、ワタシと弟①は
ほぼふたりで相談しながら
父のことを進めてきたのだが
元来の性格からか
あまり深刻に事態を受け止めないように
努めて明るくいるのが弟①で
ときにそれは現実逃避してない?と
思うこともあったけど
認知症への対応はそれでいいと思うし
キツイ娘と優しい息子で
今もやってるから
それでいい。
でも、そんな慌てる弟①を見るのは
こっちが逆にドキッとする。
父は弟①にこう言ったそうだ。
たいへんだ…
世界が変わってしまった
誰もいなくなった
ここにいるのは俺だけで
みんな消えてしまった
(だいたいこんな内容)
韓国ドラマ『世界の終わり』からお借り。
こんな風に見えたのかな…
実家は静かな住宅街の中の
長い坂を上った並びにあるのだけど
坂の下の
いつも行くドラッグストアへ行った帰り
ふと坂の途中で先を見ると
たまたまだと思うけど
人が誰も歩いていなくて
戸建てが並ぶ道も公園も
誰の声も音もしない
立ち止まって茫然としたらしい。
そして弟①に電話をかけた。
いないものが見える「幻視」ではなく
いつもはいるものがいない「妄想」?
診断が確定するより早く
ここからギュンと
状況は進んでいく。