Snow white ~さよなら 先生 -4ページ目

Snow white ~さよなら 先生

はじめまして 日記という形で、香川先生との出逢いから別れの3年半を回想させていただきます。 

こんにちは溿
今日は 携帯で記事を更新しています。
昨日から 広島を離れて神戸に遊びに来ています。
のんびり家で連休を過ごそうと思う気持ちもあったのですが
友達に誘われたイベントに いちもにもなく飛びつきました。
そのイベントとは
18年ぶりのデーゲームで行われる
伝統の一戦 阪神タイガース-読売ジャイアンツ戦の観戦です。
すごい人出で4万6千人もの観客が入ったとききました。
レフトビジター席のG党のオレンジカラー以外は
ほぼ全域イエローカラーの虎党で埋めつくされていました。
試合の結果は残念ながら ジャイアンツの勝利となりました。
一点差の負け 最終回三塁にランナーをおいただけに
悔しくて悔しくてたまりませんでした。


この試合の先発投手の役目を任されたのは
プロ5年目 左腕の能見篤史選手でした。
このブログを読んでくださっている方なら「ん?」とお思いでしょう。
香川先生と同じ「篤史さん」です。
(阪神にはかつて片岡篤史さんという方もいらっしゃいました
「あつしさん」なら現役で藤本敦士さんもいます。
…案外多くいるものですね)


この能見篤史選手
即戦力と期待されながら 2005年から虎戦士となりましたが
ルーキーイヤー以外はとにかく不甲斐ない結果が多くて
自分からカウントを悪くした挙げ句に ストライクを欲しがった結果
バッターに痛打をくらう いわゆる「自滅型」の典型的なピッチャーでした。
正直なところ 阪神ファンの私でも
顔を見たくないと思う時がありました。
(能見選手…ごめんなさい)
でも ファン以上にご自身がそう思っていたのでしょう。
今年はマウンドに立った時の表情が 今までとは違う気がしました。
去年までの 不安そうな顔つきではなく
睨みとばすような顔で次の球を投げ込んできます。
昨日は手痛い一発を ジャイアンツの若武者坂本選手にくらいましたが
(あと… 谷選手にもっ)
それ以外はよく抑えて投げていたと思います。
本当に「痛かった」のは セッキーこと関本選手のエラーですが
彼は最終回 必死で三塁打を打ってくれました。
きっと能見選手もうらんでなんかいないと思います。
ただ ジャイアンツの方に地力と勢いがあったんだな
それだけです。


私が観戦していた席のそばに 14番のユニホームを着た女性が座っていました。
肩あたりには『NOHMI』とあります。
金本選手や鳥谷選手など主力選手のユニホームを着た人はたくさん見かけますが
能見選手のものを着た人は 正直あまり目にしません。
珍しいなあと思うと同時に
多くの阪神ファンに「不甲斐ないなあ」と思われているけど
こうして応援している人もいるんだなあ と 思いながら
その人のことを時おり見ていました。
ゲームセットのあと 私の思い込みかもしれませんが
その人が泣いているように見えました。
長い間 タオルを持った両手に顔を突っ伏して
肩を震わせていました。
ファンとしては 3勝目の勝ちをつけてあげたかったでしょうね。
それには あまりにも手痛い3ランでした。
それ以外はどちらかというと調子はよかったと思いますから。


阪神タイガースというチームは 人気球団ゆえに
声援や期待が多い分 叱咤やヤジもかなりのもので
どなたか忘れましたが凡退直後の「死ね」のひと言には
マジでこたえました と
何かのトーク番組でおっしゃるのを聞きました。
プロ野球の選手って こんなことを言われるんですね。
私は「叱咤」と「暴言」は別のものだと思っています。
選手をへこませるような言葉を投げるのは ファンではないとも思います。



香川先生とのお話じゃないことがテーマでしたが
こうしてプロ野球のことを書き綴る私を見て
どこかで先生が笑っているのかもしれません。
「カナ 今じゃ俺より阪神について熱いんとちゃうか?
今の阪神タイガースのことは 俺よう知らんから
カナ 時々は俺に教えてくれな?」
そう言って また 笑っているような気がしました。

さて 今日はこれから神戸の街を散策してから
夕方の新幹線に乗って広島に帰ります。
広島カープも例年通り この時期は好調のようです。
阪神も置いていかれる訳にはいきません。
今日はなんとかして 今期対ジャイアンツ戦初勝利の知らせを聞かせて欲しいものです。

4月になってから はじめての更新です。

お休みしている間に

桜の花はほとんど散り 

木々の若葉がきれいな色を見せてくれています。


長く続いている

1998年 6月の日曜日に戻りますね。


今 目の前にいる
先生の瞳からは 涙が流れていて
私はただ
黙って 何も言わないで
先生のことを抱きしめていました・・・

聞こえてくるのは
先生と私の呼吸と
ときおり 先生がしゃくりあげる時に
漏れ出る声

ただそれだけでした。

「いい子いい子・・・」と
まるで ママがちいさな子どもにするように
私は黙って
先生のことを抱きしめながら
ずっと髪の毛をなで続けていました。

思えば 私は先生に
過去何度
こういう風にしてもらったかわかりません。
悲しいことがあると
先生はよく こうして私のことを
抱きしめてくれました。
今日ぐらいは 私がこうしたっていいはずです。

「かっこ悪いなぁ 俺・・・」

ちいさな低い声が聞こえました。

「カナは 女の子ぉやからええけど
男が泣くのは かっこ悪いなぁ・・・」


「そんなこと ないよ
男の人じゃって 泣く時あるじゃろ?」


先生のつぶやきに
私は 首を横にふりながら答えました。

「そやな・・・
男も 泣きたい時あるし
実際 泣いてしまうこと あるなぁ
・・・あ 今がまさにそれか。」


そう言って 先生が今度は笑い出しました。
最初は 軽く笑っていた程度ですが
何かを思い出したのか
笑う声が だんだん大きくなりました。

「どうしたん?
なにがおかしいん?」


私がそう訊くと
目に涙をためたままの先生が
私を見て またくすくす笑い出しました。

「今までで 一番泣いたのって いつ?」

突然そんなことを訊かれたので

びっくりしました。

「うちが 一番泣いたこと?」

「そうや カナが一番泣いたのって
なんでかなぁと思って
・・・カナはよう泣くし 
いっぱいありすぎて 思い出すの難しいか?」

むう・・・
当たっているだけに ちょっと悔しいです。

「ん~  どうじゃろ
自分で覚えてる分じゃったら
中学生の頃に 自分の部屋でよう泣いたけど・・・」


あの頃は 友人関係がことごとくうまくいきませんでした。

その上に

もともと友人ではなかったクラスメートが絡んで

私は クラスで完全に浮いてしまっていました。

学校では つらいことがたくさんありましたが

絶対に弱いところを見せたくなかったから

泣いたりするもんかと ずっと我慢をしていました。


帰宅してからは 母に気づかれたくなかったので

自分の部屋で 声を出さないように泣いていました。

「カナは 中学で

いじめ・・・られてたって 前に・・・」

先生に訊かれましたが 首を横に振りました。
あんなのはいじめじゃない

私は いじめになんか あっていない
そう思ったのです。

「ううん うちはいじめられたんと違う
そんな風に 思ってない
確かに よう泣いたけど
悲しいって言うよりも 悔しかった・・・」


私の言葉を聞いて 先生が笑い始めました。

「カナは ほんま気ぃの強いやっちゃ・・・」

ぎゅっと またからだを抱きしめられました。

「確かに あの時は悔しいて よう泣いたけど
うちが一番泣いたんは 高校生になってからじゃ。」


「高校生?  なんで?」

私がその頃までの人生で 一番泣いたと思うのは
思い出してみると 高校2年の冬のある日です。

「あっちゃ・・・ ううん
香川先生が うちに初めて来た時じゃ。」


大晦日を控えた 慌ただしいある日のことでした。

「あ・・・」

先生も あの日のことを思い出しているようです。
父に殴られて 顔や口もとが切れて
先生の顔に 血がついていて
騒動ののちに 先生が帰って行ったあと
私は 何とも言えない気持ちになり
夜を泣き明かしたのでした。
あの日が 一番悲しくてせつなくて
胸が押しつぶされそうでした。



次に 続きます・・・



 









突然に

ぽろぽろと涙をこぼし
じきにしゃくりはじめた私の様子に
先生は驚いたようでした。

さっきまで 普通に話していた相手が

なんの前触れもなく
いきなり泣き出したら

誰だってびっくりすると思います。

「・・・カナ どうしたん 
なんで泣くん?
俺 なんか気に障るようなこと言うたか?」


私の顔をのぞき込んでいるのでしょう。
先生の声が とても近くで聞こえます。

私は 涙をこぼしたまま
うっすら視界に入る
先生の顔を見て 首を横に何度も振ります。

こんな時にも
以前に 
新大阪で先生を見送った時
ホームで聞いた
新幹線が発車する合図の

プーという機械的な音が
私の頭の中で 何度も鳴っています。

「カナは 昔っから
ほんまに泣き虫やなぁ・・・」


ぎゅっとからだを包み込むように抱きしめたあと
先生がもう一度
私の顔をのぞき込んできました。

「どうしたん?
教えて・・・  な?」


「・・・」

黙りこんでいたい訳ではありません。
ちゃんと説明したいのに 胸が苦しくて
しゃべりたいのに 押しつぶされそうな気がしました。

「・・・
イヤなん・・・
また お見送りするの・・・」


その言葉だけで 
先生にはすべてがわかったみたいでした。

「・・・そっかぁ
それで カナ
泣いてんのかぁ・・・」


ほおに 
先生のてのひらのあたたかさを感じたと思ったら
どれだけもしないうちに
ほおに 柔らかいくちびるの感触がしました。
キスの雨を たくさん降らせたあとで
先生が 話しはじめました。

「ほんまにカナは 泣き虫やなぁ
何がきっかけでそうなるんか知らんけど
カナの涙は 
俺にはいつも予想できへんなぁ・・・」


くりかえし ほおにキスを受けて
ぎゅっと抱きしめられると
胸の鼓動が だんだん大きくなるのがわかります。


「うちにも わからんのじゃもん
さっきまで そんなん全然思わんかったのに
あっちゃんの背中 ぎゅうってしたら
・・・前に 新幹線に乗って帰っていった
あの時見た 背中を思い出したん・・・」

「そうか・・・」

また 泣きそうです。
まったく 泣き虫にもほどがあります。

先生がもう一度 私の顔をふれはじめました。
この温かい 大きな手のひらで 
優しくほおや額をさわられるのが

私は大好きでした。
すうっと 気持ちが落ち着けるような

そんな気がするのです。

「そんなん言うたらな 俺も同じや。」

「え?」

「カナは 
俺がいつも 平気な顔して新幹線に乗ってる思てるやろけど
ほんまは俺やって さみしいんやで

カナとこうして逢えたとき うれしいて幸せやって思うから
なおさら 離ればなれになる時はさみしいてつらい
カナと おんなじや・・・」


言葉を ひとつひとつ選びながら話す
先生の顔を じっと見つめていました。
メガネの奥にある 先生の優しい目が
こころなしか 潤んでいるような気がしました。
泣き虫で 涙腺の弱い私とは違って
先生は こんなことで泣くような人ではありません。
でも 明らかに瞳が潤んでいます。

私が じっとそのまま見つめていると
先生と目があいました。

「そんなに 見るな・・・」

潤んだ様子の自分の目を
私に見つめられるのが 恥ずかしいようです。

言うことを聞かないで
じっと目を見つめている私のことを
先生がまた ぎゅ~っと抱きしめてきました。
折れるのではないかと思うほどにです。

「見るな・・・
言うこときかんのやったら
またこうするよ。」


「あっ・・・」

抱きしめた私のからだを
先生は離そうとしなくて
胸をさわられて くすぐったくて
からだをよじらせようとする私のことを 
許してくれそうにありません。

「もうっ えっちぃ!」

今日は 朝から何度も愛しあい
さすがに
タフな先生も もうくたくたになっているだろうから
セックスに及ぶことはありませんでしたが
それでも先生の手は 私の胸元から
離れていく様子はありませんでした。

手のひらと指で
まるでその感触を楽しむかのように
乳房をそっとさわったり 揉んだりしています。
先生の表情を見ていると
本当にうれしそうです。

いくらさわっても飽きないと
さっき先生は言いましたが
本当に飽きないものなのか 不思議で仕方がありません。


あっ
先生の攻撃の矛先が
乳首に集中してきました。

「いやっ・・・」

逃げようとする私でしたが
力では 先生には絶対にかないません。

「カナのここ 不思議やなぁ
さわってたら だんだん起っきしてきたよ
ほら おっきぃなってきた。」

耳元で こんなことを囁くのは反則です。

「さっきまでは ちっちゃかったのにな
こんなにおっきぃて こりこりって・・・
ああ・・・」


抱きしめた私のからだを離さないままで
先生が自分のからだを沈めてきました。

待ちかねたように 胸元に顔を埋める先生は
自身が認めている『おっぱい星人』だから
私の耳元で ささやいたあと
どうにも我慢ができなくなったのか
今度は 私の胸にキスの雨を降らせるのでした。

「いやっ

くすぐったい だめぇっ!」

いくらそんなことを言ったって

簡単に許してくれる先生ではありません。

「あっちゃん もうっ
くすぐったいよ!」


そう言いながら 先生の柔らかい髪の毛を撫でていると
先生がぼそっとつぶやきました。

「だんだん

忙しいなるから
・・・今度カナに逢えるんは 
いつになるかわからんから

いっぱいチュウしときたいな
いっぱいさわって 
カナのこと・・・」


途中で 言葉が途切れました。

「あっちゃん? どうしたん?」

からだを もう一度ぎゅっと抱きしめられました。

「・・・ゴメンな
カナに 嫌な思いさせてゴメンな・・・」


先生の思わぬ言葉に
私は「どうして?」としか訊けませんでした。

「なん? なんで謝るん?
うちは 謝ってもらうようなことされてないよ。」

何度も何度も 先生の髪を撫でながら
私は答えました。

「俺が鈍感で脳天気なせいで
カナに嫌な思いさせてしもた
・・・あんな手紙がここに届いたんは
俺があほやったから・・・」

先生は ここに届いたあの手紙などのことをさして
私に謝っていたのでした。
確かに あれらが届いたときは驚いたし
指を切った時は怖いと思いました。
でも あれを全部先生のせいだなんて思えません。

「そんなん あっちゃんのせいと違う
子どもでないんじゃから
・・・あれは 小山田先生が 
自分の判断でやったことじゃ

あっちゃんのせいと違うよ。」


「そやけど
やっぱり俺が脳天気であほやから!」


強い口調でそう言いはじめたと同時に
先生が がばっと上体を起こしてきました。

「きゃあっ!」

驚いて 先生の方を見た時に
また別の驚きが生まれました。

先生のメガネの奥にある瞳から
涙が流れていたのでした。

今まで
神戸にある
先生のお友達のお墓へ行った時とか
先生が涙ぐんだ様子だったのを
気づいたことはありました。
でも 
明らかな泣き顔を 正面から見たのは
これが初めてでした。

心を 心臓を
ぎゅっとわしづかみされるような気がしました。

すぐに言葉が出てこなくて
こんな時には 何を言うべきなのだろう
そう思う前に 先生を抱きしめていました。
ぎゅっと抱きしめて 髪を撫でるだけしかできませんでしたが
先生は さっきの私とは違って
しゃくりあげそうになってはこらえ
泣き声が出るのを 必死でこらえているようでした。

そんな先生が 私は本当に愛おしくてたまらなくて
この人に 守ってもらうだけでなく
私がこの人を守ってあげることができたなら・・・
そう強く思いました。

100%の割合を示す円グラフがあれば 
私が守られる方の割合がほとんどなのでしょうけど
ほんの少しでもいいから
こんなふうにして この人を守りたいと思う時があればいい
そう思いながら
先生の髪の毛を 何度も何度も撫でる私がいました。

弥生3月

いつの間にか お彼岸を迎えて

春の到来を告げる

センバツ、高校野球の熱戦がはじまりました。

(今日は 雨のために中止になりましたが)

そして
4月の足音が すぐそこまできた今日この頃

広島の桜がぽつぽつ咲き始めました。


今日 3月22日は

51歳になる広島市民球場でのラストゲーム

非公式のオープン戦ではありますが

広島東洋カープ 対 阪神タイガース の試合が

行われる日でした。

今日のここ広島地方は 朝からあいにくの雨で

試合が行われるかどうか

いえ どちらかというと中止ではないかと思ってしまうほど
雨脚が強いときがありました。

ちょうど TV中継があったので

部屋で試合観戦ができたら と思ったのですが

無事 9回までゲームが進められて

広島市民としても

阪神ファンとしても とてもうれしかったです。

たくさんのファンが 球場に足を運び

公式戦さながらの観客数だったと聞きました。

ゲームそのものは
久しぶりに阪神が勝てるかなと思っていたけれど

やっぱり そんなに甘いものじゃなく

嶋選手の同点スリーランHRがでて

結局 3-3の引き分けとなりました。
私のそばできっとTVを見ていたであろう

香川先生はたぶんあの瞬間

「げぇ~!!」っと言って

バタッと倒れた真似をしたのかもしれません。

TVから「カツ~ン」という音がした瞬間
先生の写真が 音をたてて倒れましたから・・・
いつまでたっても
香川先生は『虎党』のままです。

今日は 久しぶりの記事更新です。
コメント返しが滞っているにも関わらず

コメントをくださる方

いつもペタをくださる方

本当にありがとうございます。

どちらのお返しも なかなかできなくて

申し訳なく思っています。

まだ ずっと引き続いて
同じ日のことを書き綴っているわけですが

この日は 本当に思い出深い一日で

朝早くから 夜まで
先生は 私と一緒にいてくれました。

そばで 色々な話をしてくれました。
ひとつした話がきっかけで また違う話を
そしてまた 別の話と・・・

例えば 先生の中学・高校時代の話や
大学時代の話

「先生」になって初めて赴任した学校の話

そこで逢った 尊敬できる『先輩』の話

いっぱいいっぱい 話して聞かせてくれました。

さすがに 話し疲れたのかもしれません。

先生が ふっとあくびをしました。

「眠いん?」
私が訊くと 先生がふっと笑いました。

「ん?
・・・そうなんかなぁ
さっきちょっと寝たし どうやろ?」

やっぱり眠いみたいです。
先生は
からだを横に向けて 私の方を見ながら
優しい顔で笑っています。

「眠り姫がそばにおったら
普通の人間でも 眠うなるんかもしれんな。」


眠り姫?
私のこと?
不思議そうな顔をする私の方へ腕をのばしてきて
ぎゅっと抱きしめてきました。

「うちが眠り姫?
眠り姫って 寝てばっかりのお姫様のことじゃ・・・」


私のからだを抱え込むようにしたあと
先生がくすくす笑い出しました。

「カナは 覚えてないか?
俺の部屋で 布団干してくれて
ベッドの上で すうすう寝息たてて寝てたやろ?」



それはなんとなく覚えています。

思い出すと恥ずかしいです。
先生の汗くさいお布団を干したあと
たまった洗濯物を洗っている途中で
少しだけのつもりで

先生のベッドの上で 横になっていたら

本当に眠ってしまって
目が覚めたときには
学校から先生が帰ってきていて
途中で止まっていた お洗濯も
先生があとの作業をしてくれていたのでした。

「思い出したみたいやな・・・
あれが眠り姫でのうて なんやろな?」


恥ずかしそうな顔で 自分の顔を見あげる私に
先生は話しかけます。

「・・・うちが 寝てばっかりみたい・・・」

恥ずかしくてたまらないのだけど
なんだか悔しくて

いえ 本当は「悔しい」と言うよりも
勝手に逆ギレしているみたい とでもいいますか・・・
・・・やっぱり 単に気恥ずかしいんですね。
うまく言えないんだけど
「いつもはそんなじゃないのよ」っていう気持ちです。
少しふくれたように言う 私の顔をのぞき込んできて
先生はまた笑います。

「わかってるよ
カナは 眠り姫でもあるけど
そうやなぁ 
俺にとっては シンデレラでもあり
かぐや姫でもあるんや・・・

なんか こんなこと言うてると
恥ずかしいなってきたわ

俺 もともと こんなこと言うキャラクターと違うのに・・・」

「え?」

今度は 先生が照れを隠すように
私のことをまた ぎゅっと抱きしめてきました。

「カナ・・・」

「ん?」

「なんでもない 呼んでみただけ。」

それじゃあまるで
前の席の子にちょっかいを出す 小学生の男の子みたいです。

「なん?  もう・・・」

こっちが抱きしめられてばっかりじゃ 不公平なので
私も 先生の背中に手をまわして
ぎゅっと 先生のからだを抱きしめます。
先生の大きな背中です。
授業中に見た 濃紺のスーツに包まれた
広い大きな背中は
今は 何も身につけていない
私だけのものです。

愛しい気持ちが あらためてこみ上げてきて
離れたくない 一緒に居たい
そう思っていると
今日 これから数時間後には
またこの背中を見送る瞬間がくること

新大阪駅のホームに響く
発車の合図の音が脳裏に浮かび
知らないうちに 私の目からは
大粒の涙が ポロポロこぼれてくるのでした。