10月15日、米国ハワイ州で子どものグリーフサポートを行うKids Hurt Too Hawaii(キッズハートツーハワイ)の伊藤ヒロさんが講師となり、宮城県石巻市雄勝町で講演会が行われました。
子どもグリーフサポートステーションからも、スタッフがお手伝いと勉強のために参加させていただきました。
Kids Hurt Too Hawaiiは、死別や離婚、虐待などで親や身近な人を喪失した子どもへのグリーフサポートを行っており、日本のグリーフサポート実践者の多くも、Kids Hurt Too Hawaiiからグリーフサポートを学んでいます。
今回の講演会にはKids Hurt Too Hawaii創設者であるシンシア・ホワイトさんもいらっしゃる予定だったのですが、ご家族の急用で来れなくなり、今回は伊藤ヒロさんお一人での講演となりました。
講演では、トラウマやグリーフの違い、それらを抱えた子どもにどう寄り添ったらいいのか、ということを、伊藤ヒロさんが分かりやすくお話されていました。
講演の内容の一部をメモします。一部私の解釈も入っていると思います。
まず、トラウマとグリーフはまったく別物だということ。
トラウマは、簡単に言えば、脳の傷です。
人間の対処能力を超えた、命の危険を認識するような経験がきっかけとなり、脳の機能に影響を与える、生化学的な反応なのです。
だから、トラウマを抱える人には、すぐさまケア(治療)が必要となります。
その方法としては、プレイセラピーやアートセラピー、グループセラピーが有効とされています。
次に、グリーフについてですが、グリーフはトラウマとは全く別物です。
グリーフは喪失体験に伴う、自然で健全な反応であり、異常や病気ではありません。
大切な人やものを喪失したときには、誰にでも起こりうる、自然な反応なのです。
だからといって、放っておいていいというわけではありません。
周囲の適切なサポートが、グリーフを抱えた人にとって大きな力になります。
その方法としては、人とのつながりが一番の介入方法です。そのため、仲間(ピア)との相互支援が有効です。
このようにトラウマとグリーフは異なるものであるため、トラウマとグリーフがそれぞれどのようなものであり、どのようなサポートが必要であるかを知っておくことはとても重要です。
トラウマは適切なケアがあることで、良くなっていくものですが、グリーフはいずれ消えてなくなるものではなく、ずっとあり続けるものです。
講演のなかで、「グリーフは変化。変化は成長。」という言葉がありました。
自分のグリーフとうまく付き合っていくことで、グリーフが自分の糧になるのかもしれません。
自分のグリーフと向き合う作業を「グリーフワーク」といいます。
グリーフワークは、誰か他の人が替わってあげられるものではありません。
グリーフワークは、自分でやるしかないのです。
だから、サポートの方法としては、何かをしてあげる・教えるなどといった方法ではなく、子どもたちが自分の力でグリーフに向き合っていけるような、「レジリエンス(難事に対する回復力、弾力性)」を構築するサポートが有効なのです。
Kids Hurt Too Hawaiiでは、子どもたちが、それぞれに合ったやり方でグリーフを表現できるように、安全・安全な環境を整えています。それがサポートグループです。
私たち子どもグリーフサポートステーションでも、Kids Hurt Too Hawaiiにならい、グリーフプログラムを行っています。
講演の内容は書ききれませんが、今回のお話で、子どもたちのグリーフサポートの重要性を再認識し、グリーフとトラウマについて理解を深めることができました。
そして同時に、分からない、とも思いました。
グリーフやトラウマは人それぞれであったり、正しいやり方がないからこそ、完全に「理解した」と言えることはないのかもしれません。
だからこそ、これからも学び続け、子どもたちに教えてもらいながらグリーフサポートを続けていきたいと思いました。
講師の伊藤ヒロさん、主催の雄勝まちづくり協会のみなさま、グリーフサポートせたがやのみなさま、ありがとうございました。