ようこそのお運びで。

冷蔵庫に続いて床暖修理。その前は電球交換。住まいの維持の為、全部自力で判断対処。ひとり暮らしは気楽さとはほど遠い。

◎大河・・・またもや『古今集』

倫子の朗詠した歌

「君や来む我やゆかむのいさよひに槇の板戸もささず寝にけり」(古今690)

・・・あなたは来てくださるだろうか、それとも私の方から訪ねようかしらとためらい迷う内に、十六夜の月も出てきて、結局その月をながめつつ槇の板戸も閉ざさずにうとうと寝てしまったことです。・・・

◎ご近所・「薄紅梅」「椿」「水仙」(3月上旬)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お題

「なげきわび 空に乱るる わが魂を 結びとどめよ したがひのつま」(源氏物語・葵)六条御息所をめぐる歌③

 

六条御息所は、自分が無視、蔑ろにされた車争いの後、少しまどろんだ夢の中で葵の上とおぼしき人のもとへ行き、引きまさぐり、荒々しく打ったりすることが度々あった。葵の上はにわかに産気づく。祈祷の限りを尽くすが、執念深い物の怪が一つあり、「祈祷を少し止めてください。源氏の大将に申し上げたいことがあります」などと言う。源氏は葵の上の傍らに行き、涙を浮かべるさまを見る。

 

あまりいたう泣きたまへば、心苦しき親たちの御事を思し、またかく見たまふにつけて口惜しうおぼえたまふにやと思して、「何ごともいとかうな思し入れそ。さりともけしうはおはせじ。いかなりともかならず逢ふ瀬あなれば、対面はありなむ。大臣、宮なども、深き契りある仲は、めぐりても絶えざなれば、あひ見るほどありなむと思せ」と慰めたまふに、「いで、あらずや。身の上のいと苦しきを、しばしやすめたまへと聞こえむとてなむ。かく参り来むともさらに思はぬを、もの思ふ人の魂はげにあくがるるものになむありける」となつかしげに言ひて、
 ☆なげきわび 空に乱るる わが魂を 結びとどめよ したがひのつま
とのたまふ声、けはひ、その人にもあらず変りたまへり。いとあやしと思しめぐらすに、ただかの御息所なりけり。あさましう、人のとかく言ふを、よからぬ者どもの言ひ出づることと、聞きにくく思してのたまひ消つを、目に見す見す、世には、かかることこそはありけれと、疎ましうなりぬ。あな心憂と思されて、「かくのたまへど誰とこそ知らね。たしかにのたまへ」とのたまへば、ただそれなる御ありさまに、あさましとは世の常なり。

・・・葵の上があまりにひどく泣きなさるので、お気の毒な親たちの御事を思いなさり、またこのように源氏をご覧になるにつけても残念に思われなさるのであろうかと源氏は察して、「何事もそんなに思い詰めなさるな。それでもお悪くはなりますまい。たとえ万一のことがあっても、夫婦は必ず再び逢う時があるといいますので、お逢いすることがきっとできるでしょう。父大臣や母宮なども、深い縁のある仲は、生まれ変わっても絶えないそうなので、お逢いする時が必ずあるだろうと思いなさいませ」と慰めなさると、「いえ、違うのですよ。この身がたいそう苦しいので、しばらく楽にしてくださいと申し上げようと思いまして。このようにここに参上しようとは全く思っておりませんでしたのに、もの思いをする人の魂は、本当に身から離れてしまうものでした」と親しげに申し上げて、

 ☆なげきわび 空に乱るる わが魂を 結びとどめよ したがひのつま

とおっしゃる声や様子は、ご当人ではなく、変わりなさっている。ひどく奇妙だと考えめぐらすと、まさにあの御息所であったのだ。驚いて、これまで人々があれこれ噂していたのを、けしからん者たちの言い出すことと、聞きにくく思いなさって、噂を否定なさっていたのを、目の前でまざまざとご覧になって、世の中には、こういうこともあるのだなと、嫌な気持ちになった。ああいやだと思いなさって、「そうおっしゃるが、誰なのか分からない。はっきりと名乗りなさい」とおっしゃると、全く六条御息所そのもののご様子に、驚き呆れるなどというものではない。・・・

 

源氏は葵の上があまりに泣くので、親たちや源氏との別れを考えているのかと推察し、「妻は初めて契った男に背負われ三途の川を渡るからまた再会できる、親との宿縁は来世でも続く」趣旨のことを言ってなだめるが、葵の上の返答は「私の身を楽にしてほしい。魂はこうして抜け出すものでしたのね」という予想外のものだった。そしてその姿は、驚くことに六条御息所そのものだった。

 

上村松園「焔」

 

 

◎和歌を取り出し、検討する。

 

☆なげきわび 空に乱るる わが魂を 結びとどめよ したがひのつま

・・・悲しみに耐えきれず、空に迷っている私の魂を結び止めてくださいませ、下前の褄をお結びになって。・・・

①「なげきわび空に乱るるわが魂」・・・憂悶が募って魂が抜け出るという発想

『大斎院前御集』

「33 我がたまの ありどころこそ おもほえね 身はなれにし こころまどひに

『和泉式部続集』

「406 人はいさ わがたましひは はかもなき よひの夢ぢに あくがれにけり

『後拾遺集』

「1162 ものおもへば さはのほたるを わがみより あくがれにける たまかとぞみる」

②「わが魂を結びとどめよしたがひのつま」・・・「したがひのつま」とは着物の「下前の褄」。下前とは着物を合わせた時、下になる方。迷い出た魂を鎮めるために「下前の褄」を結ぶ。

『伊勢物語』

「189 思ひあまり 出でにしの あるならむ 夜ぶかく見えば 魂むすびせよ

『狭衣物語』

「124 あくがるる 我が魂も かへりなん 思ふあたりに 結びとどめば

「125 の 通ふあたりに あらずとも 結びやせまし したがひのつま

 

あなたの訪れが無くて悲しみに暮れたあまり、私の魂は抜け出して、あなたの愛情を受け懐妊なさった方、そして私を辱めた方のところまで浮遊してきまいました。あなたの手で私の魂を結び止めてくださいと願う歌。

 

 

おまけ

 

医大プロジェクトチームの研究に参加して下さった被験者の皆様のご尽力と、

ネンタ医師の困っている患者様を何とかして救いたいという熱意と、

被験者様に集まっていただこうとして開設したこの拙ブログの存在も少しばかり貢献して実現した論文

 

国際科学雑誌 「PLOS ONE 」の論文

「Brain Regions Responsible for Tinnitus Distress and Loudness: A Resting-State fMRI Study」

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0067778

 

二報目

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0137291

  sofashiroihana