ようこそのお運びで。少し時間ができ、すこし体調がましになりましたので、ちょっとばかり京都へ行ってきました。夏に二条城の夏祭りで喪失感を深めて激痛も悪化したので、ここから仕切り直しです。ブログも久しぶりにアップ致します。ご訪問もさせてくださいませ。

◎「京都・二条城」

「椿」「唐門の彫刻」「庭園」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お題

「あめにます とよをかひめの 宮人も わが心ざす しめを忘るな」(源氏物語・少女)夕霧をめぐる歌④

 

◎源氏の二条院では五節の準備が慌ただしくなされていた。今年は十一月の中の辰の日の豊明節会(穀物の収穫を祝う新嘗祭・天皇即位を祝う大嘗祭の儀式後の宴会)で天女の舞を披露する五節の舞姫を、源氏のもとからも出すのである(公卿の娘2人、受領・殿上人の娘2人が選ばれる。大嘗祭では公卿の娘は3人。)。選出されたのは源氏の従者・惟光の娘。雲居の雁のことで気鬱な夕霧は、気晴らしに二条院内を歩き回る。

 

大学の君、胸のみふたがりて、ものなども見入れられず、屈じいたくて、書も読までながめ臥したまへるを、心もや慰むと立ち出でて紛れありきたまふ。さま容貌はめでたくをかしげにて、静やかになまめいたまへれば、若き女房などは、いとをかしと見たてまつる。上の御方には、御簾の前にだに、もの近うももてなしたまはず。わが御心ならひ、いかに思すにかありけむ、うとうとしければ、御達などもけ遠きを、今日はものの紛れに、入り立ちたまへるなめり。舞姫かしづきおろして、妻戸の間に屏風など立てて、かりそめのしつらひなるに、やをら寄りてのぞきたまへば、なやましげにて添ひ臥したり。ただかの人の御ほどと見えて、今すこしそびやかに、様体などのことさらび、をかしきところはまさりてさへ見ゆ。暗ければこまかには見えねど、ほどのいとよく思ひ出でらるるさまに、心移るとはなけれど、ただにもあらで、衣の裾を引きならいたまふに、何心もなく、あやしと思ふに、
 「☆あめにます とよをかひめの 宮人も わが心ざす しめを忘るな
 みづがきの」
とのたまふぞうちつけなりける。若うをかしき声なれど、誰ともえ思ひたどられず、なまむつかしきに、化粧じ添ふとて、騷ぎつる後見ども、近う寄りて人騒がしうなれば、いと口惜しうて立ち去りたまひぬ

・・・ 大学の君は、ただ胸が悲しみでふさがって、食事なども見るのも召し上がることもできず、ひどくふさぎこんで、漢籍も読まないでぼんやり物思いに沈んで横になっていらっしゃったが、心が慰められるだろうかと外出して、人目に触れないように歩きまわりなさる。容姿・顔立ちはすばらしく美しくて、もの静かで優美でいらっしゃるので、若い女房などは、とても魅力的だと拝見している。紫の上の御部屋のあたりには、御簾の前にさえお近寄らせにならない。(源氏は)ご自分のご性分から、どうお考えになったのであろうか、(夕霧には)遠ざけるようなお扱いなので、女房などとも疎遠なのだが、今日は舞姫の騒ぎに紛れ、入りこんで来られたのであるようだ。舞姫を(牛車から)大切に下ろして、妻戸の間に屏風などを立てて、かりそめの部屋を作ってあるのだが、(夕霧が)そっと近寄っておのぞきになると、(舞姫は)だるそうに物に寄りかかっていた。ちょうどあの姫君(=雲居の雁)と同じくらいのお年に見えて、もう少し背丈がすらりとしていて、姿などが一段と目立っていて、美しい点では勝っているようにまで見える。暗いので細部は見えないけれど、全体の様子が(雲居の雁を)ごく自然と思い出してしまうので、思いが移るというのではないが、平静でもいられないで、裾を引いて音を鳴らしなさったので、(舞姫は)何気なく、おかしいと思ったところ、
「☆あめにます とよをかひめの 宮人も わが心ざす しめを忘るな
 みづがきの」
 
とおっしゃるのは、きわめて唐突なことであった。若々しく美しい声であるけれども、誰とも見当がつかず、薄気味悪く思っていたところへ、化粧直しをするというので、騒いでいる(世話役の)女房たちが、近くに寄って来て騒がしくなったため、とても残念な思いで(夕霧は)立ち去りなさった。・・・


夕霧の美貌と優美さは、若い女房たちの賞賛の的となる。源氏は自身に、義母の藤壺との不義があったため、夕霧を決して紫の上に近づけない。しかし、この日は五節の騒ぎの紛れに、近くに入り込み、源氏の出す五節の舞姫を見てしまい、その美しさにふと心ひかれた。

 

 

                 源氏物語六百仙



◎和歌を取り出す

☆「あめにます とよをかひめの 宮人も わが心ざす しめを忘るな
 みづがきの」

・・・天上にいらっしゃる豊受姫にお仕えする宮人も、私が抱いた「あなたは私のもの」という思いをお心に留めておいてくださいな。私はずっと前からあなたを慕ってきました。・・・

 

             「五節の舞姫」フリー画像

 

①「あめにますとよをかひめ」・・・以下の歌に拠る。

☆『拾遺集』

「579 みてぐらは わがにはあらず あめにます とよをかひめの 宮のみてぐら」

「とよをかひめ」とは豊受姫。五穀を司る神。

②「しめ」・・・「標」(神や人の独占地であることを示す立ち入り禁止の目印)と「注連」(神事に用いる注連縄)を掛ける。

「注連」と「とよをかひめ」は縁語。

③「みづがきの」・・・次の歌の引き歌。「ずっと前からあなたのことを心に深く思ってきたのです」の意。

☆『拾遺集』

「1210 をとめごが 袖ふる山の みづがきの ひさしきよより 思ひそめてき」


五節の舞姫を、天上におはす神に仕える天女に見立て、さらに、神に関連させて「注連」に「標」の意を掛け、あなたは私の物という「標」をつけましたよと言い寄る歌。

 

おまけ

 

医大プロジェクトチームの研究に参加して下さった被験者の皆様のご尽力と、

ネンタ医師の困っている患者様を何とかして救いたいという熱意と、

被験者様に集まっていただこうとして開設したこの拙ブログの存在も少しばかり貢献して実現した論文

 

国際科学雑誌 「PLOS ONE 」の論文

「Brain Regions Responsible for Tinnitus Distress and Loudness: A Resting-State fMRI Study」

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0067778

 

二報目

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0137291

 

 

  sofashiroihana