10月25日

つれの我がままがまた始まった。
隣のベッドの人のイビキに悩まされて一日とも病院にはいられないと。
退院希望を先生に出したらしい。
先生もうんざりだろうな。
好きにして下さいとしか言いようが無い。

仕事に行く前に退院手続きをして欲しいと言うので、雨の中車を走らせたが大渋滞に巻き込まれた。
仕事に遅れるし、つれには腹が立つ!

イライラしながら病室について退院手続きをする。
何を言われても腹が立っているので無視!

つれの運転で近くの駅で降ろしてもらい仕事場に向かう。

なぜ腹が立つかと言うと、つれはまだ放射線療法の途中なので、1日に朝と晩の2回の放射線治療のために2回も病院へ通院をしなきゃならない。

本人は「おれ自分で運転して通うから大丈夫だ。」とは言うものの、それも心配だしそんなに頻繁に病院へ来なきゃならないのならそのまま病院へいてくれた方が安心だ。

しかし夜まで仕事をしながら考えてみると、つれの気持ちも良く分かる。
何よりも家が大好きな人で、家に帰れる事しか考えないのだから仕方がない。

仕事の帰りスーパーでつれの好きな刺身やらを買って帰宅。
お味噌汁を作って刺身と漬け物で私も久しぶりのちゃんとした食事が取れる。

つれは何度も「うん、うまい!」と言ってくれる。
「久しぶりにまともな食事だったよ。」と。
良かったと思う。
好きにさせて上げよう。

放射線療法の副作用らしいが、食道炎を起こしているのかしきりにノドの違和感を訴える。
心配で専門書を読んでみると確かにあった、副作用で食道炎を起こすと。
大事に至らなきゃ良いけど。

久しぶりに家のお風呂でゆっくり身体を洗ってベッドで横になるつれは幸せそうだ。

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10月21日

今日はつれと一緒にランチをする約束をしたので、病院へ行く途中にある「松屋」でカルビ丼を二つ買う。

二人で売店のテーブルを借りておでんも買って頬張る。
つれは「うまい!うまい!!」と満足そう。

昨日気になっていた頭の発疹は範囲がどんどん広がっている。
つれに言うと、「お腹や胸の方も発疹が出来たんだよ。」

そんな事より、また退院をせがんだらしい。
先生もさぞうんざりしているんだろうな。
申し訳ない。
すまん!

今日も採血をしたらしい。
誰々は腕がうまいから好きだけど、誰々は針を刺すのが下手だから嫌いなんだと。
狭い世界にいると視野も世界も狭くなるんだな。
こんな事ばかり愚痴る人じゃなかったと思うけど、最近はつれと話をしてもおばはんとおしゃべりをしているようでくだらないしつまらない。

病気が悪いのか?つれが悪いのか??私が悪いのか???
悪いの!でてこいや!!

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10月20日

点滴も全て終わり、つれは自由に歩き回っている。
6人部屋は窮屈だからと、時間を見つけては外の空気を吸いに行くか、地下の喫煙所に出かけるので、病室に行っても留守の時が多く探しまわらねばならない。

しかし少しずつ副作用が出て来ているようで、だるいとか頭に赤い発疹が出て来ている。

「肉が食べたい。」
珍しくつれが肉が食べたいと言う。
病院食はまずくて食べられないからと食事をキャンセルしているので、毎食院内のコンビニでおにぎりやサンドイッチ、カップラーメンなどをそのときの気分で買って食べている。
「中華丼が美味しそうだったから買って食べたらな、まずくて、まずくて喰えたもんじゃない。」と愚痴をこぼす。
でも、有名チェーン店の食品だし、他の人も大勢食べているのだから、そんなにまずいはずは無いと思う。
もしや味覚がおかしくなったのだろうか。

少しでも気分転換になればと思い、病院の前で見かけたマックドナルドで色々買い込んで病院へ戻ってつれを誘う。

「うまい!うまいよ!!」
味覚は問題なさそうだ。
照り焼きハンバーガーとチキンナゲット、ポテトとコーヒーを日曜日で閑散としているロービの長椅子で二人で食べた。
つれは満足そうに食後のタバコを吸いに喫煙所に。



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10月19日

寒くなりましたね。

今日も仕事の前につれの病室に顔を出す。
ベッドにいないな。
どこに行ったんだろう。
売店にお昼を買いに行ったのだろうか、それともタバコを吸いに喫煙所?

予感は的中!
ロビーのエレベーターの前で待っていると、点滴の棒をガラガラと引きながらマスクのおっちゃんが降りて来た。
近づいて来るとタバコの臭いがする。
この人、本当に病気を治す気はあるのだろうか。


しかしつれは担当医の先生から、白血球の数値も問題が無く、ガン腫瘍も小さくなり、気道も腫瘍の影響で右に曲がっていたのが元通りになっていると説明を受けたらしい。

え??悪い事を始めたら病気が治ったの???
そんなんでええの??????

ま、それもありか。
調子の良いつれがいれば良いか。

明日の朝も顔を出さなきゃ。
みなさん、おやすみなさい。


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10月17日

今日は仕事の前につれの大好きな京樽さんの巻き寿司を買って病室へ。
つれは副作用も無く今日も元気!
このまま治るんじゃないかい?

お昼にサンドイッチとカップラーメンを美味しそうに食べている。
食欲旺盛だ。
抗がん剤や放射線療法の副作用で殆どの人が食べられなくなるらしいが、つれには全く関係がないよう。
血糖値が高いのでインシュリンも打っているしタバコもバンバン吸っている。
が、元気だ。
何だか良く分からないけど。

つれは上機嫌でたくさんお喋りしてタバコ吸って・・・私は仕事へ。
今日で抗がん剤の点滴は終わり。
後の2日間は水の点滴と放射線療法が続くのみ。
本人はまたもや退院が待ち遠しらしい。
勘弁して欲しい。

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10月16日

昨日は仕事で病院へ行けず。

朝早い時間につれからメール。
昨夜からの台風はすごかったな。

9時過ぎには晴れ間も出たので、準備をして病院へ。

つれの様子が気になっていたが、特別な副作用は無いみたいで一安心。
しかし前回同様、しゃっくりをしていた。

別の副作用か???と思う程、つれのおしゃべりが止まらない。
何と言うか、どうでも良い様な事を繰り返して話す。
いつものつれとはちょっと違う感じ。
まるでボケ老人のようだ。

人見知りのつれが誰とも話さずにいたから、私の顔を見た瞬間嬉しさでおしゃべりが止まらなくなったのか、頭の方にも傷害が出て来たのかは確かではないけど、ちょっと違和感が有るな。

明日行って確かめよう。

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10月14日

一泊の外泊が終わり病院へ向かうつれはやはりため息ばかりだ。
明日からは2回目の治療が始まり、抗がん剤と放射線治療が始まる。
朝早くから点滴や治療のスケジュールがびっしりらしい。
夜までかかると言う。
大変だけど、私は仕事で来られないので頑張って欲しいと伝える。
明日から台風が来ると騒いでるけど大丈夫かしら。

隣ベッドの足を切断したおじさんのイビキがうるさくて寝られないと苦情を言うつれのために、地下の売店で耳栓を購入。

つれを病院へ残して帰宅。

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10月13日

朝の9時前、早い時間に病室に向かうと、エレベーター前でつれが待っている。
どんだけ家に帰りたいの?
ウキウキしているつれを連れて家へ帰宅。

早速洗濯をさせて?私は昼食の準備と夕食にはすき焼きが食べたいと言うオーダーを受けて買い物へ。

スーパーでつれ用の和牛を奮発して、自分用にアメリカン産の肉を買う。

つれは珍しく上機嫌だ。
良く笑いくだらないジョークを連発。
良かった、元のつれに戻ってくれたんだね。

久々に元の生活に戻って楽しく食事、お風呂の用意といそいそと動きながら、日々の変わらない日常のありがたさを痛感。

つれは明日の夜にはまた病院へ戻って火曜日からは抗がん剤と放射線療法の地獄のような日々が待っている。
少しでも元気づけてやりたいな。

大した副作用も無く済んでもらえばありがたいけど、前回のように白血球の減少と肺炎を起こさないよう祈るだけ。

つれも「おれ、今回の治療で死ぬかもしれないな。」と言う。
「そんな事無いでしょう?」と言うが、何の保証もないのだ。

今読んでいる山崎豊子さんの「大地の子」のドラマは昔NHKで上映されたけど、つれはその時海外勤務だったので見ていない。

ネットでNHKオンデマンドの契約をしてパソコンで見れるようにしてあげた。

ハマる。

半日パソコンを占領された。
つれ、泣いている。

「ママ、おれ泣いちゃったよ。」
知ってるよ。
「涙もろくなったのかな。」
主人公の辛い境遇と自分の今の状態を重ねたんじゃないかな?


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10月11日

今日はお昼ご飯を一緒に食べる約束をしていたので、11時半頃家を出た。
車の中で携帯が鳴る。
赤信号で携帯のディスプレイを見るとつれからの電話だ。
電話をしてくるなんて珍しい。

病院の駐車場に車を止めて病棟に歩いていたら、つれが外まで出て来て待っていた。
こんなに待ち望まれた事ないな。

「あら、どうしたの?お昼ご飯食べに外に行こうか?」
「え?いいのかな?」
「いいわよ、車でちょっと走ったらレストランがあるから、気晴らしに行こう。」

結局遠くまでは行けず、近くの和食のファミリーレストランへ。
つれはレストランに入る前に、喫煙コーナーで堂々とタバコを吸っている。

今日のメニュは天丼とざるうどんの定食。

「昨日もいっぱい注射されたよ、それに、あの病棟はレンジもないしトースターもない。
朝食のパンが焼けないんだ。
焼いてないパンにバターをつけて食べるなんて耐えられないよ。
もう朝食もキャンセルして、売店で別のものを買うよ。」

「家に帰ったら肉が食べたいな、家で何か作って食べよう。」
「火曜日の治療スケジュールを見たけど、朝から晩までかかるらしいよ。」
「5年の命か・・・。オリンピックは見れないだろうな。」
などなど、止めどなくつれは一人で話をする。

「大丈夫、録画しておくから。」
「??バカ!」と久しぶりにつれが笑った。

明日は朝早く迎えに来て欲しいと言われたが、なぜか気持ちが重い。

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10月10日

つれの揺れ動く気持ちは分からなくもないけれど、これから治療に取り組んで行くのか、それとも治療などせずに余命の続く限り想い出を一杯作って行くのか、つれがはっきり決めてくれない限り私はもちろんの事、病院側の治療方法も変わってくる訳だから、それを決めて欲しいと言った。

というのは、つれは私の前では「おれはもう良いよ、好きな事をして生きて来たし、思い残す事もないし、これが寿命なら受け入れたいよ。」というくせに、先生の前では良い子になって、先生がこういう風にして行きましょうと言うと「はい、お願いします。」と言う。

夫婦で話が噛み合ないで、私がイケメンの先生に相談をすると怪訝そうな顏をされる。
「奥さんはご主人の病気を治したくないですか?治療を放置するんですか?」と咎められた。
以後イケメンの先生の私を見る目が変わった。
旦那の死を望むこわ~~い女って思ってる。
違う、違う。

朝早くつれからのメール。
「先生にこれからの事を家族を交えて話をしたいと言っておいたから、4時に時間を作ってくれるそうだよ、ママ4時頃に来てね。」
よし!これで本人の口からはっきりと言ってもらおう。

約束時間の少し前に病室に着いたら、つれがお腹を見せてくれる。
「放射線科の先生と話をしたよ、ここに放射線を当てるんだって。」
マジックペンで印がついている。

「おれ、昨日主治医の先生に、治療をしなかったらどれくらい持ちますかと聞いたら、半年ですよ言われたよ。」
「それでどうするの?」
「分からない、ママと一緒に説明を聞いてみる。」
息子達の大学進路指導に付き添っていた時みたいだな。

面談室と呼ばれる部屋に通してもらった。
何だかイケメンの先生の顔がうんざりしているように見える。
ったく、メンドクサイ患者に当たったよとでも思っているのだろう。
すまん。

「昨日もご主人に説明をしましたが、治療を拒否される事で宜しいんですか?」
「いいえ、主人は治療がしたくないのではなくて、入院生活に耐えられないだけなんです。」
「どちらにしても、はっきりして頂きませんと、病院側としても嫌がる患者さんをベッドに縛り付けて治療する事はあり得ませんので。」
そりゃそうだ。

「先生、おれ治療しても完治は出来ないんでしょう?
治療をしたら何年生きられるんですか?」

イケメンの先生はまたホワイトボードに丁寧に書き始める。

「田中さんがちゃんと治療を受けた場合ですが、5年まで生きられる確率は25%です。
しかし、田中さんの場合、火曜日から放射線と抗がん剤の治療が上手くいって肺の腫瘍
が無くなったとしても、すでに血液の中にがん細胞が散らばっているので、転移や再発の可能性も高いです。
その場合、2年とも1年とも今の所分かりません。
賭けです。」

つれは分かったのか分からないのか混乱しているようだ。

「だからね、今回の治療をきちんと受けたら家に帰れるのよ、ね?先生?」
「はい、きちんと治療を受けたらの話ですね。
今回のスケジュールの治療をおろそかにしたり、受けなかったりしたら・・・、分かってますね?」
「放射線療法も今回の一日2回の15日で30回受ければ、今後受ける事はないので、あとは抗がん剤だけで様子見になりますよね?」

つれはやっと納得がいったのか「分かりました、おれ、今回の治療はきちんとやります。」
やれやれ。

「放射線療法と抗がん剤の治療は火曜日からで、祭日の都合で月曜日までは検査の予定は何にも有りませんので、もし良かったら外泊しますか?」
「え?いいんですか??」
つれの声が嬉しさでひっくりかえる。
うまいな!このイケメンの先生、アメの使いがうまい!!

挨拶を済ませてロビーに出ると、つれの足取りの軽い事。
「先生に聞いたら、タバコも吸って良いって言ってたよ。」
つれの口が締まらなくなった。
もう笑みがこぼれる。
単純だな。

それって、どうよ。
肺ガンの患者にタバコを吸っても良いって言う事は・・・。

ま、いいか。
日曜日の朝迎えに行こうか。