「小売業のプロによる消費低迷分析」
への鍋象さんのコメント
より。
大手流通小売の経営者の行動心理についての半径50m的ネタ。
食品小売のような生活必需品産業は、不況期にもへこみが少ない事で、他の産業と比較して相対的地位が向上しています。逆に好景気になると、食品小売業界の地位が全体的に低下します。銀行の態度も、経団連の中での地位も、マスコミへの露出度も、世間の注目度も全て相対的に低下します。これは流通系の経営者なら100%思っていることです。
次に、ある程度大きなグループは、メーカーに対してシェアによる影響力を行使して競争他社より利益を得ています。つまり売上高の多寡よりシェアの多寡の方が彼らの競争優位の継続にとって大事です。100円ショップ、99円スーパーなど新興の業態は今後もいくらでも発生しますが、これらは低付加価値型の業態なので、自分たちの経営資源をシナジー的に活用できます。そのため、自らその市場に参入する事で競争に打ち勝つ事は割りと容易です。逆に好景気になって高付加価値型の産業が流行しはじめた時には、社員を半分入れ替えるくらいの改革が必要となります。それができなければ、メーカーに対して行使している影響力の低下=収益率の低下を甘んじて受け入れなければなりません。要するに、彼らが自分の頭に入っている事には対応できるし、既に勝ち組ですので同じ土俵なら負ける事は考えられません。そのため現状維持が望ましいと考えています。彼らが恐れるのは、自分たちが理解できない成長要因です。
そして、経営者は必要に応じて社員など周囲の人に対して嘘をつかなければなりません。これは確信的に思っている事です。ビール&発泡酒の売上高推移も良く知っているでしょうし、部下の報告を聞いてメーカーとともに取り組んでいるはずです。全てをわかった上で、確信犯的に自社の都合を前面に出した嘘をついているのだと思います。
「産業界の声を聞く」というともっともらしいのですが、それには相当の競争阻害や自社都合のバイアスがかかっていると考えるべきですね。
産業界の声って、冷静に考えれば(程度の差こそあれ)ポジショントークに決まってますわね。ただ、ポジショントークするならもっとうまくやれ、ということでしょうか。声を聞くことは必要でしょうが、聞く側にも相当の修練が求められそうです。
私はたまに学生にものを教えたりすることもあるのですが、ポジショントークを疑うことの重要性は意識的に強調しています。まあ、そうすると私の話の内容も疑って聞かなければならない、ってことになるんですが。いわゆる「クレタ人のパラドックス」みたいなもんでしょうか。
ちなみに「『クレタ人のパラドックス』はパラドックスに非ず」というネタもありますが、またの機会に。