揺れる海の贈り物
宝石サンゴはいま ⑳
自然か、人の生活か
ワシントン条約の正式名称は「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」。取引を規制すべきと判断された動植物を、条約の「付属書」に掲載する。付属書には1~3の区分があり、最も厳しい1の対象は現に「絶滅の恐れがある」種。学術目的などを除き、取引は原則禁止される。
今回、宝石サンゴの掲載が提案されている付属書2は「取引を規制しないと絶滅の恐れがある」種が対象。輸出国の許可証などがあれば商取引もできる。
「付属書2は1にまでいかない様取引を管理する保全策。掲載されてもイメージダウンではなく、むしろ適切な管理を評価されるべき。条約をちゃんと理解してもらうことが大切です。
野生生物の取引を監視する世界的組織の一員、NGO「トラフィック。イーストアジアジャパン」(東京都)の高橋そよさん(33)は、業界も規制案を前向きにとらえるよう主張する。
「絶滅の恐れがあるといえる根拠、科学的データがない」との指摘に対しても、「データがないこと自体、資源管理の不適さが問われる。私たちは、地中海のサンゴは付属書掲載に該当し、ほかのサンゴは分析できないが判別が難しいためまとめて掲載することが適切だつかんがえる。持続可能な産業を目指すためにも、資源調査や管理が進むきっかけになれば」。結論は正反対になる。
ただし、「イメージダウン」の懸念はすでに現実化しつつある。宝飾ブランド「ティファニー」が、サンゴ不買運動「ノー・コーラル・セールス」を積極的に展開し、業界に衝撃を与えている。
同社が支援する国際環境団体が英語版ホームページに掲載した標語は「トゥ・プレシャス・トゥ・ウエア」、つまり「身に着けるには貴重すぎる」。一方で代替え品として、サンゴの枝をかたどった商品を紹介する。
「営業戦略」と見る向きもある。しかし、影響力の大きいブランドだけに、宝飾業界のサンゴ離れにつながりかねない動きだ。
県内のサンゴ漁の概要と「乱獲には当たらない」という関係者の意見を同社に伝えたところ、簡潔なメールが返ってきた。主な内容は「現在の技術を使ってサンゴを収穫する場合、責任ある、また持続可能な方法は全くありません」。
一方的な印象だが、全面的に打ち消すことが出来ないところに難しさがある。採取がサンゴ資源に危機的な影響を「与えていない」と出来ても、証明はできないのだから。
自然と人間の生活、どちらに軸足を置くかで結論は百八十度変わる。一致点は容易には見つからない。
