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トピックⅠ 有期労働契約
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労働契約を締結する際、
「無期契約(期間の定めのない労働契約)」
「有期契約(期間を定めて締結された労働契約)」
どちらになるのか労働条件通知書で明示しなければなりません。
有期契約の場合、一定期間雇用を継続したにもかかわらず
突然、契約期間満了をもって退職させる等の
「雇止め」のトラブルが大きな問題となっています。
今回は、有期労働契約について確認し、
トラブルを未然に防ぐためにはどうすればよいのかを説明していきます。
□ 有期労働契約とは
有期労働契約とは、会社と労働者が労働期間を定めて
契約するものを言います。
それに対し、無期労働契約は期間の定めのない契約で
通常は定年までそのまま労働することになります。
有期労働契約は
・試用期間のため有期労働契約にする
・携わるプロジェクトが数か月のため有期労働契約にする
等で締結される場合が多いと思います。
例としては、
・試用期間が2か月のため、2か月の有期労働契約を締結する、
・展示会の開催期間中の受付業務をお願いするために、
開催期間3ヶ月の有期契約にする、
という場合です。
有期労働契約は法律で、1回の契約の上限を3年と定めており
例外的に5年を上限とすることが可能とされています。
5年が可能な場合は
・専門的な知識がある者で厚生労働大臣が定める基準に該当する方
・60歳以上の方
また
・一定の事業の完了に必要な期間を定める方
については、
「その期間」とされています。
□ 有期労働契約から無期労働契約への転換
有期労働契約は、1回の契約期間の上限は決まっているものの
その契約を反復継続されていることで
長期に渡り同じ事業所で勤務していた労働者が
突然雇止めになる事件等が起こったため、
働く労働者が安心して働きつづけられるように
平成25年に労働契約法が改正されました。
これは、有期労働契約が更新され
通算で5年を超えるときは、
労働者の申し込みにより期間の定めのない契約
(無期労働契約)に転換できるものです。
平成25年4月以降に開始した有期労働契約が対象となるため
5年経過の平成30年以降に無期転換希望者が出ています。
<ポイント>
・労働者からの申出が必要(自動的に無期転換されるのではない)
・有期から無期になる部分以外は労働条件の変更なし
あくまで、労働者からの申出があった方のみ
無期転換することとなります。
労働者が希望して有期労働契約にしている場合もあり、
全員が無期契約を希望しているわけではないためです。
また、期間の定めが有期から無期になることのみが変更となり、
例えば給与額や労働時間が変更になることは
法律上定めがありません。
~厚生労働省 有期契約労働者の無期転換ポータルサイト~
https://muki.mhlw.go.jp/
□ 有期労働契約の労働条件通知書
労働条件は一部、書面で明示が必要ですが
有期労働契約には
無期労働契約の労働条件通知書に項目が2つ追加になります。
<有期労働契約の条件通知書に独自に必要な項目>
・契約更新の有無
・契約更新の判断基準
1つ目の「契約更新の有無」とは
契約が終了した際、その後も
「契約更新する場合があり得る」または「契約更新しない」、
のいづれかの明示です。
プロジェクトの完了が1年で決まっている場合などは
「契約更新しない」になるでしょう。
試用期間等で、期間は定めているが更新する可能性がある場合は
「契約更新する場合があり得る」となります。
2つ目の「契約更新の判断基準」は
契約期間満了時の業務量、勤務成績や勤務態度、
経営状態などがあげられると思いますので
その旨を記載する必要があります。
□ 有期労働契約の雇止め
雇止めとは、有期労働契約者について契約更新をせず
契約期間満了を理由として契約を終了させることです。
雇止めは原則、違法ではありません。
ただし雇止めの理由が不当な場合には、無効になる場合もあります。
(労働契約法第19条)
・契約自体が実質的に無期雇用と変わりがない場合
(契約が反復更新され雇止めが解雇と同視できる場合)
・契約の更新が期待できることに合理的な理由がある場合
このような場合は、雇止めすることに客観的に合理的な理由がなく
社会通念上相当であると認められないこと、とされています。
また一定期間、一定回数を更新した有期労働契約の
雇止めについては、30日前までに「雇止めの予告」が必要です。
<有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準>
・1年を超えて継続雇用されている有期労働契約者
または
・3回以上更新されている有期労働契約者
(平成15.10.22 厚労省告示第357号)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/07/s0712-4i.html
雇止め自体は違法ではありませんが、
契約期間が過ぎても次の更新をせず、
契約期間が過ぎた後に遅れて雇止めを通知したり、
雇止めの日を30日よりも短い期間に通知するなどといった
トラブルが多発しています。
きちんとルールに従って有期労働契約を締結することが求められます。
□ 雇止めの裁判事例
有期労働契約で一番多いトラブルは「雇止め」といっても
過言ではないでしょう。
その事例をいくつか挙げておきます。
〇 雇止め有効の事例1(札幌交通事件:札幌地裁H29.3.28)
【事件のあらまし】
タクシー乗務員が1回6か月、計2回更新の
有期労働契約を締結していたが勤務方法や成績等が悪く
改善が認められなかったため雇止めをした事案
【判決】
勤務成績が他の者と比べて明らかに悪かったこと、
改善の可能性が低かったこと、雇用期間を6か月とする
有期労働契約が2回にとどまっていたこと等から
客観的合理性も社会通念上相当であると認められるとし
雇止めは有効とされた。
〇 雇止め有効の事例2(三洋電機事件:広島高裁H28.4.13)
【事件のあらまし】
約30回契約更新したが、事業譲渡等により
雇止めをした事案
【判決】
約30年間にわたり契約が更新されてきたが、
その大半において会社側は契約書を作成しなおしており
更新手続きは厳格であったこと、
契約書の文言上でも「当然には更新する」ことが
予定されているとはいえないこと、
また会社の事業は縮小の一途をたどっており
契約終了の4か月以上前に従業員説明会を行っていることから
契約更新に寄せられる期待の合理性は減弱していたと考えられ
雇止めは有効とされた。
● 雇止め無効の事例1(NTTソルコ事件:横浜地裁H27.10.15)
【事件のあらまし】
15年7か月にわたり有期契約を17回更新してきたにもかかわらず
業務遂行能力の不足ないし会社の業務上の理由により
雇止めをした事案
【判決】
有期労働契約者だったが、
正社員とほぼ変わらない条件で勤務していたこと、
有期労働契約の更新手続きが
契約期間終了前後にロッカーに配布される
契約更新書類に署名・押印し
これを提出するという形式的なものであり
形骸化していたといえるため、雇止めは無効とされた。
● 雇止め無効の事例2(東京横浜独逸学園事件:横浜地裁H29.11.28)
【事件のあらまし】
19年にわたり有期契約を12回更新してきたにもかかわらず
業務遂行能力の不足のため雇止めをした事案
【判決】
有期労働契約の更新手続きは、更新の希望の有無や
担当時間数等を提出していたことから
形骸化していたとはいえない。しかし
12回という多数回の更新を行ってきたことや、
当該労働者が基幹的な業務についており、
長期における契約更新も想定されていたと考えられ、
雇止めは無効とされた。
上記の裁判事例から、雇止めを有効にするためには
・正社員と有期労働契約者の業務をきちんと区別しておく
・契約更新の際には「書類を作成しなおす」「面談をする」
等が必要だと考えられます。