神奈川県逗子市でのコンサートを終え、今、宮崎への移動中の機内でブログを書いておりますが、隣にはNEWケースに入ったチェロが例によって上下逆さまになって座っております。このように置くと前の席の方が思いっきり背もたれを倒しても大丈夫なのですよ。


左のが30年以上使った白いチェロケース。全ての箇所を修理しましたが、もはや限界で、右の黒いケースと交代です。今後は部屋の片隅から僕の練習を見守ってくれることでしょう。

ところで先程の逗子では、御歳82歳になられるN響ヴァイオリンのレジェンド、前澤均さんと弦楽四重奏を弾いてきました。
家が近いので、僕が若造の頃は電車の中でよくお会いしたものでした。そして「子供が産まれました」と報告すれば、「藤村くん、子供も大学生くらいになるとお金かかるよお」とか「君もそのうちなるだろうけど、ぼくは最近目が悪くなってねえ」、直近でお会いした時は「藤村くん、定年してからが長いよお、まずは健康でいる事だな!」等々、未熟者の若造にはピンと来ないお話しを、よくして下さいました。
そして本日、子供が大学生になればお金がかかる事も、目が悪くなる事も、身に染みて分かるようになった僕に、またもや先人の道はこうだ!ということを身をもって教えて下さったのでした。
82歳でヴァイオリンをステージで弾けるのって驚異的で、とてつもない自己鍛錬の賜物だと思います。ですが、そこはやはり80代。手が勝手に震えたりとか、僕には、うかがい知れない様々な現象がきっとおありでしょう。そして、それらと人知れず戦いつつも、ひたすらご自身が出したい音、弾きたい音楽に、がむしゃらにしがみつかれている。それは限界に近い努力と純粋なアマチュア精神の高度な次元における融合です。
こんなお手本、他にあるでしょうか!


そして、もう1人、限界まで夢を追い続けたチェリスト、桑田歩が逝きました。
まだ20世紀のチェロの巨匠達が活躍していた学生時代より、驚きや感動を共にし、N響での数々の名指揮者とのコンサートやチェロ四重奏で切磋琢磨してきた、何も語らずとも意思疎通の出来る貴重な間柄でした。
最後の数ヶ月の彼の頑張りを見て、桑田、凄い!やり切ったね!ゆっくりしてね、と考えるべきなのでしょうが、僕が感ずるに、彼は、ちっとも立ち止まっていないような気がするのです。天国で巨匠達と交流しているかもしれないし。
ですから、これからも彼とは切磋琢磨していくつもりですよ。
桑田なら、こんな時どうするかな?と時々考えながらね。