コロナによる外国との出入りが難しい中を、いらっしゃいました!
マエストロ  ヘルボルト  ブロムシュテット。

僕がN響に入団する前から、N響にいらしていた最後のおひとりで、御歳94歳。
ありえないお元気さです。

ところで、かつて数年おきに来日されていた数々の大物指揮者は、いついらしても毎回全く同じ感じではなく、その時その時のマエストロなりのマイブームがあったように、僕は感じておりました。

例えば、碁盤の目を連想させるような規律と高貴な歌が素晴らしかったサヴァリッシュ氏が、ある年は、タガを外すような瞬間を、または品格のある色気を匂わすような瞬間を、あえてお作りになっている気がしましたし、人間味と滋味に溢れた音楽がとても魅力的だったハインツ ワルベルグ氏は、『歳なんか取っていられるか!』が御自身のスローガンであるかの如く、テンポ運びがとてもエネルギッシュな年があったりしました。

そして今回のブロムシュテット氏ですが、僕の記憶では、今まで初回のリハーサルで、ひとつの楽章を最後まで止めずに通した事はなかったのではないかと思います。ある程度の所で、我々に伝えなければならない案件が膨大な数になってしまわれて、切りの良い箇所で一度止まっていたのではないでしょうか。
ところが今回は、なんととりあえず最後まで通されるではないですか!今までなら、お気付きになった箇所は即、止めて修正されていたのに「ひとまず流す」、そして、おもむろに全体を、我々には及びもつかない高所から眺められ、今後のリハーサルから本番への道筋を計画されているように見受けられました。
94歳にして、まだ進化中!
本番が、どのようになるのか、たいへん楽しみです。


もうひとつの、いらっしゃった、ではなく「入荷」したのが、これです!
自分のウェットスーツ。
ボードの保管場所の先生から、入荷したとのお電話を頂いたので、自転車ですっ飛んで行きました。
到着すると先生は既に、スクールで海に出られた後だったので、自分で試行錯誤して着てみたのですが、なんだかよく分からない首周り内部のヒラヒラした布は、そのまま押し込みマジックテープでぎゅっ。


そして格好だけピッカピカの、にわかサーファーは、海へと向かったのでした。


浜に到着すると、誰もやっていないので少々恥ずかしいのですが、手をぐるぐる回したりアキレス腱伸ばしたりして、教わった通りの準備体操をします。

体操しながら、ふと横の方を見ると、ウィンドサーフィンの組み立てをしている方がいます。
僕は眼鏡を外しているので、よくは見えませんでしたが、背格好からして、あっ先生だ!と思いました。それでウェットスーツをちゃんと着られた事、サイズもちょうど良かった事をお伝えしようと思って、少し近付くと自分のウェットスーツをつまんで、「これ!」とお見せしたのです。
先生も、ニコニコされて「これからは、良い季節ですね!」とおっしゃいました。
なんだか会話の噛み合わせと、声が違うような気がしましたが、まあ、あんなにニコニコされているのだから、伝わったのだろうと、僕はいよいよマイ・ウェットスーツでの初サップを試すべく海へと出ます!

せっかくの晴れの舞台は、いつもより波風があって最悪です。小刻みに揺れるボードの上に立つのが難しく、脚がガクガク。これでは、まるで産まれたての子鹿です。
すると、あちらから「どうですかあ?ウェットスーツ!」と、聞き慣れた声が近付いて来るではないですか。
ああ、この方は本物の先生だ。会話も反応も噛み合う!

では、先ほどの方は?

砂浜で1人、腕をぐるぐる回して体操する僕を、彼は作業しながら目の片隅で見ていたのでしょう。
間もなく嬉しさ余った様子の僕が、初めてのウェットスーツを見せようと、面識のない彼に近寄って行った時、本当は少しギョッとされたのかもしれません。

それでも彼は優しく接してくれました。
きっと僕の事を、子供の心を持ったおじさん、とでも思ったでしょうか?

本当のところは分かりませんが、彼の優しさに感謝です。
きっと海には、人々の心を広くする力があるのかもしれませんね。


追伸、ブログをもたもた書いているうちに、初日のブロムシュテットの本番が終わりました。94歳にして表面的腕力が少し弱まったような気もしましたが、ところがどっこい、内面的パワーは、更に凄かった!!