雲ひとつない秋晴れのある日、

とあるホームコンサートでの、ヴァイオリン戸田弥生さん、ピアノ梯剛之さんとのトリオが終わってしまいました。

和風の年季の入ったお部屋で演奏致しました。お客様との距離、近いです。

僕は、このお宅を拝見して、はたと気付いたのです。チェロのエンドピンから床を守るストッパーを忘れてきた!この事を恐る恐るご主人に申し上げると、開演前のお忙しい時間帯だというのに、あっという間に、こんな素敵な物を作って下さいました。
黒いベニヤ板だけだと椅子の幅より狭いので、小さな切れっぱしを付け足したのですが、ピアノの型っぽくカットされている!うーむ、ご主人のおしゃれ心に感服です。

そして我々、演奏者の控え室は玄関脇の畳の小部屋です。
部屋の中央にテーブルがあり、奥様のお手作りなのでしょうか、美味しそうなおにぎりが盛ってあります。その向こうの、屏風で何となく仕切られた庭側の一角に、戸田さんは陣取られました。戸田さん、ゲネプロが終わっても休憩するどころか、ゲネプロから本番まで直結で集中モード。屏風の向こう側からは既に集中オーラが、もうもうと立ち昇っているではありませんか。
一方、ピアニストは控え室に戻ってしまうと練習のしようがないので、悌さんは、ただただ静かに座られています。
僕はというと、悌さんが至近距離で真ん前にいらっしゃるので弾きにくいと言うか、目の不自由な悌さん、僕が目の前で弾いたら、それを聞くしか無い立場になってしまうので申し訳ないなあと考えていたら、なにやら玄関周りが騒々しい。早くもお客様が到着されているようで、壁一枚だけの向こう側から賑やかな会話が手に取るように聞こえてきます。


パワーと熱量と集中力が炸裂した本番が終わり、再び控え室に戻って参りました。

先程、お話しした控え室の環境ですが、ここまで玄関の話し声が丸聞こえだと、我々、不本意にも、潜んでいるような状態になってしまっていて少々ドキドキします。
なぜかって、「今日の演奏、退屈だったわね」とか「そうねえ!わたし、寝ちゃったわよ」とか聞こえてきて、控え室一堂、気まずい雰囲気になったらどうしよう、となるからです。

やがて薄壁1枚向こう側で演奏家が息を殺して潜んでいるとは夢にもご存知ないお客様が全員帰られました。
どうやら心配は危惧に終わったようです。
ああ、よかったあ。

お茶を頂きながらご夫妻とお話しをし、お礼を申し上げて外に出ると、夕方の明るい陽射しが真横から差していて、秋の景色が美しい。
戸田さんも悌さんも、是非、このメンバーで再演したいですね!と何度もおっしゃって下さいましたので、ほっとしましたよ。

そうだ、こんな日は、どこかコンビニでポテトチップスでも買って、車の中で食べながら帰ろう!