今週のN響の指揮者は、ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン。初めての指揮者です。
最初のリハーサル前、なんだか怖いらしいよ、とN響メンバーの間で噂が飛び交います。
さてドキドキのリハーサル、調弦が終わり、未知の指揮者が部屋に入ってまいりました。
おお、近頃では珍しいほどのキャラの強い風貌。これは怖いかも!
まずは、いきなり「バルトーク:オーケストラのためのコンチェルト」を全楽章、通します。
有無を言わせず、グイグイ早めにタクトを振り続けますが、これはオーケストラの前に人参をぶら下げて前へ前へと急がせる、よくある、あの戦法なのか?
それとも本当に、この早めのテンポがお望みなのか?
こういう時、オーケストラは、色々と試行錯誤しながら指揮者を観察し、最終判断を探すのです。
最後まで弾き終えると、
「Very good!!But・・・ too late」
やはり、この方、グイグイ系だったんだ。
そして、お茶目。
ご自分がグイグイと早めに早めに振って、オーケストラが半信半疑でついて行ってみたり、ちょっと速過ぎだろとオーケストラがついて行かなかったりの状況を「But・・・too late」と面白がって表現されている訳です。
どこも怖くないじゃないですか!
ただ、あえて言うなら、足りないと思われる事を忖度なくズバズバとおっしゃるので、怖い人と勘違いされただけなのではないでしょうか。そしてコンセルトヘボウ管弦楽団のコンサート・マスターをされていただけあって、弦に対するアドバイスが本物。あっという間に、特に弦セクションの信頼を勝ち取り、なんだかヴァイオリン・セクションが普段よりよく鳴って伸び伸びしていますよ。
これは本番が楽しみです。
ところで前号で少しほのめかしました、本当にお伝えしたかった事、というのをお話ししましょう。
皆様、僕が作りました「自動譜めくりマシーン」をご存知でしょうか?
輪ゴムの戻る力を利用して楽譜をめくる夢溢れる発明品です。既に何度か実際のコンサートでも使用し、今のところ5勝1敗。
なんと、この「自動譜めくりマシーン」、このほど桁違いの大舞台に登場してしまったのです!
どんな大舞台かって?
ピアニスト清塚信也さん司会「NHK クラシックTV」です!司会の清塚信也さん、鈴木愛理さん、ゲストの檀ふみさん、柏木由紀さん、そしてN響の面々とNHKホールを埋め尽くした大観衆が固唾を飲む中、僕の「自動譜めくりマシーン」は登場したのです!!
この日のテーマは、今年創立100周年を迎えるN響の歴史を辿るというものだったのですが、間に『N響の団員も意外と親しみやすいのですよ』的なコーナーがあり、そこで僕はN響の発明王という設定で、親しみやす過ぎる事をしてきた訳です。
何か分かりやすい曲を弾きながら自動譜めくりを披露して下さい、との事でしたので、バッハの有名な一節を考えていたのですが、ゲネプロの時にオーケストラの前に出て行って弾いてみたら、さすがはNHKホール、最初の一音を出した途端に想定外の圧が僕に襲いかかり、まあなんと言うのでしょう?まるで声が裏返っちゃったみたいな状態になってしまいました。
この時は、オーケストラのメンバーの殆どは既にステージ上になく、団員さん紹介コーナーの参加者だけだったのに、このプレッシャー。こりゃ本番は気を確かに持って望まないと大変です。
たとえ一節なのにバッハをN響の真ん前で弾くのって緊張するものなのですね。しかも天下のNHKのテレビカメラが回る中、上手く作動するか何の確証もない拙い手作り工作を60過ぎの男が携えてねえ。
こりゃスリル満点の、最高の大人の遊びですよ。
さて気になる本番は、バッハも間違えずに弾けたし、おっとお!肝心な譜めくりをしなきゃと一瞬忘れそうになりましたが、無事、譜めくりも成功し、時間が押しているのでトークは少なめにと言われていたので話さなかった事も、司会の鈴木愛理さんがご親切に補足して下さったので、まあ満足のいく出来栄えだったと思います。
小学生の頃から家に転がっている廃材を組み合わせて「こんなのあったらいいな」を工作するのが好きだったけど、まさか、こんな大舞台でチェロを弾きながら披露する事になるとはねえ。
『全国放送』は9月3日夜だそうです。