今、僕はN響のヨーロッパ・ツアーで各国を転々としています。
18泊19日という比較的長いツアー、最初の4泊こそは今回の指揮者パーヴォ・ヤルヴィの故郷エストニアでリハーサルも含め、ゆっくり出来ましたが、5日目のロンドン公演以降は、移動しては数時間後に演奏会という、目まぐるしい日程で暮らしております。
ロンドンでは、たまたまテレビをつけたら「ボヘミアン・ラプソディ」をやっていました。ご当地でQUEEN!なんという巡り合わせでしょう!
ドイツ・ドルトムント
ヨーロッパ・サッカーの無形文化財と言っても過言ではない黄色と黒のチームカラーを身に付けた8万人の熱狂的サポーター。サッカー好きなら、いつかはドルトムントで、あの雰囲気の中に身を置きたいと常々思っている事でしょう。
実は僕もそんな夢を持っていた1人なのですが・・・
それが、なんと言うことでしょう!!!こんなにタイトなN響のスケジュールが、なぜか丁度そこだけぽっかりと空いているではないですか!!
ヨーロッパを知るにはオペラハウスだけでは片手落ち、是非ともサッカー場に行くべしと僕はいつも思っているので、ここは是非とも行きたいところですが、『聖地』のチケットはとても入手困難なのです。
ネットで調べると、こんな一文すら見られます。
『現在ではクラブメンバーさえチケット入手が大変困難になりましたドルトムント主催試合ですが』
それでもダメ元で、行かれない人が放出したチケットを争奪してくれるネットサイトに申し込んだら、なんとチケット、取れちゃいました!!!
発煙筒の煙の中を突き進むようなアグレッシブな雰囲気を覚悟し、財布も懐の奥深く仕舞い込んで、いざスタジアムに乗り込むと、なんと現場は意外や意外、「うちは毎週末、家族でサッカー観戦なんですよ」的な家族的雰囲気満点。現に僕達の前には、お爺さん、息子、孫の男3代で仲良く座っています。その後ろ姿を見ていると、「今日はうちの男達、サッカー見に行ったのよ、男って本当にサッカーが好きね」とおっしゃっているであろう奥様の姿が目に浮かびそうです。
この動画は、まだサイドのお客さんが時差入場なのか入っていない状態ですが(この後8万人で満席に!)、最後の方にお爺さん同士が出会う場面が少し映っています。今日は家を出てきて、お爺さんも若い頃に戻っているのでしょうか?
もちろんゴール裏の立見席は、ドルトムント名物『黄色い壁』。
観客が歌っています。
ドイツ人がビヤホールとかで知らない人達とも肩組んで合唱する光景をテレビか何かで見た事がありますが、そんな雰囲気が会場中に溢れていて、とても幸せな気分になりました。
ところで色々な国に行かれるのは興味深いのですが、コンサートの時には、本気モードにならなければならないので、結局いつもどこか気が張っています。そんな少しピリッとした旅に更に暗い影を落としているのは、やはり日本でのコロナウイルスの広がりでしょう。行く先々で東洋人という事で嫌がられるのではないかと、いつもビクビクしてしまいます。ほぼ何ともありませんが、エレベーターで僕と乗り合わせるのを恐れた老夫婦が扉の閉まる寸前に飛び出して行ったりと、軽く嫌な思いもあるにはありました。でも1、2回かな。
それより日本の状況が心配です。
実は我々は、日本を発った2月17日の時の姿のまま、宇宙・・じゃなかったヨーロッパをさ迷っている状態なのです。姿とは服装でなく精神状態とか心です。完全に落ちこぼれています。
突然、現実から切り離されて、その時の姿を保っているなんて、まるで極北の地中に何万年前の姿のまま氷漬けにされている奇跡のマンモスか?
あるいは多くの方に伝わらないのを覚悟で申し上げるなら、ウルトラセブンに出てくるジャミラ・・(回収不可能になった宇宙船に取り残され、環境に適応するため姿を変異させてまで生き長らえた船員が、彼を救出する事を打ち切った人々への恨みを晴らすため再び地球へ、というお話し)まあ、これは姿が変わっちゃったのだから少し違うか?
大袈裟な例えになってしまい、かえって分かりにくくなってしまいましたが、まだ横浜になんか豪華客船が停泊しているんだって等と他人事のように言っていた2月17日、あの頃のまま時間が止まっている我々は、まもなく、すっかり状況の変わった日本に降り立ちます。







