怒涛の本番ラッシュも、あと大晦日のベートーヴェン交響曲全曲コンサートを残すのみ。

どの本番も、それぞれに思い出がありますが、直近のは、まだ鮮明に覚えております。


「ブランデンブルク協奏曲、全曲演奏会」

バッハの通奏低音を受け持つチェロは、全体のクオリティを左右しかねない大切な役目なので、毎年、やり甲斐を持って臨んでいます。

特に僕のチェロ一丁だけで伴奏するような楽章は、ピアノでスコアをゆっくりゆっくり弾いて、和音の移り変わりの美しさを心に染み込ませます。そして、そのときめきの火が消えないように、家から会場までそっと運んで、皆様にお届けするのです。

また元ベルリン・フィル首席、ヴィオラのシュトレーレさんとの共演も、このコンサートの楽しみのひとつです。シュトレーレさん、とにかく演奏が自由奔放!よほど、こちらの音楽的体幹が強くないと振り落とされてしまいます。でもシュトレーレさん、僕に会うと、いつも「My favorite cellist!」と言って下さるので、それが嬉しくて、いつも一生懸命、ついて行っています。

そんなシュトレーレさん、ゲネプロ終わっても、楽屋に用意されたお弁当も召し上がらず、本番まで、ずっと練習されています。お洒落な外見と華やかな雰囲気とのギャップ、尊敬してしまいます。



加古隆さん作曲「映像の世紀」のコンサート。
戦争などの映像を上映しながら、加古隆さんのピアノとN響の演奏が彩りを与えるという企画でした。その反対とも言えるかな?
まあ、それはそうとして、リハーサルの時は我々オーケストラのメンバーにも映像が見えるようにとモニターを何台か置いて下さったので、指揮者の下野さんが「誰も僕を見てくれない!」と冗談を言われるほど、悲しい映像に見入って胸を痛めてしまいました。あの加古隆さんの有名なメロディーは悲しい場面にも明るい場面にも合って素晴らしいですね。まさに天才の作品!

そして昨日まではレナード・スラットキン指揮の「N響第9」でした。
81歳でも相変わらずのバトンテクニック、素晴らしかったです。細かいところまでご自身の解釈が明瞭で、それを指揮棒で的確に表現されるので必然的にハイクオリティな演奏になりました。スラットキンさんというと今まで、その完璧なバトンテクニック故に能率が良くて、リハーサルがだいぶ早く終わったものでしたが、今回は念には念を入れていましたので、全然早く終わりませんでした。例えば合唱もソリスト歌手も入らないオーケストラだけのリハーサル日に、4楽章を3回も通したのですよ!第9を弾かれた事のある方はお分かりになると思いますが、これはかなりの重労働。
しかし、その特訓の甲斐あってか、5回あった第9のコンサート、毎回、かなりの高水準をキープ出来たと思います。
また、このコンサートには、元々決まっていた1人のチェロのエキストラの他に、リハーサル直前にインフルエンザになったチェロ・メンバーの代役として、計2人の大学生がチェロ・セクションにエキストラとして参加しておりました。僕は、この2人を両脇に置いて演奏する位置だったので、2人の事が手に取るように分かりましたが、最初から実によく勉強してきてあった上に、毎日、昨日の反省を糧に進化していたので、そんな若者と今年のN響を締めくくれたのが、とても気持ち良かったです。僕がN響を完全にやめる2年半後に、こんな若者の中から1人がN響に入るのですねえ。

さてN響の第9が終わっての2日間の完全休養日の後は、今年最後の大物コンサート、ベートーヴェン交響曲全曲です。第9だけで疲れたあ、なんて言っていられません。指揮者の小林研一郎さんも満身創痍、全力で振られるでしょう。悔いのない1年の締めくくりにしたいものです!