<概略>

  • 日本では商談の前に雑談を交わすことが一般的で、緊張を和らげ関係を深める役割を果たします。しかし、筆者はこれを単なる潤滑油として扱うのはもったいないと指摘します。一方、世界の一流ビジネスマンは雑談を「対話(ダイアログ)」として活用し、明確な意図を持って創造的なコミュニケーションを行い、成果を出すことを重視しています。目的を持って雑談に取り組めば、苦手意識を克服し仕事の質を向上させる武器に変えられると述べています。

<備忘録>

  • 多種多様な価値観を持つ人たちと良好な人間関係を構築し、お互いに信頼感を深めていくためには、雑談を通して自己開示(自分の「思い」や「考え方」など)していくことが大事
    └自己開示のためには、「自己認識」=「きちんと自分自身と向き合う」ことが必要。何を大切にしているのか?、何が正しいと思っているのか?、何を求めているのか?など
  • 雑談はあらゆる角度から検討して、事前に可能な限り「戦略的」に構成(ストーリー)を考えることが重要
  • 雑談を通して、「信頼」と「信用」、「尊敬」のある関係を築いて、心理学でいう「ラポール」を作ることを目指す
    └ラポール:お互いの心が通じ合い、穏やかな気持ちで、リラックスして相手の言葉を受け入れられる関係性
  • 雑談では、相手の話を良し悪しや好き嫌いで判断せず、「なぜそのように考えているのか?」を肯定的に知ろうとする(無条件の肯定的関心)。加えて、自分と異なる考え方や価値観を持つ相手に対して、「相手が何を考えているのか?」とか、「どう感じているのか?」を想像する能力(empathy)も大切
  • 雑談を学びの場と考え、お互いの人生を豊かにするための知識や情報を「やりとり」する時間と捉える
  • それぞれの国によって、文化や価値観が大きく異なるので、その違いをどう乗り越えて信頼関係を築き、ビジネスで成果を出していくか、に意識を集中させる
  • 雑談で何を話すかを考える前に、「何のために相手に会うのか?」という根本的なテーマ・目的を改めて確認する必要がある。目的としては、①「つながる」、②「調べる」、③「伝える」④「共有する」がある
  • 相手の表情や佇まい、服装、仕草などを冷静に観察して、その場で確認の言葉を投げかける。計算や打算ではなく、「C to C」(個人と個人)として誠実に向き合っていけば、やがて信頼関係が結ばれて、ラポールを作ることができる
  • 社内の雑談では、上司や周囲の人たちの「バイアス」を低減していくことも、大事な目的となる
  • あらかじめ時間と場所を設定して、マネージャーとメンバーが「かしこまって」向き合う1 on 1では、ラポールを作ることが難しい。ランチや移動中の車内など、ちょっとした空き時間を上手くりようする
  • 「Manage your manager」という考え方も意識する。異動してきたばかりの不慣れな管理職などには、部下の方から積極的に働きかけて、管理職としての仕事をやらせることも
  • 上司や管理職というのは、常にアジェンダの進捗状況が気になり、慢性的な不安を抱えている。上司が置かれている状況を理解しながら、「何を求めているのか?」、「どんなことに困っているのか?」という仮説を立てて、それを検証するような雑談を日ごろから積み重ねていくことが大事
  • 雑談の中でプライバシーに土足で踏み込まないというのは、意外に難しい。相手の話に出てきた「キーワード」を拾って質問を重ねていけば、プライバシーに過干渉することなく、自然な雑談を通じて相手を知ることができる
  • 「ファクト」ベースの質問は、相手の気持ちにネガティブに刺さる可能性があり意外に危険(出身大学など)
  • 単刀直入なファクトベースの質問ではなく、「価値観」ベース、「信念」ベース、「期待」ベースの質問を心がける気遣いが大切
  • ビジネスの場における雑談では、次の4つのポイントを常に意識することが大切
    ①相手を驚かせないレベルの「自己開示」をして、自分という人間を知ってもらう
    ②好奇心を持って、相手の「人間性」や「人となり」を知ろうとする
    ③「信頼関係」の構築が目的であることを忘れない
    ④相手と「ラポール」を作れているか、客観的な目で観察しながら話す

<考察>

  • 今の部署・業務柄、人に会って情報収集や意見交換、相手へのインプットを行うことが多い。その際、何よりも「相手との信頼関係を築く」ことを大切にしている。
  • ただ、雑談を通じてこうした関係性(ラポール)を作っていくことを考えたことがなく、とてもよい気づきとなった。
  • 元々雑談には苦手意識があり、その場の流れで当たり障りのないことを切り出し、会話が途切れたり、意味のない会話で終わってしまうことが多かった。
  • 相手と会う目的やテーマをしっかりと確認し、前もって戦略的に雑談の構成(ストーリー)を考える必要があると感じた。
  • 雑談では、C to C(個人と個人)として誠実に向き合い、自分本位にならないよう気をつけて、客観的に相手を観察し、相手を肯定的に知ろうとすること(興味を持つ)、相手の意図を汲み取ろうとすること(empathy)を意識したい。
  • テクニック的には、自己開示をしたり、相手の関心を寄せている話題を準備したり、相手からのキーワードを拾いつつファクトベースではなく価値観ベースで質問すること。
  • 社内の雑談においても、上司や同僚、後輩とのちょっとした時間(移動中やランチなど)の活用や相手の困りごと・不安ごとを想像し、プライベートには踏み込み過ぎないように気を配りながら、ラポールを作り上げていきたい。

 

=========[引用開始](p20-23)=========

自己開示をしながら中身のある雑談を始めます。

(中略)

自己開示とは、プライベートな情報を含めて、自分の「思い」や「考え方」などを相手に素直に伝えることです。

(中略)

ヨーロッパの国々では、決まったフレーズはなく、「その人」に特化した雑談になることがほとんどです。

(中略)

多種多様な価値観を持つ人たちと良好な人間関係を構築し、お互いに信頼感を深めていくためには、雑談を通して自己開示していくことが大事だと思います。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p25)=========

双方が自己開示をすることが大切ですが、自己開示の前段階として「自己認識」をする必要があります。

「きちんと自分自身と向き合う」と言い換えてもいいかもしれません。

大切なのは、次の3つについて、改めて見つめ直してみることです。

①「価値観」 何を大切にしているのか?

②「信念」 何が正しいと思っているのか?

③「希望・期待」 何を求めているのか?

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p30)=========

思いつきの世間話でお茶を濁すのではなく、あらゆる角度から検討して、可能な限り「戦略的」に雑談を構成しているのです。

彼らが雑談を通して「手に入れたい」と考えているのは、次の3つのことです。

①お互いに「信頼」できる関係を築く

②お互いが「信用」できることを確認する

③お互いを「尊敬」できる関係を作る

雑談を通して、「信頼」と「信用」、「尊敬」のある関係を築いて、心理学でいう「ラポール」を作ることを目指しています。  ラポールとは、お互いの心が通じ合い、穏やかな気持ちで、リラックスして相手の言葉を受け入れられる関係性を指します。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p34-35)=========

無条件の肯定的関心とは、相手の話を良し悪しや好き嫌いで判断せず、「なぜそのように考えているのか?」を肯定的に知ろうとすることです。

(中略)

ここで大切なのは、無条件の肯定的関心だけでなく、「empathy」(エンパシー)を持って会話することです。

(中略)

自分と異なる考え方や価値観を持つ相手に対して、「相手が何を考えているのか?」とか、「どう感じているのか?」を想像する能力を指します。

ただ相手の考えや気持ちを理解したり、想像するだけで終わるのではなく、「相手の感情に合わせる」ことや、「相手の隠れた意図を汲み取る」ことまでを含みます。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p40-41)=========

事前に「武器」を準備して、雑談のストーリーを描いているのです。

(中略)

相手が最も関心を寄せている話題について、有益な情報を提供することで、「信頼」「信用」「尊敬」を得るための第一歩を踏み出しているのです。

僕が大切にしている英語の名言に「I’d like to finish my work before I start it」というものがあります。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p43)=========

日本のビジネスマンでも、仕事ができる人は事前に情報を集めて、鋭い質問を投げかけてきます。

(中略)

人によっては、面談の前に電話やメールで連絡をしてくることもあります。

(中略)

事前に疑問点を明らかにして、適切な情報を整えようとしているのです。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p45)=========

世界のビジネスマンは、雑談を学びの場と考え、お互いの人生を豊かにするための知識や情報を「やりとり」する時間と捉えています

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p46)=========

世界で活躍するビジネスマンが雑談で重要視しているのは、「グローバル」な視点と国の枠組みを超えた「トランスナショナル」な考え方です。

それぞれの国によって、文化や価値観が大きく異なりますから、その違いをどう乗り越えて信頼関係を築き、ビジネスで成果を出していくか・・・・・・に意識を集中させているのです。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p49)=========

雑談で何を話すかを考える前に、「何のために相手に会うのか?」という根本的なテーマを改めて確認する必要があります。

(中略)

テーマの整理ができれば、俯瞰して考えてみたり、長期的な取り組み方を考えるなど、相手との接し方を工夫することができます。

そこがわかれば、雑談の準備も方向性が見えてきます。

その日の「本題」ばかりが気になって、こうした視点を見落としているケースが意外と多いように思います。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p53-54)=========

世界のビジネスマンは、相手の表情や佇まい、服装、仕草などを冷静に観察して、その場で確認の言葉を投げかけます。

準備していた質問や雑談を筋書き通りに話すのではなく、相手の状況に応じて、臨機応変に対応を変えているのです。

(中略)

計算や打算ではなく、「C to C」(個人と個人)として誠実に向き合っていけば、やがて信頼関係が結ばれて、ラポールを作ることができると考えているのです。

信頼関係は一度や二度くらい会っただけで築けるものではありませんから、「この先」を見据えて、長期的な視野をもつことも大切です。

そのためには、目の前の相手の状態をきちんと観察し続けて、つねに実直な行動を心がける必要があるのです。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p70)=========

英語では、「create collisions」といいますが、「衝突を作る」とか「衝突の機会を作る」ようなオフィスの設計になっています。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p74)=========

マネージャーとメンバーは、日本企業のような上司と部下という「上下関係」にあるのではなく、プロスポーツチームのコーチと選手のような関係です。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p87-90)=========

社内の雑談では、上司や周囲の人たちの「バイアス」を低減していくことも、大事な目的となります。

(中略)

最近では、女性に対する「ベネヴォレント・セクシズム」(慈悲的性差別)も問題化しています。

(中略)

非常に「口当たり」のいい差別といえますが、結果的には女性が新しいチャレンジの機会を失ったり、個人の能力や意思の軽視、男女の不平等を助長することもあります。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p92)=========

海外企業の仕事ができる上司は部下の「思い」を大切にしています。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p96)=========

日本企業の「1 on 1」ミーティングは、あらかじめ時間と場所を設定して、マネージャーとメンバーが「かしこまって」向き合うケースがほとんどです。

お互いが緊張した状態で手探りの会話をしていますから、このままの状態で続けていても、いつまで経っても成果は上がらないように思います。

(中略)

一緒にランチに行ったり、移動中の車内であったり、ちょっとした空き時間があれば、それを利用して雑談をします。

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=========[引用開始](p113-114)=========

海外の一流企業には、「Manage your manager」という考え方があります。

直訳すれば、「あなたのマネージャーをマネジメントしなさい」となります。

異動してきたばかりの不慣れな管理職や、仕事のできない上司を相手にする時には、部下の方から積極的に働きかけて、管理職としての仕事をやらせるということです。

(中略)

部下が上司に仕事を教えたり、場合によっては反論することも、これからの時代は大切になってくると思います。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p115)=========

上司や管理職というのは、常にアジェンダの進捗状況が気になり、慢性的な不安を抱えているものです。

その不安がマイクロマネジメントにつながっているのですが、それを逆の立場から見れば、メンバーが「オーバーコミュニケーション」を意識すれば、マネージャーは安心して部下の仕事を見守ることができます。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p118)=========

上司が置かれている状況を理解しながら、「何を求めているのか?」、「どんなことに困っているのか?」という仮説を立てて、それを検証するような雑談を日ごろから積み重ねていくことが大事です。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p134)=========

しっかりと目的意識を持っていないと、雑談は細切れの会話になり、方向性を見失うことになるのです。

雑談には次のような目的があります。

①「つながる」 相手との距離を縮めて信用を作る

②「調べる」 最新の動向や現状に関する情報を収集する

③「伝える」 自社の意向や進捗状況などを報告する

④「共有する」 最新の情報を相互に認識する

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p171)=========

プライバシーに土足で踏み込まないというのは、簡単なようで、意外に難しいものです。

相手の話に出てきた「キーワード」を拾って質問を重ねていけば、プライバシーに過干渉することなく、自然な雑談を通じて相手を知ることができるのです。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p171)=========

「ファクト」ベースの質問は意外に危険

日本のビジネスマンは、軽い気持ちで「大学はどちらですか?」とか、「こちらの会社の前は、どこにお勤めでしたか?」という質問をします。

こうした「ファクト」ベースの質問は相手の気持ちにネガティブに刺さる可能性がありますから、もっと慎重になる必要があります。

(中略)

単刀直入なファクトベースの質問ではなく、「価値観」ベース、「信念」ベース、「期待」ベースの質問を心がける気遣いが大切です。

===========[引用終了]===========

=========[引用開始](p181)=========

ビジネスの場における雑談では、どんな話をする場合でも、次の4つのポイントを常に意識することが大切です。

①相手を驚かせないレベルの「自己開示」をして、自分という人間を知ってもらう

②好奇心を持って、相手の「人間性」や「人となり」を知ろうとする

③「信頼関係」の構築が目的であることを忘れない

④相手と「ラポール」を作れているか、客観的な目で観察しながら話す

===========[引用終了]===========

 

【参照情報】

https://www.amazon.co.jp/dp/B0BZTVKKMR

世界の一流は「雑談」で何を話しているのか Kindle版.ピョートル・フェリクス・グジバチ.2023/3/31

(最終閲覧日:2025/1/5)