稲城市民オペラ10周年記念公演《椿姫》
無事に終わりました。
無事に?
って、はい、たぶん、無事に。です。
実は私、公演6日前に具合が悪くなって寝込んでしまったのです。
熱は出るし頭は痛いし、喉は痛いし、咳は出るし、鼻水も出るし最悪でした。
週頭に病院へ行きましたが、お医者さんにも公演中止にしなさいと言われてしまい…
今、中止にすれば被害は大きくならないで済むでしょ、と。炎症がある喉で歌っても、いつものパフォーマンスは無理だろうからって心配されました。
確かにそうなのですが、公演を取りやめにするなんて考えられませんでした。
オケ合わせもお休みし、公演3日前に抗原検査が陰性になったので、前日のG.P.は歌わずに参加。それでも、ところどころ声を出して確認しましたが、少ししか歌ってないのに声枯れして、これは失敗公演になるとヒヤヒヤしました。全幕歌い通せる自信はゼロ。
しかも苦手な1幕…。1幕アリアで高音を出したら確実にダメになるだろうなぁ…
1幕アリアは、途中のカデンツァを複雑なものから変更し楽譜通りに。それでも、楽譜上では上のレの音まで出さなきゃいけないので、ベストコンディションでない喉でどう出せるか不安でいっぱいでした。
結果は、無事に出したんです。歌ったんです。ただ、いつものパワフルな声ではなかったと思います。
歌の先生からは「力の抜けた状態で出せたはずだから、その感覚を覚えておきなさい!」と。
細く、声帯の上を息が通っていくような感じ…
うまく言えませんが、いつもの「私、高音出してます!」って感覚はなく。どんな声が出てたんだろうなぁ。
お客様からは私が調子悪かったなんて、全然分からなかった!と言われました。
終幕に行くほど調子が上がってきたような感じはありましたが、3幕冒頭で「アンニーナ」と声を出したら、
完全におかまちゃんの声
やべっ、声枯れしてる
と思いましたが、なんか吹っ切れましてね。
感情だけで突っ走ったような…
団員さんたちの頑張り、ソリストさんたちに支えられ、オーケストラの皆さんの素敵な演奏。
マエストロにも大変な心配を掛けましたが、グイグイ引っ張ってくださいました。ここは喉のコンディション的には速めにいって欲しいんだよなぁというところを速めのテンポにしてくれたりして、私のテレパシーが通じた???なんて。
そして、何より、演出家で、この公演の総監督である夫の働き。ヴィオレッタを演じるなんて、ただでさえ押しつぶされそうになるのに、体調最悪で歌い切れるかという不安。きっと私よりもハラハラしていたと思います。それに加えて舞台監督の仕事もこなし大活躍でした。
2幕が始まる前に夫と。
稽古では、夫ではありますが、特訓をお願いしました。演出家と歌い手として1VS1で、何度か特訓。
ちゃんと歌う
出来てるようで出来てないのですね…
私の歌にたまに不機嫌になってた夫の気持ちがよく分かりました。
それでもやはり夫婦ですからね、ダメだと言われても「私ちゃんと歌ってるじゃない?」と反論したくなることもしばしば。
でも、それ言っちゃうと泥沼の夫婦喧嘩に発展することは目に見えてるわけです。
ぐっと堪えて言われてることを理解しようとして、そして試してみて…
ホントだ!私、歌えてない!!
そこでやっと夫の言ってることが分かるんです。でも、何がどうって言葉には難しい。
よくいるでしょ。
この人、音符通りに歌ってるし、声も出てるし、でもあまり良いと感じない。っていうの。
そういうのに陥ってたんですね。
こういうの、優れた指導者でないと良い方向に導けない。
夫は、歌唱に、オペラに、命を吹き込ませることの出来る優れた指導者だと思います。
歌い手の皆さん、演出家に歌の指導を受けるっていうのも良いものですよ!
体調不良で精神面もフラフラでしたが、たくさんの人に支えられて、歌いきることが出来ました。みんなの頑張れ!という『気』に支えられて歌えたと思います。笑顔になれたのはみんながいたから。
特に合唱団員さんたちからのエールは心強かった。
感謝しかないです。
幕が上がる前にソプラノさんたちと。
歌い手人生は25年くらいですが、風邪引いて迎えた本番は幾度か。でも体調最悪で、こんな難役を歌い切れたなんて初めてのことです。
長いようで短い、短いようで長かった稽古期間。そして公演本番でもたくさんの方に支えられました。
改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。
川上真澄