オペラを上演するのは、本当に大変なことです。


大変なことは色々ありますが、でもそれだけやり甲斐もあり、楽しみ、喜びも大きく、普段の生活では得られないものがあります。


オペラ公演で一番頭を悩ますのはお金のことでしょう。たっぷりあればなんの心配もいらない。

でも、そのたっぷりは人によって感覚はマチマチ。何にどれだけ掛かるか見ていくと、多く思えたその予算も実はかなり少ないということもあります。


会場の規模、楽器形態、演目…

そういったことで予算が変わってくる。


あまり予算がなくても(程度の差はありますが)何とかなる場合もある。ただし、見せられる側(お客さん)に忍耐を強いる?ものであったりしてニヤニヤ


で、

予算を削り、アレレな舞台や演奏になってしまって、

なーんだ、しょぼいな。

こんなのにお金払って見に行っても面白くなーい!と思われて、

そうして、オペラのお客さんは減っていく。


主宰してる稲城市民オペラの予算規模はそう多くはありません。

では、しょぼーい舞台かというと、ありがたいことに「このホールがこんな凄い舞台になるの?」という感想を頂くくらいで、皆さんによく驚かれます。

NHKで取り上げられて少しばかり放送されたこともありましたが、全く遜色はなかったと自負しております。


私たちのオペラ上演の収入源はチケット収入のみ。

プログラムに広告を掲載して少しでも足しにと思いますが、こちらは地元の方に応援して頂きたい、知って頂きたい、ということが目的なので値段設定は安め。これは上演の足しにしようなどと、アテにはしてません。


なので、団員のチケット販売の努力が無ければ公演は成り立たない。それを分かっている人は頑張ってくれるし、とてもありがたい存在です。


中には公共の存在が支援、という公演もあります。

でも、そういうところは公演のチケット収入分は予算に組み込まれず、与えられた予算で何とかしろというものも。


この点の大きなメリットは、チケットが売れなかった場合でも与えられた予算が削られることは無いということ。

チケットの売れ行きに左右されない、歌い手にチケット・ノルマが課されることはない。これは何と助かることか。


しかしこれには落とし穴もあります。

まず一つは、お客さんが少ないかもしれないこと。

歌い手はチケットを必死に売らなくてもいいんです。そうすると、お客さんが少ない可能性がある。


そして、

大きな問題は、与えられた予算がとんでもなく少なかったら?


予算が少なければ、それに見合ったものにすれば良い。それは誰しも考えること。


しかしながら、オペラ上演には外せない項目が多くあります。

そのどれかを外すと上演が成り立たない。もしくは、ナンジャコリャ?みたいなものになる。

すると全体的に予算を落として、つまり、謝礼額を落として発注することになる。

ところが、謝礼額を落とせない分野もある。


まずはそこに予算をあてがい、結局、どこが一番取り分が少なくなるか…


歌い手です。演出家です。指揮者です。

場合によっては「ただ」で歌え!ということになる。


そうして、

もう、やってられない!!状態になる。


歌い手は、何年経っても若い人たちが頑張ってる。

昔の若い人たちはどこ???

おそらく、今、活躍してる若い人たちも数年経てば半分以上は消えてしまうでしょう。


さて。

話を元に戻して。


公共のどこかが予算を出して、運良く、オペラを上演できることになったとしましょう。


そういう話が来るのは、まず、地元のオペラ団体、もしくは歌い手など地元で活躍してる方々。地元の名士の方々。

そりゃ嬉々としてお受けして、あちこちに手配をなさるでしょう。


演目はアレで、誰それに歌わせて、あ!誰それさんにも関わって貰わなきゃ爆笑


気持ちは分かります。


でもね。

予算によっては、上演出来ない類のものもあるのです。


歌えりゃ誰でもいいってわけじゃない。

ピアノが弾けりゃOKってわけでもない。

ホールが使えりゃ何でもいいってわけじゃない。


予算が少ないから地元のオペラに出たこともない安い人に演奏して貰いましょ、ということもある。

そうするとね、指揮者や演出家がそれはもう必死で指導をしなきゃいけなくなる。そうすると指導料がかかるわけです。結局、プロに演奏して貰うのと大して払う額は変わらない、いや、それ以上の値段が掛かってしまいましたね、ということもある。


だから、良い公演にするためには、オペラ上演に関してよく分かっているプロが色々決める必要がある。


でも、最初に話が来るのは、一応、音楽関係者。

その受けた人だって、よもや間違った選択をしているなどと思いもせずに、あちこちに発注。


そして。

あらかた決まったところで、演出家や指揮者に話が来るんです。あー、そこ決めてから話もってきたかぁ…と頭を抱えることが多ございます。


夢見るのは構いません。

でも、

その予算では夢は見れないよ?


というものばかり。


だからね。

舞い上がってあちこちに発注する前に、

そういうことを分かってる人に

まずは相談してください。

いや、これホント、まじで。


で、この土地でやるのならば、こういう人と、こういう歌い手にはお願いしたいと考えているのです、と、相談してくれれば、


バランスを見て、それに相応しい演目などを考え、その方にお願いできるよう、描いている夢に近づけるよう、こちらも最善を尽くせるのです。


例えて言うなればね、


都内のおっしゃれーなレストランは用意してあるけど、この予算じゃ、たこ焼きとか焼きそばとかのB級グルメしか出せないよ?


いや、B級グルメでも出せたらマシかも。

食べ物?

コレ、食べ物?


ということが、多くあるのでございます。