水素は世界最小の分子であり、コンクリートでも突き抜けていきます。水の体積の2/3は水素であり、我々が生きてゆくために必要な酸素の倍量あります。これまで、運動など疲れた時には、酸素吸入されてきましたが、酸素を吸うと、余計にヒドロキシラジカルを増やして疲れることがわかったため、最新のジムや運動クラブは運動の後に、酸素ではなく、水素を吸入するようになりました。

 水素は、赤ちゃんの時、大腸の中で日和見菌でも偏性嫌気性菌という酸素が存在すると増殖できない、バクテロイデス門、フィルミクテス門が1日800mlの水素を発生させます。腸内細菌叢が健全で、水素産生菌が活発に水素を発生しているときは、健康ですが、腸内細菌の働きが悪くなると炎症やアレルギー反応により、調子が悪くなります。その状況が続くといろいろな病気を引き起こします。我々は生きるためには酸素が必要です。酸素はミトコンドリアに働いてエネルギーをつくりますが、その時に必ず悪い活性酸素であるヒドロキシラジカルが発生します。ヒドロキシラジカルがあっても水素を大腸が作っていれば、水素がヒドロキシラジカルと合体し、水となり体外に排出します。すると、NOなどの良い活性酸素が働き、免疫機能を上げ、炎症を抑え、血流を増加させます。ヒドロキシラジカルが増えすぎる、あるいは水素の発生量が減少すると病気になるわけです。

 100歳を超えても、耳も目もよくて健康な人の呼気中の水素量を測定すると、驚くほど高く、調べてみると大腸の腸内細菌叢の水素産生菌が十分量あり、大腸で大量の水素を生成しています。ですから、健康な人は赤ちゃんと同様に、大腸で水素をたくさん作っているのです。

 老化や酸化でヒドロキシラジカルが多い人は、体の中で発生する水素が少ないわけですから、外から水素を取り入れないといけないわけです。一昔前、水素水がブームになりましたが、水中に溶ける水素量は微量ですし、アルミニウム缶であったとしても、開けたとたん、水素は外に出て行ってしまいますので、ただの水を飲んでいるのと同じことになります。例えると吸入水素量を水素水で飲もうとすると、50mプールの水を飲まないといけない計算になります。勿論、常に電極で水素を発生している状況の水素水はお風呂で水素を発生させれば、アトピー体質の方の皮膚はとてもきれいになります。また、微量の水素でも、腸内に水素水が入ると、脳に伝達されて、炎症を下げる指示がでるなどの報告もありますので、全否定するわけではありませんが、水素水の飲用より、水素の吸入ははるかに効果は高いようです。

 ではどれぐらい水素を吸入すればよいかというと1分あたり。水素のみで250ml/分あるいは水素:酸素=2:1の場合水素600ml酸素300mlの場合、30分の吸入で3時間程度、呼気中の水素濃度は高く、1時間の吸入では4時間程度、5時間の吸入で動物実験では15時間血中水素濃度が高いというデータがあります。つまり、夜間就寝時に5時間以上水素吸入を行うと、起きている間、血中水素濃度が高い状態が続く可能性があります。人と、動物では違う可能性がありますが、毎晩水素吸入を行っていると、悪かった眼血流が改善していることが、OCTAではっきりします。そのため、当院(セントラルアイクリニック)では、正常眼圧緑内障、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症、各種疾患の黄斑浮腫などに対して眼血流を上げる治療を行っています。

 勿論、全身的には一番多く用いられているのは、癌の治療です。ステージ3,4の治療不可能な癌に対しては、現在オブジーボなどの免疫療法が行われていますが、外科療法、放射線療法、化学療法を行った後の免疫機能はズタズタになっていますので、これらの患者さんに水素吸入を続けると、免疫が回復し、オブジーボなどの免疫療法の効果がでてきます。免疫療法+高濃度水素吸入療法は、最近では早期がんの治療にも用いられますし、化学療法や、放射線療法の副反応や合併症をなくすにも最適です。

 さらに免疫の過剰反応に対する治療にも用いられ、コロナ感染症やコロナの副反応。後遺症の治療にも有用です。

高圧水素吸入療法において、パーキンソン氏病で歩けなかった人が、高圧水素1時間で歩けるようになったりと水素の力は侮れません。私は、いろいろな効果は血流改善が主たる効果と考えています。血流は簡単には観察できませんが、眼科ではOCTAを用いることにより容易に眼血流を測定できます。

 水素は健康だけでなく、燃料として水素自動車、水素による発電などエネルギー源として、クリーンエネルギーとしての活用が見込まれています。これからは、水素の時代といえるのではないでしょうか。

 

  私自身の血圧、体調、眼血流の変化           正常眼圧緑内障の水素吸入と眼血流の関係