私が初めて多焦点眼内レンズを入れたのは、大学から、外に出た(総合上飯田第一病院)1989年か1990年頃、3M社の3ピース回折型多焦点IOL「815E」でした。このIOLは1987年に発売され、その頃は眼内レンズは自費診療でしたので、前の調剤薬局で患者さんにレンズを買っていただいて、挿入しました。その次にAMO社よりArrayがでました。

 最初はともにPMMAでしたので、大きな切開創が必要でしたし、Aスコープでの眼軸長測定でしたので、度数もアバウトでした。それでも、眼鏡なしで遠くも近くも何とか見えるということで好評でしたが、Arrayは途中からシリコン(SA-40N)になり、これは、小切開でできると喜んでいたのですが、1992年4月から眼内レンズが保険になり、単焦点の値段になったため、その後、多焦点を入れる人はほとんどいませんでした。

 多焦点眼内レンズがその後、脚光をあびるようになったのは、2008年4月からの先進医療が始まったころからです。これも、先進医療特約が使えることにより、無償で多焦点眼内レンズが入れられることで、大幅に増えました。

 多焦点はFDAが1997年Abbot(AMO)社のArray,2005年ALCON社のアクリソフReSTOR(アポダイズド回折型)IOLを承認しました。2009年にAMO(後のJ&J)社のTECNIS多焦点IOLがFDA承認を受けました。また、Oculentis社のLentis Mplus(セグメント型多焦点IOL)がCEマークを取得しました。Lentis Mplusは非対称デザインで3.00Dの近用部を有し、瞳孔径に依存せず遠近の焦点を切り替える新技術として注目されました。大きなメーカーであるAMOやALCONは先進医療の資格を取り、販売数を増やし、小さなメーカーは自費診療でした。このころは、眼内レンズは全て小切開対応、超音波の器機もバージャンアップし、眼軸長測定も光線追跡法で正確になり、さらにLASIKの技術で度数が合わなくても、タッチアップで度数をぴったり合わせる技術も確立され、多焦点眼内レンズは誰もができる手術になりました。しかし、先進医療は2期12年で終了となり、自費診療と選定医療(白内障手術は保険+多焦点眼内レンズは自費)になるとまた、急速に多焦点眼内レンズは減少して、単焦点が復活しています。単焦点でも中間迄見えるEDOFやLentis Comfort,あるいはトーリックレンズが増えています。