今回の日本眼科学会総会でどうしても聞きたかったのが、慶応大学の栗原俊英 先生の評議員会指名講演(昔の宿題報告)「視覚のニューロサイエンス」でした。

現在、当院の網膜色素変性症の患者さんが2名慶応大学に予備検査を受けて、キメラロドプシンの治療を受けようとしています。微生物型ロドプシンは既にフランスで臨床実験が行われ、非常に強い光で、光のわからない網膜色素変性症の患者が光がわかるようになっているようです。ただ、微生物型ロドプシンは感度が非常に弱い、一方動物型ロドプシンは感度が高いことより、組み合わせたキメラロドプシンにより、高感度で単体で働き続けることができることを数々の実験から実証し、いよいよ本年から人での応用を始めるということで、当院でも患者さんに説明しているところです。

このような大型プロジェクトは膨大なお金がかかり、日本の研究費ではとても無理のため、栗原先生は産学共同体の会社を設立し、既に19億円という巨額の資金を集め、今後、国などにも働きかけ30億円以上のお金が集まる予定だそうです。

これまで、日本の医学は少ない資金でできることだけでこつこつっとやってきたため、結局、アメリカなどに頭脳の流出がおこり、日本の科学や医学の退潮が叫ばれてきました。

それを跳ね返す快挙といってもよいでしょう。

キメラロドプシンを硝子体内に注射するという簡便な方法で、視覚再生ができるという夢のような話です。

私としては話を聞いていて、この治療に水素吸入を組み合わせると光受容器である網膜の代謝応答によりよい影響を与えるのではないかと思っています。今後の治験が楽しみです。