集団検診のデータをもとに解析して血圧が高い場合は眼圧が高い、血圧が高い人に緑内障の高眼圧が多いという文献がでました。これは、30年前からわかっていたことで、高血圧の人は高眼圧の開放隅角緑内障、逆に低血圧の人は、正常眼圧緑内障になりやすいというのがわかっていました。では、正常眼圧緑内障の人の血圧を上げれば良いのではないかという議論が起こりました。ただ、適度に血圧を上げる薬がないことより、その話は立ち消えになりました。最近でも、血流改善剤や漢方を使用して、血圧が上昇しないかやられましたが、正常者は血圧が上昇しましたが、正常眼圧緑内障の人には、効果がありませんでした。

我々の今回のデータも正常眼圧緑内障群:眼圧11.8±2.1mmHg,収縮期圧(SP)114±15mmHg,拡張期圧(DP)69±11;高眼圧の開放隅角緑内障群:眼圧16±3,SP142±23,DP84±10;正常群:眼圧13±1.8,SP129±16,DP78±10と同様のデータですが、水素吸入前後の網膜血管密度の増減と血圧の関係をみてみると、NTGでは耳側の傍黄斑網膜血管密度(dfVD)が有意な正の相関(p=0.0213)、POAGではDPと鼻側のpfVDに有意な負の相関がみられました。上方、下方でももう少しで有意差が出る状況で、NTGでは収縮期血圧と網膜血管密度に何らかの関連があり、POAGでは拡張期血圧と網膜血管密度に関連があると思われました。NTGでは水素吸入によりSPが上昇する可能性があり、POAGでは水素吸入により、拡張期圧が下がる可能性があると推測されます。

付け加えますと、正常眼圧緑内障の患者さんで以前、血圧が正常あるいは高かった人が、降圧剤によって血圧が下がり過ぎている場合があります。NTG64症例中10症例(16%)が降圧剤により血圧が120mmHg以下になっており、この場合、降圧剤を減量あるいは中止した方が良い症例もあるあかもしれません。血圧は年齢により少しずつ上がります。また、安静時と緊張した時では値がかなり変動します。年齢による高血圧の定義をきちんとして、過剰な降圧を避けるように眼科医と循環器に医師がdiscussionする必要があると思います。