世間に知られていない治療、これまで、一般的でない治療を患者さんに説明するのは難しいことです。特に、保険診療でなく自費診療であるため、お金の問題がでてきます。

 ただ、このまま進行すると、視野欠損が黄斑部にかかりそうな場合、できれば、水素吸入をしていただきたいと思います。しかし、働いている人に週1回30分の吸入のため通院してくださいとは、なかなか言えません。また、30分の吸入では眼血流の改善も1時間から2時間で元に戻ってしまいます。

 動物実験でも1時間の吸入で血中水素濃度は1時間半で消失します。しかし、5時間吸入すると18時間以上、血中水素濃度はマキシマムの値を続けるというデータがあります。つまり、寝ながら就寝時吸入していると、ほとんどの時間水素を吸入しているのと同じ状態が続くということです。ですから、眼血流を常に増加させるには就寝時の吸入が最も良いのです。しかし、そこでもお金のもんだいがでてきます。1か月の水素吸入器のリース料が5万円近く必要になります。

これは、年金しか、収入のないお年寄りにとっては難しい金額です。若い人でも、難しいかもしれません。ここが、この治療の最大の問題です。ですから、可能であれば、という前提になりますが、その説明で、気分を害する人もいらっしゃるようです。そうすると、他の眼科で水素の話をすると、そんな話は知りませんということになってしまいます。

人がやっていないことをする時は、いろいろ言われます。それはしょうがないことだとあきらめていますが、68歳にもなって、データを集め、学会で発表し、原著を書いています。

これは、自分のためというより、手術や点眼では何ともならない正常眼圧緑内障、網膜色素変性症、抗VEGF薬だけでは治らない加齢性黄斑変性症など治療法が確立していない患者さんの見え方を少しでも良くしたい。そのためには、水素のことを全く知らない眼科医の意識を変えてほしいからです。

 水素吸入器は発生量と金額がパラレルに高くなっていきます。では、どれぐらいの量で、有効なのかはまだ、しっかりしたデータはでていません。ただ、最近の文献では、流量が多いほど、血中水素濃度が高いことが実証されています。

 先ずは水素流量1200mlと860mlの比較から始めています。