「慢性炎症はすべての病気の原因である」と言っても過言ではありません。現代の医療は急性炎症性疾患を制御することができますが、慢性炎症性疾患を制御することはできません。慢性炎症は、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、脂質異常症、肝硬変、アトピー性皮膚炎、喘息、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、アルツハイマー病、うつ病、癌など多くの疾患に関与しています。

 炎症の多くの部分は、マクロファージおよび好中球によって産生される炎症性サイトカインを放出することによって誘発されます。

 軽い炎症であっても長期にわたる炎症は、生体を損傷し、慢性炎症を誘発する可能性があります。

 最近の研究では、ミトコンドリアがサイトカインの産生に重要な役割を果たすことがわかっています。また、ミトコンドリア関連活性酸素(一番酸化力が強いのがヒドロキシルラジカル)の刺激が炎症性サイトカインの産生を引き起こすことも報告されています。

 水素が炎症の様々な動物モデルにおいて、ミトコンドリアで発生したヒドロキシルラジカルはミトコンドリアDNA(mtDNA)に酸化ストレスを誘導し、この酸化されたmtDNAがピリンドメイン(NLRP3)インフラマソームの活性化を誘導します。NLRP3活性化はインターロイキン(IL)-1βおよびIL-18などの炎症誘発性サイトカインの放出を誘発します。一方、水素はミトコンドリア酸化およびNLRP3インフラマソーム活性化をブロックすることにより炎症を抑えることができます。ですから、高濃度水素・酸素吸入療法は、慢性炎症を抑えることができます。PSAなどの腫瘍マーカーが減少するのもこのためと思われます。私が、現在、考えているのは、高濃度水素・酸素吸入療法は全ての病気にかかわる慢性炎症を抑える可能性があるわけですから、慢性炎症ら派生した多くの疾患の治療に有用なのはもちろんですが、予防的使用にも大きな可能性があると思います。