医者は、患者の病気を診断し、説明し、治療をします。

 よく、医師が患者になって初めて患者の気持ちがわかるといいますが、病気の本質や悩みは、多くの患者を診察しているため、一般の人よりはわかりますが、本当に、その症状を理解しているかどうかはわかりません。

 ただ、医者が自分自身で全ての病気を体験することはできません。ですから、医者は日々、患者さんの言葉に耳を傾けて、患者さんから勉強させていただくことが大切ですし、学会などで、他の医師が体験した経験を学び続けなくてはなりません。

少なくとも、自分の専門に関しては、他の人よりは知識がありますが、思い込みや、勉強不足で、本質を理解していないことも多々あると思います。

 特に、手術に関しては、より慎重になるべきですし、自分より腕の立つ医師がいれば、その先生に、手術をしていただくのがベストと思います。

 私が体験した他科の手術は前立腺の手術でしたが、局所麻酔で、前立腺の生検は、穿刺はこんな大きな音がするんだとかいろいろな体験があり、よくわかりましたが、前立腺肥大そのものの手術は全身麻酔でしたので、入室時のことと、覚醒したときのことしか覚えていません。入院でのスタッフとの会話はいろいろ勉強になりました。外来の合間を縫っての通院の大変さも経験できました。レーザーによる前立腺手術の良さがよくわかり、他の人にも勧めています。

 では、自分がやっている眼科手術に関してですが、幸いなことに、屈折矯正手術であるLASIKを自分自身が2002年に受け、自分の家族全員4人LASIK,PRKを受け、術後の状況を体験でき、患者さんへの説明にとても具体的な話ができました。このころは、まだ、47歳だったので、術直後からこれほど見えることに感動していました。ドライアイも何も感じませんでした。モノビジョンLASIKで右をで正視、左を近視-1.5Dとして遠くも近くも見える喜びを15年近く体験できました。ただ、60歳を過ぎると、老眼鏡のお世話になり、前立腺手術をするころより、調節力がほぼなくなり、遠視化もあり、遠くも近くも遠近両用眼鏡が必要になりました。でも、左右の度数が違う不同視で目が疲れ、顕微鏡の手術に自信が持てなくなり、多焦点眼内レンズによる白内障手術を受けました。

 これも、術直後から良く見えることに驚きましたが、今回は、ドライアイが強く、もうすぐ術後2か月ですが、乾燥の点眼が手放せなくなり、また、多焦点では必ずあるグレア、ハローはまだ残っています。このようなことも、患者さんへの説明には大変重要なことで、、よりきちんと説明できますし、高齢の多焦点の人の訴えが良く分かりました。慣れに時間がかかるのです。でも、私も、同じような症状があり、時間の経過とともに減少するとお話しすると患者さんも安心していただけます。

 LASIKも多焦点眼内レンズも自費診療であり、メガネやコンタクトレンズを使えば見えないことはないのですから、どうしてもやらなくてはいけない手術ではありません。ただ、ご自身のQualityを上げるために、何かできないかという手術です。

 自分自身がその手術を受け、その喜びや体験をお話しできることは、医者冥利につきることです。

 よく、他科の先生や、同じ眼科医でも、屈折矯正手術を理解していない先生が、自分自身の知識だけで、批判しているコメントをよくみかけします。その手術を本当に理解していますか?体験者の声を聴いたことがあるのですか?と問いたいです。

 自分自身がその手術を自信をもって患者さんに勧めるのであれば、そのチャンスがあれば、是非体験していただきたいと思います。