銀座眼科の元院長への怒り
屈折矯正手術をやっている身としては、このことに触れないわけにはいきません。
まず、今回、被害に遭われた患者の方々の苦しみには深くご同情申し上げます。また、銀座眼科の元院長には怒りとともに、憎しみも感じます。
器具の消毒もせずに手術をやっていたというのは考えられないことです。
逮捕されるのは当然ですし、これまで、逮捕が長引いた理由もわかりません。この医師は、地方の大学を出た後、まともに研修できず、勤務医としても、能力がなく(各病院で医師を辞めたほうが良いといわれていたようです)、それが、何を血迷ったか、東京で開業して、触れたこともない器械を用いてみようみまねで手術をしてという感じでしょうか?
原因の根本は教育体制にある
このような人間が医師になれる今の教育体制にこそ、問題があると思います。手術において清潔、不潔という概念は絶対的なもので、これを研修時代にみっちり叩き込まれないといけません。徒弟制度でも何でもよいですが、医局の縦社会の中で、揉まれるというのは、医師の人間形成にとって大切な部分でした。それが、最近の研修は、大学ではなく、研修期間であれば、どこでもよいというシステムになり、基本的な嫌な仕事は避けて、おいしいところだけ、とるというやりかたは、基本をおろそかにします。
きちんとした教育を受けていない人は、手洗い、消毒もきちんとできていません。手術も麦粒腫、翼状片のような手術をせずに、最初から白内障の手術をしたり、最近は、無縫合の手術ばかりになり、縫合のできない医者がいたり、レーザーだったら器械がするから、手術ができなくてもできると思ったりとか、悲しい現状です。そういう意味では、あまりにもお粗末ですが、おこるべくして起こったとも言えます。
我々、屈折矯正にたづさわる人の悲しみ
ただ、真面目に医療にとりくんでいる人から見ると、全て同じように見られ、悲しくなります。特にレーシックのような新しい手術は、一度、このような問題を起こすと、一人の、どうしようもない人間が起こしたものが、レーシック自体の問題のようにとられてしまうのです。
リーマンショックがおきて、景気低迷期に入ったときにこの事件がおき、レーシックは急速に光を失いました。現在、レーシックの数は、最盛期の1/3にまで減少しています。
唯一の光明
この事件で唯一よかったことは、この件でも明らかになったように、過度の安売りが安全を軽視していたということが一般の方にも理解をえたことでしょうか。
安売りの美容系の施設が相次いで問題が発覚し、自転車操業もあいまって、倒産や、買収の対象になりました。
医療と水と安全はただではない!
以前から言っているように、安全と水と医療はただではないと言うことです。医療はこれまでは、ほぼ、無料に近い状態で推移してきました。ようやく1割~3割ということになりましたが、破綻まじかの保険診療を考えても、今後は混合診療でなくてはやっていけません。
また、水もこれまでは、ただのようなものでしたが、今ではおいしい水を買うのはあたりまえ。今後は石油でなく、水で戦争が起きる時代になります。
日本では、安全というものは費用をかける必要はなかったのですが、今では、家の鍵も二重三重にしなくてはいけない。監視カメラで街を見張らなくてはならなくなりました。
レーシックはお金のかかる手術
レーシックも同じです。この手術はいかに時間をかけてカウンセリング、検査をおこなうかが重要です。
私どもでは最低3回の視力検査を義務づけていますし、調節の緊張をとるため、散瞳検査後の視力も測定しています。トポグラフィーも3種類のものを使用し、円錐角膜などがないことを確認し、将来の白内障や緑内障のことを考えて、眼軸長や全距離視力の測定も行います。
手術はクラス1000の無菌室で行い、温度や湿度に弱いイントラレースやエキシマレーザーのために24時間空調をつけっぱなしで、温度は21±2度、湿度は50%の範囲にしています。
ヘパフィルターや空調で何千万円という設備投資がいります。
アイレーシックではイントラレースのコーンは1眼毎新しいものを使用しないと動きません。VISX STAR S4IRはキーカードが1眼毎新しい物でないと動きません。他の器具も全てディスポです。
イントラレースとエキシマの保守料だけで年間1000万以上です。
器械は次々グレードアップされ、10年でエキシマレーザー3台目です。以前の機種のリースも残るぐらいです。
1眼10万円以下の金額でやろうと思えばどこかを犠牲にしなくてはなりません。いくら、デフレの日本でも、誰も落ちる飛行機には乗りませんし、安全でない手術は受けません。
レーシックは安全な手術
しかし、レーシックという手術は実際にはどんな手術よりも安全なのです。まれにDLKという免疫反応による非感染性の炎症はありますが、きちんと経過観察していれば、処理できて、治ります。感染性の炎症は限りなく0に近い数字で白内障の感染症の1/20以下です。眼内に器具をいれることなく、全て眼外でできる手術であるために、両眼同時にできて、世界で毎年600万眼以上の手術が行われているのです。
屈折調節や角膜を専門にしている眼科専門医がてがければ、これほど安全で、術直後から快適な手術はないのです。もう一度、レーシックの快適性を再認識していただきたいと思います。
一人のおろかな医師のために、大事な手術の運命が変わる
ようやく、リーマンショック、トヨタショックから脱しつつあり、安全なレーシックやPRKを皆さんが受けようとしているとき、また、一人のおろかな医者のために、我々屈折矯正をやっているものが、同じようにみられることは非常につらいことです。
これは、レーシックだけでなく、多焦点眼内レンズでも同じです。
先進医療で、患者様から高いお金を出していただく手術ですが、丁寧なカウンセリングで十分な説明をして、さらに適応を守り、上手な術者が行えば、とても満足度の高い手術です。
しかし、その手術を手術を始めたばかりの人が行い、医師だけの説明で、しかも、適応が守られていなかったら、レーシックの銀座眼科と同じ運命を辿ります。多焦点眼内レンズを挿入される医師の方々はくれぐれも心して、手術を行っていただきたいと思います。