国内初、失明患者に光
12月5日大阪大学の不二門教授らによって、失明した網膜色素変性症の患者の眼球に網膜を刺激する電極をつけ、光の動きを追えるまでに視覚を回復させたという新聞発表がありました。
網膜色素変性症とは?
網膜色素変性症はカメラのフィルムにあたる眼の網膜に異常をきたす遺伝性、進行性の難病で、現在、根本的な治療法がなく、徐々に暗いところでの見え方が悪くなり、視野狭窄、視力低下をきたし、最終的には失明する病気です。患者数は推定10000人、遺伝子解析が進んだことより、将来的には遺伝子治療、網膜移植、人工網膜等の研究が進んでいるが、いずれも、実用的には20年以上かかると言われています。CCDカメラの映像を網膜や視神経とを通して脳に信号を送る方法が現時点で一番可能性があると言われている。
私の網膜色素変性症患者さんへの治療
当院では、20人ほどの網膜色素変性症の患者さんが、通院されています。
私は20年ほど前、HBOT(高圧酸素療法)で、細くなった網膜血管にできるだけ酸素濃度を高くすることにより、酸素の受け渡しを浴するという治療法を発見し、視力が0.1程度の人が1.0まで視力が回復したりすることを報告いたしました。その後、高圧酸素療法は一時的に視力を回復させますが、時間が経過すると、少しずつ視力が再度低下します。蝋燭に酸素を吹き込むと、灯りは大きく強くなりますが、蝋燭の消費量は増えますので、何回もできる治療法でないこと、また、一人用の高圧酸素カプセルでの火傷などの事故があり、厚生労働省が規制をかけたため、その治療は多人数が入れる大型のものしか使用できなくなりました。その後、100%の酸素吸入を貸し出して行ったりしていましたが、現在は、近赤外線レーザー(スーパーライザー)による星状神経ブロックにより上半身の血流を増やし、プロスタグランディン製剤の点滴で動脈を拡張させ、より血液の流れを浴することにより、少しでも網膜の血流障害を減らす治療を行っています。
患者様の気持ち
患者様は、網膜色素変性症の診断を付けられ、治療法がないと宣告され、何もしてもらえないと重い、通院されなくなります。しかし、治らなくても、少しでも患者の持っている潜在能力を上げて、少しでも日常生活が楽にできるようにするのも医師の務めです。ですから、循環改善剤の投与でもいいですから、できることを医師はしてあげて、患者様に詳しくこの病気の説明をして、日常生活をより快適にできるよう、あるいは進行を食い止めるためにできることをお話しなくてはなりません。もちろん、それらに対して医療点数はありませんから、時間がかかって、治すことができないというジレンマはありますが、医師の努めであると私は思っています。
難病ですから、診断書を書くことにより、身体障害者手帳を手にすることもできますし、拡大読書器、白杖などを手に入れることもできますし、訓練もできます。中途失明の人は凄く落ち込みやすいので。心のケアも大切です。
また、合併症で白内障がある場合、早期に白内障手術をして、着色眼内レンズを挿入し、更に医療用保護眼鏡を装用していただけば、かなり視力を回復することができますし、予防効果もあります。その見える状況の中で、今後、やれるべきこと、失明前にやれることをやっておくということも必要でしょう。眼科医が皆、このような考えで患者様と接していただければ、患者様の気持ちもかなり変るとおもいます。
また、その方たちにとって、情報として、遺伝子治療の話や、カメラを埋め込む手術などは、がんばろうという気持ちになる明るいニュースです。
アメリカでの研究
アメリカです、10年以上前から、囚人の網膜を使用して、カメラを埋め込み、直接網膜を刺激して、物の形がわかったという報告がありましたが、半年ほどで、カメラに増殖組織がからみ、新しい物に、取り替えるという状態でした。
今回の治療法
今回の方法は網膜ではなく強膜に49の電極が着いた白金製のチップ(7mm四方)を埋め込み、眼球内にも約1mmの電極を装着し、額に取り付けたCCDカメラでとらえた映像を、体外のコンピューターで白黒映像に変換し、この情報をこめかみに埋め込んだ小型装置に無線送信し、装置に繋がった強膜のチップで網膜に電気刺激を与える仕組みである。刺激は視神経を経由して脳に伝わり、パソコン画面の光を指で追えたと言う。
アメリカの方法と異なり、網膜ではなく、強膜にチップをつけるため、安全性が高いし、1ヶ月装着しただけで既に外してあるそうです。それでも、現在も蝋燭の光が見えているということですので、何らかの刺激を与えることにより、失われていた視機能が回復することもあるようです。今後の研究の進展に眼が離せません。多分、今後、患者様から、いろいろこの治療のことに関して聞かれると思います。