なまあったかい。
予報程の大雨にはならなかったが、風が強い。
キラはゆっくりと歩を進める。
不自然な位、ゆっくりと。
「イチ君って、すごい運動神経いいみたいだね」
イチが駆けて行った方向を見て、のんびりと言う。
「ま、迷子になったりしないでしょうか」
「ああ、大丈夫。ここ一定時間いると、麓か僕らの家に誘導されるようになってるから」
「その差は?」
「一定時間経った時にどちらに近い場所にいるか、だね」
そう言えば初日にマリューがそんな事を言っていたのを思い出す。
「イッちゃんが『さん付け』で人を呼んでるの、初めて見た気がするな」
「そうなんだ」
暫く歩いていると、段々と甘い匂いがしてくる。ラクスが作っているジャムの匂いだろう。
「でもいいんですか?」
「?何が?」
クムギの質問にキラが小首を傾げる。
”うわぁ、可愛い”
見た目の年は16~18だが、それでも男がこの仕種ってどうなんだろうと思わなくもないが、なんだかすごく似合っていて可愛い。
「いえ、あんまり外部の人とは会いたがらないんじゃないかと思っていたので」
「そんな事もないけど、大体僕らの見た目がこうだから…大抵の人は僕らが魔法だって解らないから」
「あー」
色んなゴタゴタを出来うる限り避けたいだけで、自分達や村に対してそれがなければ何も構わないのだろう。
「それで今日は何か用だったの」
「特に用って訳じゃないけど、人間とか魔法とか関係なく、仲良くしたいな、と」
これはゴクラクを知る者からすれば、驚愕の言葉だった。
一番はイチの意志だろうが、ゴクラク本人もそう思っているのは気持ちの変化が凄い。まぁ流石にまだまだ余所行きの態度ではあるが。
「イッちゃんもキラさん達と仲良くしたいって言ってたし」
「でも習得はなしだよ」
「イチ君、そう言う事はした事ありませんから」
と言うか、いまだに習得方法は謎なのだ。
デスカラスも告解まで使おうとはしていない。この穏やかな魔法達が静かに暮らしていく事に異論はないのかもしれない。
「そう言えば、デスカラスさんは?」
休日だから別に行動を共にする必要はないが、恐らくこのグループの保護者的存在、リーダーだと思っていたし間違ってはいない筈だ。
「え、あ~」
「あは、あははは」
「?」
二人の何処か困ったような曖昧な反応を疑問に思うが、とりあえず深刻な理由で来なかった訳ではなさそうだ。
「僕らもただ友人になるって言うのは嬉しいよ。やっぱり時々は新しい事もあった方がいいよね」
これを聞いて、やっぱりこの魔法は人間に感性が近いなと思った二人だった。
