これもそこそこあるやつ。
2パターンあって、記憶はそのままか、記憶も逆行してるのか。
理由は何でもよし。
シンは目の前でオレンジジュースを飲んでいる小さな子どもを見守りながら、頭を悩ませた。
”ど-すんだ、これ”
昼の業務の始まりになっても現れないキラを迎えに士官室へ行き、だが返事がない為に、もしもの時の為にと艦長であるコノエ、キラと同業務を行う事が多いハインライン、そして補佐の役割を担っているシンの3人のみに知らされているセキュリティ解除の複雑なコードを打ち込み「失礼します」と言いながら中に入り、見つけた。
サンドイッチとサラダ、オニオンスープが入っていた(本日のランチBセット)空のトレイ(最近はきちんと食べてくれる)の乗ったテーブル…の椅子で寝ていた子ども。
「!!??!」
ダブダブの白とグレーの制服。
柔らかな茶色の髪。
少し浅黒い肌。
ここにこんな子どもがいる筈がない。
だが特徴はキラのもの。
人の気配を察したのか、長い睫が震え、その瞳が開かれる。
澄んだアメシストの綺麗な瞳。
「……キ、キラ…さん?」
「うん…僕はキラだよ。おにーちゃん、だぁれ?」
寝ぼけ眼を擦りながらも、しっかりと答えてくれる。寝起きはいいようだ。
「え、ぁ…俺は、シン・アスカ。その…」
周りをきょろきょろと見て、幼い顔が歪む。
「ここ、どこ…?おとーさんとおかーさんは?」
”うわあぁぁ……!キラさんの両親ってオーブだよな?いや、だからってすぐ呼べる筈ないし。てか、今にも泣きそうなんですけどーーー!!”
最早シンも内心は大パニックだ。
こんな症状聞いた事もない。
「ちょっとシン、隊長呼ぶのに何時までかかってんのよ」
空きっぱなしだったドアからルナマリアが顔を覗かせる。
「ルナ!」
助かったとばかりにシンが振り向いて、キラが座ったままの椅子を見えるように動かす。
「-------------隊長?」
たっぷりの間の後にルナマリアがそう絞り出した。
幼いながらもキラの面影はあるし、大きなアメシストの瞳は間違えようもない。
新たな登場人物に、キラは更に瞳を真ん丸にさせる。
「おねーちゃんとおにーちゃんはお友達?僕のこと、知ってるの?」
隊長というのがよく解らないが、どうやら自分の事を指しているようだと気付いたキラは、コテンと首を傾げながら訊いてきた。
ただ、大きな瞳はまだ潤んだままで、もう一押し何かあったら確実に泣き出しそうだ。
「ルナ。とりあえずメイリン経由でも何でもいいからアスランに連絡とってくれ」
「わ、解ったわ」
その瞬間、キラの顔がパァッと輝いた。
「アスラン、来るの?おにーちゃんたち、アスランのごえーさん?」
初めて見た、とキラキラした瞳の何の憂いもないキラの笑顔に、シンもルナマリアも胸を貫かれる。可愛い!可愛いけど、なんか切ない!!
”護衛かよ!そりゃこの年位だったらザラの御曹司ってところだもんな”
「うん、まぁ、とりあえずアスランが来るまでどうする?」
「…喉かわいた」
「オレンジでいいか?」
「うん」
どうやらアスランの知り合いというだけで、警戒を解いたらしい。
その事実に、シンは無性に悔しいやらムカつくやら、と言った心境になる。
”こんなガキの頃からの友達ってんなら、確かに信頼も深いだろうさ”
そうして今に至る。
流石に食堂に連れ出す訳にもいかず、自販機でオレンジジュースを買ってくる。
”服もどうにかしなきゃだよな”
だがしかし、ミレニアムに幼児用の服などある筈もない。
そこへコノエとハインライン、ミレニアムの艦医を連れてルナマリアが戻ってきた。
……ヤバい、長くなった。