あれこれ考えると、色々モヤる事も多い。

キラが主役と言われてる割には扱いあんまり良くないなって思ったり。陰の主役はラクス(サントラ聴いてると「静かな夜に」アレンジ入ってるのが多くて「ああ」ってなる)だし、解りやすい活躍はアスランとシンの方が多いし。

監督が「キラは少し痛い目にあった方がいい」みたいな事言ってたけど、運命まででもこれでもかって位散々痛い目遭ってるやろがい!となったんだが。

 

 

キラはPCの電源を落として、アスランに向き合った。

「お前の隊長としての話をあれこれと聞いた」

「え?あの後、そんな話してたの?」

「ああ。黙っていた俺への文句は一切なくて、これからここで過ごす俺へのアドバイスが主だった」

「ふうん」

復帰して以降のキラは、以前に比べてきちんと仕事を振り分けるようになったとか、部下一人一人をちゃんと見て、何ならプライベートな話でも余裕を持って聞いてくれて、それが非常に聞き上手だとか、整備や開発の人間とも楽しく話しているとかetc.

「それ、アドバイスってより僕の状態説明じゃない?」

「俺がお前の状況を調べに来たってターミナルの任務を知ったからだろ」

寧ろ、今のキラには何も問題なんてない!と先んじて話しているような感じだ。

「慕われるんだなって」

ミネルバ時代の自分を思い出すと、それは羨ましい位だった。

「そうだね。シンやヒルダさんなんてあの時の僕の醜態を見てるのに、変わらず僕を立ててくれるし」

「それなんだが」

「うん」

「俺はあの時、一方的にあれこれ言ったが…お前、今なら反論とか言えるんじゃないか?」

「は?」

キラがどれだけ追い詰められていたか、アスランは実際は何も解っていなかった。今回、あの頃のキラの状況を知って、少々気まずくなったのだ。

こちらに来る前に、マリューやムウからは今までアスランに話す事がなかったストライクに乗っていた頃のキラの状況も教えて貰い、つまるところ、あの時のキラはストライク時代と同じだったのだ。

自分がやらなければ、戦わなければ、みんな死ぬ。

ゾッとした。

そういう経験をした事があるのは、大勢いるMSパイロットの中でもキラだけだろう。

母艦を守るパイロットは自分だけ。

自分が墜ちれば、守っている人たちは確実に死ぬ。だって、他にはいないから。常に背水の陣で戦うなんて、プロの軍人だってメンタルをやられる。

ブレイク・ザ・ワールドの後に戦闘介入するようになった時も同じだ。

カガリもS・ルージュに乗っていたとはいえ、国家元首の立場にいるカガリを本気で戦わせる訳にはいかないのだから。

AAに合流したオーブ軍のパイロットも、ベルリンの時以外には出てこなかった。

エンジェル・ダウンの時は「正式なオーブ軍」を出すのはまずいとキラが出撃させなかったのだとも、マリューは教えてくれた。

オーブに戻るまで、結局AAの守り手はキラしかいなかったのだ。

ワンマン・アーミーで戦うのが当たり前で、他に戦えるパイロットがいるようになっても最大戦力だったキラに、そうそう他人を頼る発想が育つ訳がない。

そうしてアスランは、自分がそんな風にキラが思いつめる原因の一つだったことを嫌でも思い出さざるを得なかった。

「もし言いたい事があるなら、言ってくれ」

全部、聞くから。