暑い~。

毎年毎年、暑さが厳しくなってる気がする~。

 

 

キラはそのまま帰宅するのではなく、コンパス本部へ向かった。

今日は自分が午後から半休なので、昼食を一緒にしようとラクスと約束していた為だ。

受付には既にラクスから連絡が入っていて総裁室へ向かうのに支障はなかった。

総裁室へ入ると、何時もは満面の笑みで迎えてくれるラクスが何処となく申し訳なさそうにしているのに気づく。

「会われましたよね」

挨拶もなしのそれに、キラは小さく息を吐いた。

「流石にラクスが知らないって事はあり得ない」

「はい。申し訳ありません」

「別にラクスを責める気はないよ。ああいう事をするのって大体アスランの独断な事が多いから」

「ですが、止めなかったのも本当ですわ」

「コノエ艦長も知ってるよね?」

「はい」

「二人が認めたって事は、何かちゃんと理由があるって事でいい?」

「ーーーー聞いていないのです」

「え?」

まさかの言葉に、キラは珍しくポカンと口を開けた。

いや、それ、やっていい事?

ていうか、それを何で二人が認めるの?

「えぇと…アスランがゴリ押しした?まさかアスランが言うからってだけでOKしたなんて、流石にないよね?」

そこまで言って、キラは軽く頭を振った。

「いいや。先にご飯食べよう。僕はこれから帰るだけだけど、ラクスはまだ仕事あるでしょ」

「ええ。すみません、キラ」

「詳しい事はアスランに直接聞くよ」

「…キラ……」

「うん、まぁ…何となく解らない事もないような気もするしね」

両親を除けば、一番キラと付き合いが長いのはアスランだ。それもかなり濃密な。ここ数年はラクスの方がキラと近いがやはりキラとアスランの間には特別な絆があるのは、否定のしようがない。

心配されているのは解る。

あの時、自分を正気に戻してくれたことや、その後のあれこれにも感謝している。

ただ、彼が何時までも子供の頃の関係性を引きずっている事に、釈然としない気持ちがあるのも事実だ。

 

食事中はその話題には触れず、それなりに楽しく過ごし、キラは本部にある自分の執務室で着替えた後、ラクスとよく行くショッピングモールへ向かった。

冷蔵庫の中身を思い出しながら、買い物を済ませる。

”僕ももう少し出来るようにならないといけないよね”

孤児院にいた頃も、家事関係は子ども達と同じくらいにしかやっていなかった。

それでも、あの頃はキラが自分から何かやるだけでカリダやラクスが喜んでいたことまではキラ自身は知らない。

”メインはラクスが作るって譲らなかったし…”

だったら自分が作るのはサラダやスープという所か。

デザートに挑戦するのもいいかもしれない。

”ラクスが料理するのが好きって言っても…かなりの作業量だよね、これ”

自分で多少なりともやるようになったおかげで、ファウンデーション事変前の自分が、どれだけラクスの心遣いを無碍にしていたのがよく解るようになった。

それを謝罪すると、ラクスは微笑んで首を振った。

『あの頃の事はわたくしにも非がありますから』

本当にお互いに言葉が足りなかった。

どちらかが一歩、いや半歩でも歩み寄れていたらと思うが、時間を巻き戻せはしないのだからもう同じ間違いをしないようにするしかない。

だからやっぱりそこの所でアスランに感謝はするけれど、だからと言ってこれからアスランがやることを全て許容するのは違う、と思うのだ。