タイトルつけるの苦手で、SSの内容が全く分からないタイトルばっかりになっている…( ̄▽ ̄;)

 

 

目の前にいるミレニアムの艦医の言った事に瞠目した。

「あの…」

「覆りません」

「いえ、ですが…」

「医者として、今回准将の出撃は認められません」

「ですけど、今回の作戦が上手くいけば出撃の回数は確実に減る筈です」

「ダメです。今後がどう、ではなく、今、ダメです」

メディカル・チェックに引っかかったのだ。

「この際ですから言いますが、今までも医者としてはかなり大目に見てきているのですよ。そして今回はそれすら容認できない…そう言う事です」

MSの操縦は繊細だ。

ほんの僅かのミスで、自分のみならず、周囲に余計な被害を出しかねない。

「准将の操作技術、実績でこれまで大目に見ていたのです。

ええ、この大掛かりな作戦でドクター・ストップを出すのは私としても忸怩たる思いではありますが…認められません」

キラはグッと拳を握りこんだ。

自分が万全な状態でない事くらい、理解出来ている。

「…という事です、艦長」

その単語に、キラはハッとした。

まさか…この会話はブリッジに筒抜けだった?

「そうですな…確かに准将の離脱はかなり痛いですが…私には艦のクルーの命を守る義務があります。それは勿論、准将も例外ではありません」

これはもう、どんなに言いつのっても自分の出撃は認められないだろう。

確かに階級は自分の方が上だが、「艦長」の判断を切り捨てるような横暴な事は出来ないし、それをしてしまってはクルーの士気にも関わる。

「…解りました。僕の指揮権限はフラガ大佐に移譲するように出来ますか?」

「ええ、お任せ下さい。准将は暫くお休みください」

通信が切れると、キラはため息を吐いた。

情けない。

やっとここまで来たというのに、これまでの自分の不摂生のせいでドクター・ストップなんて。

今までどんなに無茶な出撃を重ねても、こんな事はなかったのに。

いや、ストライク時代は自分しかいなかったから、比べる事は無為だ。

「准将。コンパスという組織はあなたあってこそのものです。あなたはもう少し、ご自分の価値と周りの気持ちを知った方がよろしいかと」

「僕の…価値…?」

そんなもの、自分にあるのだろうか?

「ええ、チェックの時にはあれこれ雑談もするんですけど、私の知る限り、皆あなたを慕っていますよ」

「え…」

ザフト出身者が多くを占める、この艦で?

確かにパイロットメンバーとは、それなりの付き合いが出来ているとは思っているけれど。

「ですので、ご自分を大切にする事を覚えて頂けると、有り難いですね」

「…努力します」

 

キラ・ヤマトの不参加はすぐに情報共有がなされた。

軍である以上、メディカル・チェックの重要度はユーラシアでも当然認知されている。

彼の不参加は確かに痛いが、万が一、彼を喪失してしまっては痛いどころの話ではない。

作戦行動まではまだもう少し時間がある。直前でなかっただけまだましだ。

 

「…とうとうって感じね」

マリューは肩を落とすと同時に、ほんのちょっとだけホッとした。

最近のキラの纏う空気が、ストライク時代に酷似していたからだ。

「ああ。しかしシンじゃなくて、俺に指揮権を渡すとはね」

「順当でしょ?」

「一番のベテランって事は間違いないな」

階級もキラを除けば出撃する人間の中では一番高い。

本人的にはとてつもなく不本意だろうが、少なくともキラが自分に信頼を置いてくれていると思えるのが嬉しい。

 

「隊長!」

ついでとばかりに栄養剤を点滴しときましょう、と物凄い笑顔の圧で言った艦医に逆らえず、キラは医務室のベッドで大人しく寝ていた。

やってきたシン達、全パイロットにキラはそれはもう罪悪感一杯に謝った。

「まぁ、これに懲りて今後はもっと体調管理をしっかりしてくださいな、隊長」

ハーケン隊の「隊長」に言われて、キラはまた溜息をついた。

「すみません…」

「いや、ここまでの無茶を諫められなかったこっちにも責任はありますんで」

ベテランパイロットたちの言葉に、自分の未熟さを痛感する。4年前にもムウに言われていたような気がするが、自分の体の頑丈さに任せて散々無理無茶無謀をやってきたのだと思い知らされる。

「俺達でしっかり作戦は遂行しますんで、隊長は体を治すことに専念してください」

「ありがとう、シン」

時間がない事もあって、それだけで彼らは出て行った。

 

一番慌てたのはファウンデーション側だ。

それだけで自分達独自の作戦を大幅に変更せざるを得ない。狙い目は、キラの右腕的なシンあたりか。…いや、ラクスを取り込む目的を考えれば、替えがきかないのだ。

オルフェは頭を抱えた。

そもそもあれだけラクスに抵抗される事自体が想定外だったのだ。

もっとたやすく精神的に取り込めると思っていたのに。

彼女にとって、そんなにあの失敗作が大きな存在になっているというのか。

しかし、キラ・ヤマトの不参化が覆る事はあるまい。

優秀を自負するオルフェたちは必至で作戦の立て直しを図り始めた。

だが、作戦の肝がキラの洗脳・抹殺だったのだ。そう簡単に別ルートが思いつく筈もない。

 

そうこうしているうちに、作戦開始の時間が来たのだった。

 

 

映画序盤のキラ見てると、こうなってもおかしくないかなぁ…って。