「夜桜さん~」原作が好きで、アニメも楽しみにしてたんだけど、なんかこう…面白いと思えないのは何故だろう。6話から録画しただけで未視聴になってる。

何が私と合わないんだろう?不思議…。

 

 

きれいだな、と思う。

コーディネイターはまず大抵は容姿が優れている。

キラもその例に漏れない。

とはいえ、すぐ傍にアスランがいたし、自分がそれほど顔がいいとは思ってはいない。寧ろ、コーディネイターとしては平凡だと思っている。

誰かに聞かれたら「は?」と言われるだろうが。

キラが見ているのはアスランではなく、白い人だ。

まっすぐな銀髪に、色白な肌。そして白服。

色としては怜悧な青の瞳が際立っている。

「…何だ」

見られている事にはとっくに気付いていただろうイザークが、少々苛立たしげな声を出した。

「きれいだなーって」

素直に答えたキラを、イザークは睨みつけた。

キラの隣にいたディアッカが「あちゃー」と言う顔をした。

「何をのんきなことを言っている貴様!」

「え~。僕の担当分は終わったから目の保養してただけなのに」

「なんだとぉ!?」

終わった!?

あの量を!?

またしても起きたクーデターの反省で、新たに構築されることが決まった軍本部のセキュリティ関係の為に、キラがコンパスから一時的にザフトに戻ってきたのは昨日だ。

そしてその内容ゆえに、世界トップクラスのプログラマーであるキラの担当部分は二人よりずっと大きかった。

それを、終わらせた!?

「ほら」

キラがイザークに構築したデータを回す。

「……」

ぐうの音も出ないとはこのことだ。

確かに出来ている。

というか、自分が想定した以上の出来である。

え?何、こいつ、何でこの短時間でこんなプログラム組めるの?バケモンなの?アスランが言ってた「やりたい事しかやらない怠け者」って、誰?

「イザーク?」

「いや…申し分ない、が…」

「うん?」

「お前、これが普通なのか?」

「何が普通なのか解らないけど、一番の得意分野だし」

「アスランは…」

「??やりたくなくても、やらなきゃいけない事はやるよ。子どもの時とは違うんだから」

『アスラン』の名前だけで、これだけ察する事が出来るのは流石の付き合いの長さというべきか。

「つーか、キラ。目の保養ってさー」

確かにイザークがまれに見る美形であるのはディアッカも認めるところだが、それを面と向かって言った勇者はキラが初めてだろう、多分。

「え?だってきれいじゃない。一番はラクスだけど」

何の衒いもなく言ってのけるキラに、イザークも口をパクパクさせる。

いや、男と女の顔面を一緒くたに比べるな、と言いたいのだが、こうまで素直に言われると逆に何も言えなくなる。

「他に何かやる事ある?」

「とりあえずは、ない…」

「そう?」

「後で呼び出すことはあるかもしれないけど、とりあえず今はないな。その恋人のところに早く帰ってやりな」

「うん、ありがとう。ディアッカ」

 

キラが出ていくと、イザークはニヤニヤしているディアッカを先刻より更にきつい目で睨んだ。

「良かったじゃねぇか、イザーク」

「うるさい!」

恐らくキラの言う「きれい」は見た目だけのことではないだろう。人の汚い所を政治家並みに見てきたキラだ。

そのキラの「きれい」は最大級の賛辞に違いない。

しかも過去の因縁を乗り越えて、だ。

「お前もきれいだと言われたいのではないか?」

「俺はそんな柄じゃなねーもんよ」

「…いいから自分の分をさっさとやれ!」

「はいはい」

”いやー、ほんとあいつ、イザーク特攻だよなぁ”

ディアッカはお互い随分丸くなったと思いつつ、両手をキーボードに戻した。