皆様お分かりかと思いますが、キラ愛されが大前提の人間です。

 

 

久々のオフの日に、アプリリウスのショッピングモールでシンとルナマリアは見慣れた人を見つけた。

「キラさんだ」

「あ、ほんとだ…って、一人?総裁は一緒じゃないのかしら?」

キラはともかく、二人はラクスのスケジュールまでは把握している訳ではない。

「というか、護衛っていないのか?」

以前はともかく、今はもうキラの顔も知れ渡っている。

ファウンデーション事変の時に国際救難チャンネルで顔を晒し、コンパス再始動・キラ復帰の時のあちこちへの事情説明や禊的な各国訪問で、隠しようもないほどメディアに取り上げられていた。

何はなくとも「フリーダムのパイロット」というだけで、ブルーコスモスのテロ対象にされる。

他にも頭のおかしい学者に遺伝子解析の為に誘拐されないとも限らない。

先日、正式に婚約発表したラクス・クラインにダメージを与えるため、という可能性もなくはない。

「まぁ、流石にプラントはまだ安全だと思うけど」

「そういう考えって逆に危なくないか?」

油断、という意味で。

「あ、」

キラに近づく人影がある。

一瞬駆けだそうとしたシンだったが、その人を見て元々大きい目を更にまん丸くした。それはルナマリアも同じ。

「アスラン…?」

あの、微妙な大きいサングラスをしてはいるが、間違いようもない。

「あの人、普通にプラントに入国出来るのか?」

あれこれ事情はあるにしても、外から見れば二度もザフトを脱走している人間がプラントに入国出来るとは思えない。

「アレックス名義?」

「それはそれでオーブがヤバくない?」

「う~ん。聞いていい事なのかな、これ」

とにかくアスランがいるなら、護衛の問題はないと言っていいだろう。

それにここで声をかけるのも、なんとなく気まずい。

言葉にはしにくいが、本当に「なんとなく」気まずい。

 

キラは戻ってきたアスランに手に持っていた紙袋を渡した。

「なんだ?」

「カガリへのお土産」

「送ればいいだろ」

「本当は僕が手渡ししたいんだよ」

「お前の代理か、俺は」

「君以外に頼むわけないでしょ」

軽口の応酬の中で、キラがさらりと「君は僕の特別なんだけど?」という言葉を言ってきて、アスランは絶句した。こういう所が人たらしなんだ、こいつは!と内心だけで文句を言う。

それに一番昔からやられているのが自分なのだから、もう今更だ。

「はぁ。ま、いいさ」

「うん、ありがとう、アスラン」

ニッコリと笑う。

”あざとい、あざといぞ!その笑顔!!”

しかしこれがキラの通常だ。

そして全くの無意識。

ただ…これが普通に出力されるようになったという事は、キラのメンタルが安定しているという事だ。

「ラクスとはどうだ?」

「君のおかげで今のところ、問題ないよ」

お互いに気遣いはあれ、あの頃のような変な遠慮はないし、どんな事でも話し合うようになった。

「そう言ってくれるのは有り難いが」

「君の方はどうなの?君の幼馴染で、カガリのきょうだいとしては気になっても仕方ないよね?」

「現状維持だな」

「そっか」

キラも解ってはいるのだが、やはり気になるものは気になる。アスランもカガリも自分からあれこれ言う性格ではないから、こっちから聞かなければ何かあっても解らないし。

流石に秘密にされるとは考えていない。

「で、昼はどうする?」

まさか食わないとか言い出さないだろうな、という圧が若干出てしまうのは許してほしい。

「あっちにいいお店があるよ」

同じメニューでも量が選べるんだって。

「……」

まぁ、これはいいとしよう。

久しぶりにキラとプライベートで過ごせるのだ。あんまり小言なんか言いたくはない。

”悪いな、ラクス。今日一日だけ譲ってくれ”

コンパス本部で事務仕事に精を出しているだろう彼女に、ちょっとだけ謝っておく。