言及されてるのを見た事ないけど、アスランが「二コルの戦法だな」と言った時に「え?その名前をキラの前でするっと言っちゃうの?」と驚いた。
イザークとディアッカと共に「クルーゼ隊の絆」と言われてるけど、この二人はともかくアスランがキラの前で言うのはどうよ?と。
言っても大丈夫なようになったのか?
「ま、とりあえず今はそれは置いといて」
「言いだしたの、キラじゃない」
「あはは、ごめんごめん」
本当に子どもの頃のような屈託のなさだ。
「…ラクスと結婚するの?」
この部屋に来てすぐのキラの言葉を思い出してそう訊くと、
その綺麗なアメジストの瞳が、ふっと撓んだ。
「うん。事態も落ち着いてきたし、僕たち自身の為と、僕たちに沢山尽力してくれた人たちに報いる為に」
「幸せになる為に」
「そうだよ。今でも十分幸せだけど、ほら、ラクスっていろいろモテるじゃない。ちゃんとすればそう言う事も…なくなるまではなくても、かなり減ると思って」
一々断るのも、ラクスには気を遣う事だろうし、面倒だろうし、纏めてストレスだろうし。
「キラ…自分もモテる自覚ない?」
「アスラン見てきたからかなぁ。あれに比べると大したことないなぁって」
”ああ、うん、天然”
リミは自分の視線がちょっと胡乱なものになるのを感じた。
それに気づいているのかいないのか、キラはそのまま言葉を続ける。
「とりあえず外部のあれこれはともかく、僕たちが僕たちとして幸せに生きていく為にが一番だね」
「そうね、それが一番よ」
やっと。
やっとここまで来た。
二人が、キラが、幸せになる。自分が幸せになることを認めてくれた。
ああ、なんて愛しい。
「リ、リミ?」
慌てたキラの声に、リミはきょとんとした。
「キラ?」
「なんで泣くの」
「あ、本当だ…」
よく言われるような、ぼろぼろと涙が零れている訳ではないけれど、自分の頬が濡れているのが解った。
アワアワしているキラの手を取る。
「嬉しいから。幸せになってね。私はずっとキラの、二人の味方だから」
きっとそれは自分だけの思いではない。
カガリやアスラン、ミレニアムのクルーやマリュー達だってそうだろう。それでも一番はやっぱりキラの両親に違いないけれど、自分も彼らに負けてないと自負している。
「ありがとう、リミ。リミがいてくれて…本当に良かった」
彼女がいなければ、きっと自分はアスランと殺し合った時に完全に壊れていたに違いない。
同じようにラクスのもとに運ばれたとしても、自死を選んだ可能性もある。
「キラが。頑張ってきたのよ」
「シン達がリミが僕と似てるって言った事があるよ」
「え?」
「リミが僕によく言うように、リミも自分の頑張りをちゃんと認めてあげてね?」
今まで見てきた中で一番綺麗に微笑まれて、一瞬瞠目してリミもまた自分に出来る精いっぱいの笑みを浮かべた。
うん、頑張ってきた、と思う。
この世界で「目覚めて」もう4年経つ。
私はとっくにこの世界の住人だ。
色んな裏知識はあれ、運命の物語が終わった後は私の知らないCEの歴史になる。
この間のファウンデーション事変のようなことだって、また起こらないとは言い切れない。
でも…この世界に生きる一人の人間として生きていくのだ。
キラや、他の大切な人達と一緒に。
「ありがとう、キラ。私もキラに会えてよかった」
ちょっと無理やりだけど、終わり~~~。