キララクのすれ違いが解消されてラブラブ状態で、アスランのファウンデーション情報もカガリ経由で既に知っていた場合。

 

 

オルフェの言葉を一通り聞いたキラは、納得する部分もありながら「だから?」という気分だった。

「言いたい事はそれだけですか?」

「なんだと」

想像していたのとは全く違う反応を返されて、オルフェは僅かにたじろいだ。キラの弱い部分を確かに突いた筈なのに。

「確かに僕は戦場を駆け続けてますから、自分が血濡れであることは否定しません。ですが、それはラクスも同じです」

「…彼女を愚弄するのか」

「いいえ?ただの事実です」

「何が事実だ!」

「ラクスも戦場に出ています。直接引き金を引いていなくても、指揮官として戦場にいる以上…いえ、指揮官の責任はパイロットより大きい。それはお解りになりますか?」

今まで直接戦場に出たことがないオルフェにとって、それは侮蔑に聞こえたのかもしれない。

「私がその程度も解らない筈がないだろう!」

「では、ラクスが真っ新な状態でない事も解りますよね?」

キラはまっすぐにオルフェを見据える。

恐らく彼は数日前までの自分の心情の残りを読んだのだろう。今はもうそれは解消されているのに、それを真っ先に読んでしまったのは彼にとってそれが一番都合のいいものだったからに違いない。

オルフェの罵倒がキラ個人だけのものだったなら、反論もせずに流しただろう。

けれど、今のキラの行動を罵倒するという事はコンパスの活動を、所属するメンバーを、ひいては総裁であるラクスやコンパス理事国をも罵倒するものであるのだ。

彼はそれに気づいているだろうか。

それにしても、昼間のブラックナイツの態度と言い、彼らはコンパスの力を借りたいのではなかっただろうか。とてもではないが、そういう風には見えない。

いや、アスランの報告からすれば本当に欲しいのはラクスだけだろうけれど、もう少し、ちょっとこう、こちらに対する態度を考えて行動した方がいいのではないか。

というか、今の今までラクスの危機や苦境に何もしないどころか、姿すら見せなかった男が運命の相手?ラクスを馬鹿にするにも程がある。

宰相や近衛隊がこれでは、あのイングリットという女性は相当苦労しているだろうな、と他人事ながら気の毒になる。

「後、余計なお世話かもしれませんが平和で平等な世界を実現できるどうこう仰られるのでしたら、まずこの国のスラム街をどうにかしてからの話だと思いますよ」

「…貴様!」

まさかスラム街の事を知られているとは思っていなかったのか、目に見えてオルフェは激高した。

話しかけてきた時の余裕は何処にもない。

”宰相っていう割には、視野が狭いというか、世間知らずな感じがするけど…大丈夫なのかな、この国”

「出過ぎた事を言いました。それでは僕はこれで」

白い裾を翻して去っていくキラを、オルフェは屈辱に震えながら見送った。

 

翌日。

作戦会議の場で、キラが録音していたオルフェの暴言が暴露された。

「な、こんな…!」

「こちらに招聘されはしましたが、良く知らない国へ行くのです。隊員は皆録音機能付きの発信機を所持しています。当然の危機管理ですね」

「ヤマト准将はコンパスの現場総指揮官です。その彼をこうまで侮辱するような国とまともな連携をとれる気がしません」

「それからこちらを」

今度は近衛隊がヤマト隊に喧嘩を売った音声だった。

ここまでくるに至って、ユーラシアの軍人たちも流石に呆れ果てた視線を向けた。

「今回の件、一旦クライン総裁に差し戻します。ギリギリになって申し訳ありませんが、ファウンデーションという国を信じられないこちらの心情を察していただけると思います」

「解った。ミケールは早く逮捕したいし、ブルーコスモスを一掃したいのは変わらない。だが、協力相手を愚弄する人間がトップにいる国と連携をとるのを躊躇する気持ちも当然のものだ」

「良ければ、ユーラシアとコンパスのみで作戦を練り直したい」

「ええ、ではそれを込みでクライン総裁と話し合います」

マリューたちとユーラシア軍人がぞろぞろと出て行った後、

何故優良種の自分達がこうまで蔑ろにされるのかと、何故か理解できないオルフェたちが残された。

 

 

この後、どうなるかは知らん。

少なくとも核とレクイエムドカンはなくなる。