映画、血のバレンタインにはシフトの関係で行けなかったけど、エイプリールフール・クライシスには行ってきた。
ミレニアムに配属されて数日。
リミは休憩室で一息ついていた。
「あ」
そこへシンがやってきた。
「あら、アスカ大尉」
「えと、お疲れ様です」
結局、リミは基本はパイロットとして配属されていた。人手不足なせいで、やっている事はキラと同じというか、技術者としても重宝されている。
「今日は一人?ホーク中尉は?」
「そんな四六時中一緒にいる訳じゃないですから」
「まぁ、それはそうよね」
”う~ん…固いなぁ”
初めて顔を合わせてからまだ一週間と経っていないから、仕方ないと言えば仕方ない。
CDドラマである程度は予習できていたけど、まさかこんなにキラ大好きっ子に変貌してるとは思わなかった。あんなに狂犬だったのに、最早忠犬じゃないかとまで思った。
今のシンなら話合いそうだなぁ。
そんなキャラ改変に感心しながら、口を開く。
「というか、確かに私の方が年も階級も上だけど、大尉達の方が先任なんだから敬語はなくてもいいわよ」
「…そういうゆるっとしたとこも、隊長と似てます…似てるよな」
「素直な子は好きだよー」
「…からかわないで下さ…くれよ」
くすくすと笑うリミにシンは少々ムッとする。
「だったら、少佐も階級呼びは止めてほしい」
「オーブではこれがスタンダードなんだけど、ザフトは名前呼びがそうなの?」
「まぁ。もともときっちりした階級がなかったから」
「そういえばザフトで階級制が取り入れられたのって、前大戦後なんだったっけ」
ザフト出身の人が多いから、そうした方がいいのか。
「じゃぁ、シン、でいいの」
「ああ。俺もリミさんって呼んでも?」
「勿論」
年齢・階級的に「さん」まで取らせるのは流石に可哀想な気もするので、そこは流しておこう。
「ところで『も』って何?私と隊長って似てるとこってあったかしら」
オレンジジュースが入っていたボトルをゴミ箱に捨てるのと同時に、シンに座るように促す。
「なんか、色々万能なとこが」
「------は?」
思い切り不思議そうに、少し間抜けな返事をしたリミに、シンもシンでなんでこの人こんな返事をするんだ、という顔になった。
「私が万能?キ、隊長みたいに?は?何処が?」
いや、あんなのと比べられても困るんですけど。
確かにキラは生まれもあって(知っている事自体絶対口外出来ないが)万能の天才感あるけど、それと似てる?
いやいやいやいや、ないないないない。
とんでもない勢いで否定してきたリミを見て、「あ、この人も自己肯定感低いんだ。そんなとこも前の隊長そっくりだ」と思うシンだった。
腹立たしいところもあるが、アスランとの悶着以降キラは少しずつ明るい表情が増えてきたし、この人は元来明るい性格な気もするから、違うと言えば違うのだけれど。
そんな微妙にすれ違った感情を持っていた。
…諦めた。
切りのいい10まで行くか?