「ラクスが妊娠報告をヤマト家に単身でしに行ったら、テロで三人もろともに殺害されて、闇落ちしたキラ。それを泣きながら撃ちに行くシン」とかいうのを見て、何でそんな酷い事思いつくのと思った。
「え?いや」
「嫌って…リミ」
「私が決めた、私の生き方よ」
胸を張って言われて、キラは更に困惑した。嬉しいけど、嬉しいのは間違いないんだけど、一体なんでそこまで?
「これって多分、ラクスの方が解るんじゃないかな」
「わたくしが…?」
「うん。まぁラクスはそうされる側だけど」
「ファン、という事でしょうか?」
「そう。私にとってキラは推し!最推し!推しの笑顔が見たい。元気で活動して欲しい!だったらファンとして出来る活動は全部やる!その推しが身近にいるなら尚の事!」
拳を振り上げんばかりに力説するリミに、キラの困惑はますます大きくなる。
「ファン?ファンってリミ…僕たちって友達、だよね」
「それは大前提だけど、感情的にはそうなるのよ」
何しろキャラとしてはともかくも「生身のキラ・ヤマト」を知っても冷めなかった熱である。
これからも冷める事はないと断言できる。
「本当にリミはキラが大好きなのですね」
「勿論。でも二人とも解ってるとは思うけど、男女の恋愛的な感情はないから、そこは安心してね」
「そこは…うん…」
その点は最初にAAに乗り込んだ頃から解っていたから今更だけど、幼年学校からの長い付き合いの友人に「ファン」と宣言されるとは夢にも思っていなかった。
「だから止めないでね」
ニッコリとダメ押しされてしまっては、元々押しに弱いキラは何も言えなくなる。
それに「自分で決めた」と言われた以上、キラの感情以外に何の問題もないのだから何か言えよう筈もない。
「そりゃこの先、恋愛的に好きになる人が出てきたら変わるかもだけど、少なくとも今は諦めて受け入れて」
「だそうですわ、キラ。女性のこういう決意は固いんですのよ」
ラクスにまで言われて、キラはもう頷くしかなかった。
それにリミも満足そうに笑って、ちょっと温くなり始めた紅茶を一口飲んだ。
「で、結局私の配属先はまだ未定?」
「…そうだね。リミの希望はある?」
「そうねぇ。正直、もうパイロットとしてはついて行けない気がするのよね。その辺の連中にはまだ負ける気はないけど…どう甘く見積もっても私ってエースと呼べる実力はないから」
その辺は実際にミレニアムへ来てからシミュレーションで見てみる必要があるだろう。
「とりあえず、私が対応出来るところで、一番人手不足の場所がいいんじゃない?」
「それ、パイロットなんだけど」
「うわぁ」
即答されて、リミは情けない声を上げた。自分が消去した選択肢が真っ先に出てくるとは。
考えてみれば一番危険な立ち位置だし、肉体的精神的にもきついのは解るから、そうもあろう。
「だったら頑張るしかないわね」
「リミ」
「言ったでしょ。私はキラの力になりたいんだって」
実力が心許ないなら、底上げする努力をするのは当然だ。
つ、次で終わる…筈。