とうとう上映が日に一回になった。

 

 

世界平和監視機構コンパス。

二度の大戦の後に作られたその組織は、オーブが発起人という形で今までいがみ合っていたザフトと連合の一部が協力してできたもの。

現場部隊は、起きた紛争を武力でもってとにかく一旦収束させる事が仕事。

勿論、一般市民として見ればそれだけでもあり難い。それでも、いつ自分が住んでいる場所が戦場になるか解らない日々には早く終わりを告げてほしい、と思ってしまうのは致し方ない、というか当然のことだ。

いや、コンパスのその実働部隊だって、命がけの任務なのは変わりないんだけど。

俺が住んでるのはオーブだから、いきなり戦場になるって事はあんまりない。が、大規模戦争が起こると、よく狙われる。

そんなオーブの守護天使とまで言われたフリーダムは、今はコンパスの実働部隊のトップになっている。

俺はオーブ軍の下っ端だ。一応フリーダムのこれまでの戦闘の過去ログ位は見れる。MSの戦闘など素人でしかないが、それでもフリーダムの動きが異常レベルで違うのは解った。

いや、俺が解る時点で「違う」のは当然なんだが。

フリーダムのパイロットはどんな人間なのか。

フリーダム自体は恐らく世界で知らない者はいないだろう位有名だが、そのパイロットについては殆どトップシークレット扱いで、知っているのは軍内でも一握りのようだった。

同僚たちとは色々噂したりしている。

きっと、誰もがこうありたいと思えるような立派な大人なんだろう、屈強な軍人なんだろう、と。

コンパスの募集要項の最初にあったのは、「ナチュラル・コーディネイターに差別感情がないこと」だった。正直これだけでもかなり狭き門になっている。

中立であるオーブですら、それがゼロではないのだから。

 

そんな中起こったファウンデーション事変。

下っ端とはいえ、軍に所属している以上、俺も死に物狂いで自分の業務を頑張った。だから詳しい状況自体はよく解らなかった。

ある程度事態が落ち着いてから改めて流された、ファウンデーションに対しての国際救難チャンネルでの映像。

「……キラ?」

正直煽り散らかしているとしか思えない内容だったが、その直後にミレニアムに向けてレクイエムが撃たれ、それが実は最初はオロファトに照準が向けられていたもので、ミレニアムに標的を変えさせるためのものだったと報道された時は仰天した。

つまり、そうさせる為に煽っていたのだ、と。

けれど俺にとって最も衝撃だったのは、それをやった人間が「キラ・ヤマト」と名乗った事だった。

確かに幼年学校時代の面影もない事はなかった。

ーーーーあの、ポヤヤンでしょっちゅうアスランに世話焼かれてたあいつが?あんな世界中に顔晒して、凛と立っているのがあのキラ?

更にその後、キラがフリーダムのパイロットというのも公表された。

「はあぁぁあああっ!?」

いやもう人目も憚らず絶叫したわ。

そもそもあいつ、おっとりしてるくせして友人のケンカすら嫌って、そればかりは積極的に仲裁してるような奴だったぞ。しかも何でか滅茶苦茶うまかったよな、仲裁。

そんなあいつがフリーダムのパイロット?

何がどうしてそうなった?

いや、コンパスの活動自体は仲裁の色もない事はないが、その場所に行くまでの経緯ってどうなってるんだ。

知りたい。

滅茶苦茶知りたい。

とはいっても、その手段なんかある訳もない。

勿論、元々オーブ出身なんだし、オーブに来ることだってあるのはあるだろうが、コンパス実働部隊のトップで、准将という地位にあるキラと下っ端の自分とでは接点なんて出来る筈もない。

ていうか、キラ、細っそ!

軍人としてってよりも男として細すぎだ。

コンパスってそんなに重労働なのか?…うん、重労働だな。表に出てこない仕事なんて、それこそ山のようにあるんだろうし。

まぁなんつーか…俺、軍人の端くれとはいえ、一般人で良かったな、と思った。

 

 

幼年学校時代や、ヘリオポリス時代のキラの友人が現在のキラを知って驚愕、という流れ。

まぁ、私の知る限り直接キラに会うのだけしかないけど。