「約ネバ」と「アクタージュ」がそれぞれヤバい事になっています。

権力に執着する人間の醜さ、浅ましさ、おぞましさ…これ、結構現実でもありそう…。

自分のアイデンティティを手放しそうな景ちゃん…。

蘭厳しめです。蘭ファンはバックプリーズ。

 

 

蘭にとっては、まるで異次元に迷い込んだような感覚だった。

つい先日まで、最終的には自分の言いなりだった新一の「反撃」に続き、絶対的な味方だった園子からの否定。

「な、何よ。どうしちゃったのよ、二人とも。何で私に酷い事ばっかり言うの?」

蘭が再び涙ぐむ。

今までならば、ここで園子が新一を責めただろう。

そしてその尻馬に乗った形で、周囲も新一を追い詰めただろう。

だが、今日はそうではなかった。

「俺は前から言ってぞ。おめーのことは何とも思ってねーって。けど何度言っても変わらねーから今日は何時もより強めに言っただけだ」

新一は蘭の涙など何処吹く風で、ケロリと言ってのけた。

―――――別の小学校から来た奴にまで、あの空気に染まって欲しくないしな。

付け加えられたそれに、持ちあがり組のクラスメートは目を泳がせた。自分達が面白半分にやってきた事が、如何に新一を追い詰め、怒らせてきたかジワジワと理解が及んできたからだ。

「そうよね。同じ幼馴染なのに同性だってだけで、蘭ばかり贔屓してきた私にも問題があったわね」

「そ、園子…」

「ねぇ、蘭。今あんたは酷い事ばっかり言うって言ったけど、今まで私達が新一君にしてきた事の方が遥かに酷かったのよ」

「え…?」

「新一君の事情も感情も全て無視。これだけでイジメだわ」

「い、イジメなんてしてない!!」

自分を「いい子」だと自認して、そう振舞って周囲を味方につけてきた蘭は、反射的にそう言った。

「そうね。イジメてる側は、何も考えず軽い気持ちでやってるものなのよね」

今度は園子の言葉に、クラスメート達は俯いた。

つまり自分達もイジメの加害者だと言われているも同然だったからだ。

「御免なさいね、新一君。許してくれとは言わないし、言えない。でも、もう二度とあんな幼稚な囃し立ても、新一君の意思を無視するような事もしないわ」

「ああ。俺をちゃんと対等な人間だと認めてくれるんなら、それでいいさ」

この言葉に、今まで自分は蘭の奴隷のように扱われてきたのだと言う、裏の意味が含まれていると気付いた者が何人いただろうか。

「園子!新一!!」

二人のやり取りに、蘭は悲鳴じみた声を上げた。

新一の方はともかくも、あの囃し立ての一連のやり取りは蘭にとっては非常に心地いいものだったのだ。

そして園子の加勢によって、自分の我儘を常に新一が叶えてくれるのも、自分が新一の特別だと感じられて気持ちよかった。―――――自分が「宮野志保」より大切にされているようで、優越感にも浸れた。

それが何もかもなくなるかもしれない。

そんなのは絶対に嫌だ。

蘭の様子に、新一は冷めた目を向けた。

だがこれ以上ここで言い募って、変な方向に暴走されても困る。

理解も納得もしてくれなくていい。

ただストーカー染みた言動を止めてくれればいいだけだ。

「あのな、毛利。おれは別におめーと縁を切るだなんてことまでは言ってねーぞ?」

一応、これは本心だ。

蘭が普通のクラスメート・友人としての付き合い方を守ってくれさえすればいい。

そして志保に敵意を向けるのを止めてくれればいい。

つまり「自分が新一の特別、一番の存在」という認識を改めて、それが当然と言う言動さえ直してくれれば、それなりの友人づきあいは続けても構わない。

だがそれが最も難しい事なのだとも、新一は解っていた。