ああ、暑い。でも後一日で8月も終わり。
きっと、9月も半ばになれば…きっと、涼しくなる、筈。
来年の夏はもう少し、せめて「命の危険」を感じるような酷暑になりませんように(切実)
やはり蘭厳しめです。蘭ファンはバックプリーズ。
そうして翌日、薔薇は姉妹と共にショッピングモールへと出かけた。
「松田さん」
「よ、薔薇ちゃん。そちらの二人が」
「ええ。お父さんの紹介で、留学してきたの」
それは宮野姉妹の設定。
明美はごく普通だが、志保は既に大学まで卒業している。専門は薬学だが、化学方面にも強く、阿笠の論文に興味を示していたのを偶然知り、それならばと招待した、と。
「留学つっても、学校に行くんじゃなくて博士の助手みたいな事するんだろ?」
「そうね。博士って、本当、作る物がピンキリだから、かえって刺激になるんじゃないかしら」
子どものおもちゃのような物から、特許を取る物までふり幅が凄い。まぁ、その特許料や依頼された実験の依頼料やらで生計を立てているのだから、一流だと言ってもいいだろう。
“ごめんね”
松田にも本当の事は話していない。
というか、話していいものではない。
そして逆に二人には松田が誰かを話してある。つまり、事実を話さないまま、松田をボディガード扱いしている事になる。
本当に襲われてしまったら、話すしかない…いや、そうなったら話してもいいと、降谷達から許可を貰っている。
“勿論、そうならない方が一番いいんだけど”
全てが終わったなら、降谷達が話せる範囲で話す手はずになっている。
“それで怒るような人じゃない、のが余計に居たたまれないわね”
とはいえ、こんな自分の罪悪感など、今まで二人が味わってきたものに比べたら大したものではないし、これだって覚悟の上で引き受けたのだ、弱音など吐いていられない。
「初めまして、お二人さん。松田陣平だ。職業は刑事。日本はアメリカに比べれば安全な国だが、お二人にとっては異国だからな。何かあったら遠慮なく頼ってくれ」
「あ、有難うございます」
「薔薇とは親しいんですか?」
「一応、お兄ちゃん的な存在かな。他にも萩原と伊達ってのがいる。あと、今はちょっと難しい案件を抱えて離れてるが、もう二人。帰ってきたら紹介しよう」
この説明に、二人は薔薇の交友関係の謎さに、顔を見合わせた。あの時彼女自身が「探偵」と名乗っていたし、既に裏では警察に頼られる存在であると降谷と緑川から説明を受けていたが、そういうドライな関係ではなく、友人と言っていいらしい。
“この子、愛されてるのね”
刑事と言えば、かなり重労働な職の筈だ。
なのに、この日に合わせて非番を入れられるように調整してくれたのだと言う。
「あ、すみません。私、宮野明美です。今日はよろしくお願いします」
「宮野志保です。お世話になります」
「あー。そんな堅苦しくしなくていいって。俺としては美人さんに囲まれてご機嫌だからさ」
「…松田さん」
「こんな美人が三人だけでいたら、絡まれるのは間違いないからな。頼ってくれたのも嬉しいぜ」
「―――――軽いわ」
「軽い方がいいんじゃないか?一応祖国にはなるけど、アメリカが長かったんだろ?緊張をほぐすにはこれ位が良くないか?」
松田の言い分に、薔薇は肩を竦めた。
明るい性格ではあるが、今日は殊更に軽い言動をすると思ったら、そう言う事か。
そしてこのやり取りを見た明美は、内心で首を傾げた。
ただの疑似的兄妹、とは違うように感じてしまうのは何故だろう。
薔薇の揺らぎの一人。
