九州北部が梅雨入りしました。まだ5月なのに。

しかし、私が住んでいる場所はほぼ九州のど真ん中。微妙な所です。九州って、北部・南部でしか言わないんですもの。

容赦なく蘭厳しめです。蘭ファンはバックプリーズ。

 

 

「時代の寵児」のような扱いを受けていた「高校生探偵・工藤新一」の死は、両親の知名度も相俟って日本中を駆け巡った。

この段階では、まだ新一の死の真相までは伝えられなかった。

だが、元々ある時を境にマスコミや人前で姿を見せなくなった新一には、死亡説が流れてもいた。あの修学旅行で一時期SNSを騒がしたものの、それも後に誤報となった。

よって、驚愕と共に、「本当に!?」「一体、どうして」という疑問が渦巻いたのも、また自然な事。

 

新一の葬儀は、スター芸能人並みの広い斎場で行われた。

新一本人の人脈もさることながら、やはり優作と有希子の存在が大きい。TVでよく見る芸能人やスポーツ選手も多くいて、改めて「工藤家」の人脈や実力が知られる事にもなった。

そう言った数多の著名人、そして警察関係者、出版・TVなどのマスコミ関係が参列した中で、蘭の姿は異彩を放っていた。

棺に取り縋り、恥も外聞もなく、泣き叫ぶ姿。

あれが「工藤新一」の『恋人』なのだと、誰からともなく広がり始め、会場中の人間が「毛利蘭」を知る所となった。

まるでドラマのワンシーンのようなそれに飛びついたマスコミの中で、彼女に冷ややかな目を向ける人間がかなりの数でいた事を、気付いた者がいただろうか。

いたとしたら「誤報」が流れる事もなく、蘭の人生は叩き潰される所まではいかなかったかもしれない。

 

―――何あれ、本当は工藤君の事、本気で好きな訳でもないくせに

―――どんな我儘も聞いてくれる金蔓がいなくなったのが、悲しいんだろ?

―――ていうか、何時までああしてるつもりだよ。俺らが工藤に別れを言えないじゃんか

―――葬儀にだって時間制限はあるのにね

―――ちゃんと工藤君に謝りたかったのに、無理そう…

―――不幸な自分に酔ってんだろ

―――ここまでじゃなかったけど、教室でもよくやってたもんね

―――何で俺達、あれを工藤とお似合いだって考えてたんだろうな

―――ああもう、本当にいい加減どいてよ!

 

―――あの子、よく工藤邸に来てた子よね

―――朝からインターホン連打して、甲高い声で叫んでたわよね

―――近所迷惑もいい所だったな

―――うちなんて、あの子が近所にいると、怯えてたんだぜ

―――それで後になって、よく新一君が謝りに来てたっけ

―――騒がせてすみません、て。彼が悪い訳じゃないのに

―――マスコミで言われてるほど、高飛車な子じゃなかったからな

―――あの子自身は、幾ら言っても聞かないからって、工藤君も途中で諦めてものね

―――え、それが恋人って?

―――また空手で脅されでもしたんじゃない?

―――あんなのに人生食い潰されて、こんなに早く亡くなるなんて…

 

―――あれが本物の「毛利蘭」か

―――成程、公安の調査通りの人間のようだな

―――周りの迷惑顧みず、自分の感情をまき散らすとは…

―――工藤君、女を見る目はなかったんだな

―――あんなに優秀だったのに

―――まだ17だった。ある意味、仕方ないだろう

―――生き延びれば、あれを教訓にして、本物のいい女と出会う事もあったろうに

―――いい女、か。宮野さんはどうしてるんだ

―――ずっと自分の部屋に閉じこもったままだそうだ

―――食事も睡眠も、言われなければ取らないらしい

―――…可哀想に

 

学校の友人達や、近所の住人、そして警察関係者。

涙にぬれた声で交わされていた言葉を最初から拾っていれば「聖女」などと持ち上げられる事もなく、バッシングも最小限に済んだだろうに。